マイ・ベストヒーロー~病弱ちゃんと不良君~
間中ことは
第1話
(よりによってどうしてこの人が隣の席なの?)
小学生のときに発症した心臓病の治療で休学していた私。
入学式から遅れること半年、ようやく高校に登校した。
すでに構築された友人関係の中にすぐに馴染めるとは思っていない。
隣の席の人とのお喋りから始めて、少しずつ打ち解けていけたらいい。
そんなふうに期待に胸を膨らませていた。
(それなのに!)
与えられた席は教室奥、窓際の一番後ろ。左隣はいなくて、右隣の席は……。
「なに? あ、おまえ……」
「ご、ごめんさない!」
怖い! 睨まれた。ちらっと見たら、ギロッと睨まれた!
っていうか、まだ睨んでる。
私は急いで目線を外した。
隣の席の三澤君という男子は、真っ赤な髪で目つきが鋭く、喧嘩の痕なのか、顔や体にいくつかの傷を負っている。
この人絶対に不良だ。どうして唯一の隣の席の人がこの人なんだろう。
変な言いがかりをつけられたりとか、怖いことをされませんように。
左手首につけている、赤いラバーバンドに触れてそう祈る。
このラバーバンドは、幼い頃に好きだった遊園地のヒーローショーで貰ったノベルティだ。
家族でよく利用した遊園地には人気のヒーローショーがあって、町中の小さな遊園地なのに、専用の全天候型ショー施設が設けられていた。
心臓を悪くしてからは行けていないけど、最初の入院の前にお父さんにお願いして連れて行って貰い、一番好きだったヒーローに、「がんばれ!」と書いて貰ったラバーバンドは私のお守りになった。
不安なことがあると、いつもこうしてバンドに触れて、お願いをする癖がついている。
もう一六歳になろうとしているのにこどもっぽい、って誰かに思われたって、私の大事なお守りなのだ。
ちらり。
三澤君を横目で見てみる。
彼の顔の向きはまだ私にあるようだ。
(どうか三澤君に目を付けられませんように)
私はラバーバンドを手首ごと握って、もう一度祈った。
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