第三十八話 マヤオ砦の攻防

 ラーヤミド王国とダラド帝国、その両国は険しい山脈によって隔てられているが、一箇所だけ例外がある。

 マミヤ平原だ。

 低い山や森が点在するものの、なだらかな平地でそこに両国を繋ぐ街道が通っている。両国の規模からすれば控えめな交易ではあるが、陸路ではそれ以外の道はなく、唯一の交易路であった。


帝国と王国を隔てる国境、王国側の関所の後方に威容を示す要塞がある。三十メートルを越える巨石を積み上げた外壁はどんな兵器を持ってしても破壊は不可能に思える。王国が誇るもっとも堅牢な防衛拠点、マミヤ砦だ。


 侵攻は唐突に始まった。


 地響きとともに現れた帝国軍の大型ゴーレム。

 帝国側の関所、その後方にある森から三体が姿を見せる。まるでそこに最初からいたかのように。

地響きを立てながら三体のゴーレムは王国側の関所を破壊、そのままマヤオ砦へ向かう。

 ゴーレムが外壁に近づいた途端に、迎撃を始める王国軍。


 対ゴーレムの新兵器、テルミット爆弾を射出するカタパルト。

 テルミット爆弾は本来アテナの武装であるが、マヤオ砦にも幾つか配備されていたのだ。


 訓練はろくにしていないが、まず先頭を歩くゴーレムの胴体に命中。高音の炎が上がるも、表面を溶かすのみに終わった。


 ゴーレム達は外壁に取り付くと、手にした金属製の杭で穿ち始める。線を引くように何箇所も。

 やがて外壁を構成する巨石はあっけなく二つに割れ、そのまま崩れ落ちていく。


 その理由。

 ゴーレム操作の魔導士の横には、帝国が併合したばかりの国から徴兵した者がいた。

 彼らは石工。

 その国の特産は様々な石とそれを加工した品々。彼らは石や岩の『目』を熟知しており、そこを穿つことによってどんなに大きな岩であろうとも、あっさりと割れる。

 その技術を帝国軍は採用し、こうしてマヤオ砦の外壁を崩しているわけだ。


 王国軍は外壁上部からテルミット爆弾を直接人力で投下し、一体のゴーレムを破壊するものの、既に外壁の一部は完全に崩れ落ち、帝国軍の突撃騎兵隊の侵入を許してしまう。


 外壁の内側にある高さ五メートルの防護壁、それをめぐっての戦闘が始まった。


 こうして三十年ぶりの帝国による王国侵攻作戦は、マヤオ砦に大打撃を与える形で帝国側がリードすることになる。


 王国は精鋭である第七軍三千名の派遣を行うも、移動に二日を要したのがたたり、その間にマヤオ砦常駐兵千名の半数は、戦闘不能となっていた。 


 さらに三体の帝国軍ゴーレムが新たに現れ、第七軍は苦しい戦いを強いられる。


 二週間後。

 国防省は王家へアテナの派遣を要請、歩調を合わせるかのように議会ではダロシウとレイテアの婚約解消が採択され、国王へせまる。


 ダロシウにとって長い一週間が始まろうとしていた。

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