第11話

「何だ…これ?!」


「………」




そこには君が居た。



動画の中の君は誰かのソレを咥えていた。

どう考えても合意の上っていう表情ではない。




「…お前無理矢理シたの…?」



俺の問い掛けに赤沼は少し間を開け、徐に頷いた。



「何!?お前犯罪じゃん?!」


「お前の方が犯罪じゃん?人の気持ち理解しろよ。俺はずっと前から佐原が好きだったんだよ!それなのに、お前も佐原も―…。チッやってられるかよ!」



赤沼は携帯を放り投げ、椅子を蹴飛ばして教室から出て行った。




「…………………ッ」



確かに俺がしてる事は違法だよ?でも―…、俺と菜月が望んだ事で第三者には関係のない事だ。




座ろうと椅子をひいたその時、赤沼が落として行った携帯が目に入った。



 …少しだけ、ほんの少しだけ。


 さっきのムービーが気になって携帯を拾う。





 人の携帯を勝手に見るのはいけない事だけど……俺はデータフォルダを開き、さっきのムービを探した。




 見つけたムービーを再生すると、さっきと同じく泣きながら「辞めて」と懇願する君がいた。



俺の時は嬉しそうに微笑んで、俺のモノを強請っていたのに……。


だから明らかにあの時とは様子が違う事が解る。



「…あれ…?何か言ってるよ…な?」



 ムービーの音は消しているけれど、ボリュームをあげてクラスの奴らに聞かれたら相当やばい… 。





ガラッ


赤沼が後ろのドアから教室に入ってきた。


「人の携帯勝手に見んなよ」


「…ああ……ごめん……」



赤沼はひょいと俺から携帯を奪いとり、俺の隣の席の椅子に乱暴に座った。





「‐…佐原の事好きな訳?」


「………菜月の―…身体は好きだよ?でも心は違う所にある」



俺は今の正直な気持ちを伝えた。



「それなら…。もう佐原に関わるなよ。傷つけてるだけじゃん?」



傷つける?

いや、それは違う。俺達はカップルでもないけどお互い合意の上でセックスしてるんだ。

だから赤沼の言葉の意味を理解できない。


赤沼はレイプして菜月を傷つけた癖に何が言いたいの?

赤沼の方がタチが悪いよ。

俺は苛々したけど黙っていた。

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