男の期待と私の不安
(隆・40歳)
美咲の反応、悪くない。むしろ、彼女がちょっと恥ずかしがっているだけだろう。こういう若い子は素直だから、少しずつ慣れていくはずだ。俺がもう少しリードしてやれば、彼女ももっと心を開いてくれるんじゃないか。そんなふうに考えると、ますます自信が湧いてくる。
「美咲って、ほんとに素直だよな。だから話しやすいんだ。俺たちって、きっと相性いいと思うんだよね。」
俺は優しく微笑みながら言葉を続ける。彼女も心のどこかで同じように思ってるに違いない。確かに年齢は離れているが、そんなものは些細な問題だ。心が通じ合っていれば、年齢なんて関係ない。彼女が少し驚いたような表情を見せたが、これは悪いサインじゃない。むしろ、戸惑いの中に何かを感じ取ってくれているはずだ。もっとリードして、彼女に安心感を与えてやらないと。
「焦らなくていいから、ゆっくりでいいんだよ。俺たち、これからもっといい関係になれると思うんだよね。」
俺はさらに彼女に近づき、笑顔で声をかける。彼女の瞳の中に俺の姿が映っている。俺たちの関係は、これからもっと深まるに違いない。彼女もそれを分かってるはずだ。少しずつ、時間をかけて、きっと彼女も心を開いてくれる。
(美咲・18歳)
「相性がいい?」そう言われた瞬間、心の中で思わず息を飲んだ。何を言っているんだろう、この人。どうしてそんなことを言うのか全然分からない。私はただの知り合いだし、それ以上でも以下でもない。ただ、たまたま共通の知人がいるだけで、私にとってはほとんど他人同然だ。
「ゆっくりでいい?」またその言葉。焦らなくていいって、何を焦る必要があるの?私、そんなつもり一切ないんだけど。
顔を上げると、彼が一層近くにいることに気づく。距離が近すぎる。鼻息が聞こえそうなぐらい。なんだか、肌のきめの荒さや、目の下のシワが目に入ってしまって、ますます気持ち悪い。彼の顔に浮かんでいる薄ら笑いも、正直ゾッとする。口を開けば息がかかりそうで、すぐに顔を背けたくなる。
「えっと……そうですかね……?」
とりあえず、適当に返事をしてみたけど、心の中では「早くこの場を離れたい」という思いしかない。彼が言うたびに、どんどん気持ち悪さが募ってくる。彼は自分のことをどう勘違いしているのか、本当に不思議だ。しかも、なんでこんなに自信満々で話してくるんだろう。
近づいてくるたびに、彼の顔や体の細かいところが目に入ってくるのが嫌だ。肌がカサカサしてて、なんかちょっと荒れている感じがするし、髪の毛も油っぽくて少し薄い。しかも、なんか服もシワシワで、全体的におじさんって感じがする。この人、40歳だよね?そうだよね?なんで自分が18歳の女の子とこんなに話が合うって思ってるんだろう。
そして、その匂い。最初は気づかなかったけど、距離が近づくたびに何かが鼻をつく。たぶん、彼は自分で「いい匂い」を意識してるつもりなんだろうけど、それが逆に鼻について、息が詰まりそうだ。強すぎるコロンと、汗の混じった微妙な臭い。息も何だかこもった感じで、近くにいると吐き気がしそうになる。
「うん、そうですね……」
とりあえず、また曖昧に返事をした。会話を無理やり続けるつもりはないけど、彼が話をやめないから仕方なく答えてるだけ。本当は、早くこの場を終わらせて、もう帰りたい。なんとかして「もういいです」って言いたいけど、どうしても口に出せない自分が情けない。彼がどう思ってるかは分かるけど、私にとってはただの迷惑でしかない。このままどうやってこの状況から抜け出すか、そればかり考えている。
「うん、でも、最近はちょっと忙しくて……」
一度話題を変えようとしてみた。これで彼が気づいてくれたらいいのに。でも、彼は笑顔で頷くだけ。まるで話が通じていないみたい。彼の笑顔が、さらに気持ち悪さを増幅させていく。
(隆・40歳)
美咲が恥ずかしそうにしているのを見るたび、俺はますます彼女が可愛いと思えて仕方がない。少し緊張しているのも若さゆえだろうし、俺に対してまだ心を開ききれていないんだろう。でも、それは時間の問題だ。俺が優しくリードしていけば、自然にもっと打ち解けるはずだ。
「美咲、君って本当に可愛いよな。こんなに話してると、やっぱり俺たち気が合うんじゃないかって思うんだよ。」
自信満々で言葉を紡ぎながら、さらに一歩彼女に近づく。彼女の髪からふんわり漂ういい匂いが、俺を心地よく包み込む。やっぱり若い子は違うな。肌もきれいだし、何より香りが新鮮で爽やかだ。
「無理に焦らなくていいんだよ、俺たち、ゆっくり進めばいい。君もそう思うだろ?」
彼女もきっと俺の気持ちに気づいてるはずだ。俺は彼女に理解してもらうために、もっと深く話を続けるつもりで、さらに微笑んだ。
(美咲・18歳)
またその言葉。「ゆっくり」って、何を進めるつもりなの?私はただ普通に会話をしているだけなのに、彼が勝手に何かを進めようとしているみたいで怖い。本当に何がしたいのか分からない。目の前にいるのは、ただの知らないおじさん。なんで私がこの人と「ゆっくり」何かを進めなきゃいけないの?
「気が合う」って、何が?この人、何か誤解してない?私はただ、早くこの場を離れたくて仕方がない。彼が一歩近づくたびに、その肌の汚れや口臭が気になって仕方ない。息が近すぎて、なんだか生温かい空気がまとわりついてくる感じがして、嫌悪感が込み上げてくる。
「可愛い」って……何なのこの人?なんでこんなこと言ってくるんだろう?
彼がさらに近づいてきた瞬間、ますます息が苦しくなってきた。もう無理、これ以上は耐えられない。このままじゃ、この人がもっと勘違いするだけだ。私が少しでも反応を見せると、彼はそれを全部「前向きに解釈」してるように見える。正直怖い。彼は私の返事を全く気にしていないみたいで、自分の世界に浸っている。私の気持ちなんて、全然見えてないんだ。
「えっと、ちょっと……用事があるので、そろそろ……」
何とかこの場を終わらせたくて、言葉を探す。彼の自信満々な表情が気持ち悪いし、彼が私をどう見ているのか考えると、ますます怖くなる。もう笑顔すら作れない。どうしても体が硬直してしまう。でも、ここから逃げるにはそれしかない。
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