40男は18歳の女の子を女として見るな

桜野結

勘違いの距離感

(隆・40歳)

 今日は久しぶりに美咲に会う日だ。18歳でまだ若いけど、俺は年齢なんてまったく気にしない。彼女もきっと同じだろう。話していると、俺たちの間には見えない何かが通じ合っているような気がするんだよな。大人の余裕ってやつだ。彼女もそれを感じているはずだし、俺の落ち着いた雰囲気に惹かれているんだと思う。


 友達に話すと、「お前、ちょっと年の差ありすぎじゃない?」って笑われるけど、関係ないだろ。年齢なんてただの数字だ。実際、彼女と話してると俺も若返ったような気がするし、気持ちが軽くなるんだ。だから、こうして会うのが楽しみで仕方ない。きっと今日もいい時間が過ごせるはずだ。


 公園で待ち合わせる場所に着くと、遠くに彼女が見えた。少し迷ってるみたいだったけど、まあ、すぐにこっちに気づくだろう。俺は軽く手を挙げて、リラックスした感じで彼女に歩み寄る。


「おー、美咲!元気?最近どう?」


 俺の声に、彼女は少しびっくりしたように見えたけど、そんなのは気にしない。きっと、俺が突然現れたから驚いただけだ。よくあることだし、彼女もすぐに笑顔になるだろう。俺と話せば、すぐに楽しい時間が始まるんだから。


「最近忙しかったけど、今日はお前に会えて良かったよ。今日はどこ行こうか?」


 俺は自然な流れで話し始めた。彼女もきっと、この俺との会話を楽しみにしているはずだ。俺たちは歳の差を感じないくらい、いい関係だ。


(美咲・18歳)

 今日は正直、ちょっと憂鬱な気分だ。隆さんと会うことが、最近どんどんプレッシャーになってきてる。何度か会って話したことはあるけど、何かが変なんだ。彼の視線が妙に重いし、会うたびにどこか不気味な感じがする。年上の人とは普通に話せる方だと思ってたけど、隆さんといるとなんか違う。


 彼がどう思ってるのかも、なんとなく分かってしまうのが余計に怖い。多分、私に気があるんだろうけど、それが嫌だとかそういう次元じゃなくて、本当に気持ち悪い。私なんてまだ18歳だし、そんな風に見られるのは不自然でしかない。でも、表面では普通を装ってしまう。変な態度を取って何かトラブルになるのも嫌だし、どうやって断ればいいかもわからない。


 待ち合わせ場所に着いたけど、少し遅くしようかと迷っていた。その時、視界の端に隆さんが見えた。こっちに向かって歩いてくるのがすぐにわかるけど、なんだか心が一瞬で沈んでいく感覚がする。背筋がゾワッとする。逃げたくなる気持ちを必死で抑えつつ、なんとか笑顔を作ろうとしたけど、うまくいかない。


「おー、美咲!元気?最近どう?」


 その声に反応して振り返ると、隆さんが思ったより近くに立っていた。体が一瞬固まって、心臓がドキッと大きく跳ねた。どうしてこんなに近くに来る必要があるの?無意識に一歩後ずさりしそうになるのを必死で抑えた。彼の笑顔が妙に自信に満ちていて、それが余計に怖かった。


「……あ、うん。元気です、最近も、まぁ……普通かな?」


 そう言いながらも、言葉が喉に引っかかる感じがして、無理やり出した声だった。私の声が震えてないか、自分でさえ不安だった。隆さんの目は、私の顔をじっと見つめていて、何か期待しているような視線を感じた。これ以上話したくない、早くこの場を離れたい、そう思うけど、彼の存在感が強すぎて逃げ場がないような気がする。


 私の内心なんてお構いなしに、彼は楽しそうに話を続けている。正直、彼の話の内容なんて頭に入ってこない。ただ、この状況が早く終わってほしいってそれだけ。彼が一歩近づいてくるたびに、背中に冷たい汗が流れるような感覚があった。


「あー、そうなんだ!最近さ、俺も仕事が忙しくてね。でも、美咲みたいな子と話すとすごく癒されるんだよ。若いっていいよなぁ。俺もまだまだ若いけどさ、こうして君といると、もっと頑張ろうって気になるんだ。」


