2人の誕生日

第3話

目の前の景色がぐらぐら揺れ、足元がフラフラする。



お酒は強い方ではない自覚はあったけど。



もう無理だ、と重力に従うように、地面に座り込んだ。



つい先程迄雨が降っていたからか、

地面がひんやりとして、私のついた膝を濡らす。



スカートも濡れたかも、とぼんやりと思う。




「酔ってるの?大丈夫?

こんな所で座り込んだら、服濡れるよ?」



その声と同時に、背後から両脇辺りに手を差し込まれ、強い力で上に引き上げられる。



「えっ…、ちょっと、離して!」



声は男性のもので、そうやって知らない男性に触られている事に、

慌てる。



自分の足で立ち、その手を振り払うように振り返った。



少し心配そうに、でも、笑ってこちらを見る、その男性。



あ、けっこう格好いい人だな、と思ってしまった。



私と同じ大学生くらい?と思ったけど、もうちょい上かな?



でも、平日の夜のこんな夜中に私服姿で、髪も絶対に地毛じゃないくらい茶色くて、前髪も目に掛かりそうで。



赤いフレームの眼鏡。



まともに働いてないか、夜の仕事か美容師?



こんな歓楽街に居るくらいだから、夜の仕事?



「なに?俺の顔ジッと見て?

あ、もしかしたら、俺達知り合い?」



そう言われ、え、と思うけど。



言われてみると、この男性の顔を見た事あるような気がする。



でも、私にこんなチャラチャラとした知り合い居ないし…。



「大丈夫?」



向かい合い、両肩を支えられる。



この人が支えてくれなかったら、また私は座り込んだかもしれない。



足に力が入らなくなって来たのもそうだけど。



意識が朦朧として来た。



ぼんやりと、その後の事は、覚えている。



その男性に凭れるように抱き着いてしまった。



「えー、どうなの?これ?

喰っちゃうよ?」



そう、クスクスと笑いながら言ってるのが聞こえる。



この人の香水なのか、とても良い匂いがして、

そのまま意識を手放した。

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