第13話

「真湖ちゃんの誕生日が、嫌な思い出だけになったら、可哀想だなって。

祝うのが俺なんかで、悪いけど」



「ううん。

凄く嬉しい。ありがとう」



「そんな風に言われたら、ちょっと照れ臭いし」



そう、恥ずかしそうに笑っていて、それを見て私もクスクスと笑ってしまう。



「あなたの誕生日はちゃんと誰かとお祝いするの?」



やはり、彼女とかと祝ったりするのだろうか?



明日というか、日付的に今日の夜とかに。




「うちの組の奴らが、そこそこテレビに出てる手品師とか呼んで、パーと祝ってくれるって」



それは、組員総出の誕生日パーティー的なもの?



「彼女とかと二人でお祝いしないの?」



「しない。今、彼女居ないんだよね、俺」



「そう…」



それは本当だろうか?



この人が独身なのは、知ってるけど。



「ここだけの話、ヤるだけの女は沢山居るけど」



「最低…」



「どう?真湖ちゃん俺と付き合う?」



「いや、それは…」



「俺、浮気はするかもしれないけど、誕生日の日に彼女を一人にするような酷い事はしないよ?」



そう言われた言葉や私を見る目が優しくて、

胸がドキドキと高鳴る。



「けど、俺はヤクザだし、やっぱり真湖ちゃんみたいな子と付き合うのは無理だ」



そう笑っていて。



先程、付き合う?って言ったのは冗談だったんだな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る