第18話

「真湖ちゃん。そういう事だから、俺行かないと。

うちの組と、他所の組とのちょっとしたトラブルで。

そのトラブった奴に話し聞くのに今から事務所に。

だるいなぁー」



そう、わざとらしくため息をついている。



「一夜を永倉ジュニアが迎えに来るとか?

永倉…息子?」



「そうそう。うちの直参に永倉組ってのがあって。

永倉の父親が組長でその息子が若頭なんだけど、

どっちも永倉だから、息子の方を永倉ジュニアって呼んでる」



「そうなんだ」



「そう。

俺、着替えたらすぐ出るけど、

真湖ちゃんは朝迄ゆっくりして帰ればいいよ?」



「え?いや、私も帰る」



一人でラブホテルで一晩過ごすって…。



「ダメ。本当にこの辺り物騒だから。

さっきよりも、今みたいな夜の店が閉まった後の時間なんか特に。

せめて朝日が昇る迄、ここで大人しくしといたら?」



「でも…」



今夜は、急いで家に帰らないといけない理由もないけど。



お母さんには、今夜は帰らないと伝えているから。



けど、やはりラブホテルに一人は嫌だな。



「あ、じゃあ俺と一緒に出る?

ついでに、永倉ジュニアに真湖ちゃんの事を家に送らせる」



「え、いや、それは悪いから!」



だって、その永倉ジュニアもヤクザだろうし。



そんな人に送って貰うなんて、怖い。



「それは気にしなくていいよ。

それより、時間ないからダッシュで着替えて!」



急かすようにそう言われ、どうしよう、と思いながらも、頷いた。

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