絵画な彼女のお気に召すまま

宵月碧

00.静謐の中に鳥籠




 夜の館内は空気がひんやりと冷たく、笑う月の下で薄闇が静寂を纏う。


 息づく音も、生命の鼓動もなく、ただそこにるだけ。美しい芸術に込められし秘めた想いは、彼女を鳥籠の中に閉じ込める。


 音のない世界に響く、床を鳴らす靴音。

 いくつもの物言わぬ人々が、その足音の行く道に耳をすませる。


 歌うことを知らないカナリアは、籠の中で音を聴いた。いつもの音と、少し違う音。


 閉じ込められた鳥籠を開いて


 退屈な世界を塗り替える音。


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