元勇者、地球に帰る

魔石収集家

1 帰還者と猫

なあ、君に聞いてみたいことがある。


もしもさ、異世界に行って、それから帰ってきたら――君ならどうする?

普通に元の生活に戻れるって思うか?

俺?

正直、全然無理だったよ。





俺の名前は一条零。

一応、元勇者だ。

いや、そんな大したもんじゃないけど、異世界で魔物と戦って、生き延びてきたんだ。

妖魔王って奴をぶっ飛ばしてから封印もしてきた。


そんで、なんとか地球に帰ってきた。

けどさ、やっぱり何もかもが変わってる気がするんだよな。


そうそう、こいつを紹介するよ。

俺の肩に乗ってる猫、ハル。

ソマリって種類の猫で、毛の色はルディ。

可愛いだろ?でも、ただの猫じゃないんだ。

異世界の力をちょっとだけ持ってて、俺と念話ができる。


「零、またなんか変なこと考えてるでしょ。」

ほら、こうやって話しかけてくる。


俺の今の生活?

家業のパワーストーンショップを手伝ってる。

お客さん相手に「この石、幸運を呼ぶんですよ」なんて適当なこと言いながら、平穏な日々を送ってる。

いや、本当は石の効果とかちゃんと説明してるけどな。


でも、正直言うと――これ、隠れ蓑だ。

異世界帰りの俺が、力を隠してひっそり生きるには丁度いいんだよな。



ただ、その日は少し違った。

昼間のニュースでこんな話が出てたんだ。

「連続殺人事件発生。被害者には奇妙な模様が…」

写真が映った瞬間、俺は思わず固まったよ。


「…これ、呪印術じゃないか。」

異世界で何度も見た、あの模様にそっくりだった。

だけどさ、なんで地球に呪印術があるんだ?


「零、それどうするの?」

肩の上のハルが、いつもの調子で聞いてくる。

「どうするも何も、俺に関係ない話だろ。」

俺はそう答えながら、スマホを閉じた。


でもな、頭の中で模様が離れないんだよ。

異世界の高位術式――普通の人間が触れるものじゃない。

もし本物だとしたら、誰が仕掛けた?

なんでそんなものが地球に?


「…はあ、こんなの気にしても仕方ないのにな。」

そう呟いてソファに座り込んだけど、正直少しビビってた。

もしこれが本当に呪印術で、俺に何か関わってくるなら――嫌な予感しかしない。


君ならどうする?

自分の知ってるヤバいことが、目の前で起きてるって気づいても、普通に暮らせるか?


俺はまあ…ちょっと怖いけど、放っとけない気がするんだよな。


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