 その言葉が、私の中で何かを引き裂いた。「若いっていいよな」――そのフレーズが頭の中でぐるぐる回り始める。彼は自分の年齢を言い訳にして、私を都合のいい対象として見ているだけ。そんな考えが次々と浮かび上がってきて、胸が苦しくなる。これ以上、この空間にいたくない。心の中は「早く逃げたい、今すぐここから消えたい」って強く思っている。





(隆・40歳)

 美咲はちょっと緊張しているみたいだけど、まあ当然だろう。俺みたいな大人の男が隣にいるんだからな。年齢なんて関係ないとは言え、若い子にとって俺みたいな大人の余裕は少し圧倒的に感じるのかもしれない。俺はそこに自信を持っているし、むしろ彼女にとっては心の支えになっているんじゃないかなと思う。


「最近どう?学校のこととか、大変だったりしないか?」


 少し優しい口調で声をかけると、彼女の反応は少し淡白だけど、そんなの気にしない。女の子はちょっとシャイなところがあるから、少しずつ慣れていけばいい。俺がどれだけ彼女のことを気にかけているかを感じ取ってもらえれば、自然と打ち解けていくはずだ。そう思って、俺は笑顔を作り続ける。


 彼女がこちらを見ていると、ドキッとする瞬間がある。もしかしたら、彼女も俺に対して特別な気持ちを抱いているのかもしれない。俺の年齢と経験が、彼女にとって魅力的に映っていると思いたい。少し近づくと、ふわっと良い匂いが漂ってきた。やっぱり若い子は違うな。見た目も可愛いし、香りまでいい。これが俺の自信につながっているんだ。


「それにしても、美咲、君の香りは最高だね。さすが、若い女の子はこういうのをわかってる。」


 そう言いながら、俺は彼女の反応をじっと見つめる。もちろん、俺の一言が彼女の心をつかむこと間違いなしだと思っている。彼女が恥ずかしそうに目を逸らす様子が可愛らしいと思って、心の中でニヤニヤしてしまう。


「でも、やっぱり学校は大変だよな。俺の頃とは全然違うだろうし、色々と気を使わなきゃいけないことも多いんじゃないか?」


 俺の声が少し大きくなってしまったかもしれないが、そういう余裕も見せてやらなきゃと思っている。若い彼女とこんなに話せること自体、俺の魅力の証明だ。周りの友人たちにも、こんな若い子に好かれている自分を自慢できるんじゃないかと思い、内心ニヤニヤする。


 その時、少し彼女との距離を詰めると、さらにそのいい匂いが鼻をくすぐる。まるで俺だけの特別な香りのようで、心地よささえ感じてしまう。この瞬間、俺は自分が本当に彼女にとって特別な存在になれると思っていた。


「美咲、また一緒に遊びに行こうよ。君と過ごす時間が最高に楽しいんだから。」


 俺のこの一言が、彼女の心を射止める瞬間を待っている。きっと彼女も、俺との時間を楽しんでくれているはずだ。そう思わざるを得ない。俺が彼女を見つめる視線が、まるで彼女の心に響いているように感じる。


(美咲・18歳)

 隆さんって、なんでいつもこんなに近づいてくるの?今日も、息がかかるくらい近くまで寄ってくる。しかも、その息が……ちょっと生臭いというか、正直言って気持ち悪い。距離を取ろうと思って少し体を引いたけど、彼はそれに気づかないでさらに近づいてくる。


「最近どう?学校のこととか、大変だったりしないか?」


 また学校の話?別に学校の話なんて彼にしたくないし、そんなことどうでもいいんじゃないの?って思う。しかも、話してるときの目が、まるで私をじっと見つめてて、上から下まで視線を這わせてくるみたいで、ぞっとする。彼の顔を見たくないけど、無理に笑顔を作って答えるしかない。


「うん、まあ、普通に大丈夫です…」


 早く帰りたい。この空間にいるのが辛くなってきた。息遣いも気になるし、あの視線も気持ち悪い。友達と話してるときみたいに軽く話せばいいのに、どうして隆さんはいつもこんなに重い感じなんだろう。体が勝手にこわばって、逃げ出したくなる。


 彼が少し近づくたびに、ふわっと香る自分の香水が余計に気持ち悪さを際立たせてる感じがして、なんだか自分の存在すら嫌になりそう。目の前の隆さんが、まるで自分を自分でない何かみたいに見ているようで、怖い。この場から一刻も早く抜け出さないと、本当に気分が悪くなりそう

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