鬼女、烈女、魔女の揃い踏み
2
「ひゃははは!」
鳥と人が合わさったような独特のフォルムをしたエレメンタルストライカーに乗ったセイラが高笑いをしながら、王都に近づいてきた帝国の軍勢に迫っていく。エレメンタルストライカーは地上を素早く移動出来るだけでなく、空中を自由自在に舞うことも出来る。
「……!」
「海も好きだが、空を舞うのもなかなか悪くはねえぜ! ヒャッハー!」
セイラはエレメンタルストライカーをきりもみ回転させながら叫ぶ。
「……『イグニス』、すこし突出し過ぎだ」
エレメンタルストライカーの搭乗席に通信が入る。大臣の声だ。王都の宮殿の一室が通信所となっている。セイラは声を上げる。
「ああん⁉ オレの名前はセイラだっつうの!」
「……そのエレメンタルストライカーの名前がイグニスだ」
「イグニス……」
「ああ、火を司るエレメンタルストライカーだ」
「へえ、火ねえ……」
大臣の言葉を聞き、セイラはニヤリと笑う。
「繰り返す、突出を控えるのだ……」
「そいつは無理なご相談だぜ!」
「……‼」
セイラはイグニスを駆り、相手の軍の真っただ中に突っ込んでいき、着地する。
「おらあっ!」
「!」
火をまとった剣を腰部から抜き取り、周りを一気に薙ぎ払う。帝国のロボットたちは火に包まれ、その場に崩れ落ちる。
「ははっ、どんどん行くぜ!」
「……⁉」
「おらおらあっ!」
「‼」
セイラはイグニスの手に持っていた武器を剣から槍へと持ち替えさせ、突きを繰り出す。火をまとった鋭い一撃は、三体のロボットを串刺しにする。
「ははっ! 串焼きの完成だ! うん⁉ デカいのがいやがるな……隊長格か!」
「! ⁉」
「てめえはこいつだ!」
「⁉」
イグニスが背部に背負っていた斧で、一回り大きいロボットを両断する。
「帝国軍のロボット部隊の動きにやや乱れが見られます……!」
兵士が大臣に戦況を報告する。
「あの大きなロボットは隊長機だったのか、指揮系統を失って混乱したということか……」
「恐らくは!」
「隊長機を見極めて、早急に仕留めるとは……戦の勘は並外れているな……頭のネジも少し外れてしまっているようだが……さすがは『鬼女』といったところか」
大臣が顎に手を添えて呟く。
「巨大な怪鳥の群れが空から迫ってきます!」
別の兵士が報告する。大臣も空を見上げて確認する。
「くっ! あの高さでは弓矢などは到底届かんな……」
「……任せてもらおうか」
緑色のエレメンタルストライカーが上空に舞う。ヒルデの声に大臣が頷く。
「『ウェントゥス』! 風を司るエレメンタルストライカー……」
「なるほど、風か……どおりで軽やかさを感じると思った……」
「任せたぞ」
「……一匹いくらだ?」
「え? ぎ、銀貨五枚だ!」
「命を張るのには見合わんな、せめて金貨一枚は欲しいところなのだが……」
「ぐっ……良いだろう!」
「ふっ、交渉成立だな……はあっ!」
「……!」
ヒルデはウェントゥスを駆り、怪鳥たちと同じ高度にあっという間に達する。
「ふん!」
「!」
ウェントゥスが両腕を横に振る。斬撃が怪鳥たちを鋭く切り裂く。
「斬撃を飛ばせるのか、なかなかに便利だな……」
「……‼」
残った怪鳥たちが一斉にウェントゥスへ襲い掛かる。
「遅い!」
「‼」
ウェントゥスが怪鳥たちの突撃を難なくかわす。回避と同時に怪鳥らの喉笛を掻き切る。
「……⁉」
一羽残った大きな怪鳥が慌てて撤退しようとする。
「逃がさん!」
「⁉」
「……爪やくちばしもそうだが、この羽毛などは高くつくのではないか……?」
ウェントゥスを大きな怪鳥の背中に着地させたヒルデはウェントゥスを操り、大きな怪鳥の首や翼を容赦なくもいでしまう。血が噴き出す。
「うっ……」
兵士がその様子に思わず目を背ける。
「情け容赦のない戦いぶり……まさに『烈女』だな」
大臣が若干顔をしかめながらも、ヒルデの戦いぶりを冷静に評する。
「ああっ⁉」
「どうした⁉」
「ド、ドラゴンです!」
別の兵士が指を差したその先に巨体をゆさゆさと揺らしながら宮殿にもの凄い勢いで迫ってくる赤色のドラゴンが見えた。大臣が声を上げる。
「げ、迎撃せよ!」
「ま、間に合いません!」
「ちいっ!」
「そうはさせないわよ!」
「!」
青色のエレメンタルストライカーが、両手を掲げ、ドラゴンの進撃を食い止める。その両の手のひらからは青色の結界のようなものが生じている。
「『アクア』! 水を司るエレメンタルストライカー!」
「へえ、私たちの世界と似たような言語を扱っているのね……かつての搭乗者も私たちと同じ世界から来たのなら、それもそうか……」
メリッサが納得したように呟く。
「……!」
ドラゴンが一旦距離を取る。メリッサが首を捻る。
「あらら、あっさり諦めちゃうのね?」
「いや、距離を取ったということはあれだ! 気を付けろ!」
大臣が叫ぶ。
「……‼」
ドラゴンが大きな口を広げて、火炎を放射する。
「まあ、赤い体色から大体の察しがついていたわよ……!」
「‼」
メリッサがアクアの両の手のひらを合わせ、指先から水流を発生させる。凄まじい勢いの水流は火炎を一瞬で消し去ってしまった。
「のどがお渇きでしょう?」
「⁉」
アクアはさらに水流の勢いを強め、ドラゴンは口から水を大量に流し込まれて絶命する。
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