【閑話1】巡礼開始前 その2

【SS アイファの評価】


「……しかし、彼女たちが私の親衛隊だというのは本当なのか?

 そんな存在があったなどと、聞いたことがないのだが?」


 それはエスカに呆れるしかない私が、いろいろ誤魔化そうと思って口にした新しい話題の切り口。



「お待ちください、アイファお姉様!

 やはり巡礼の旅にそんないい加減な奴を連れていくのは反対です!」



 そう彼女たちが言ってきたことで、今のようなことになっている訳だが、『そもそも親衛隊を作ってもらえる程、彼女たちに好かれるようなことなどしていないのだが?』というのが私なので、私にとっては当然ともいうべき事実確認であった……が。


「「……ハァ」」


 ため息吐かれた。2人一緒に。

 ……って、なんでだ!?


「でたよ……この、ニブちんアイファ」


「あの誰にもデレなかった『ツンだけベルエッタ』ですらデレさせた癖に、

 よくもまぁいけしゃあしゃあと……」


「ニ、ニブちん!?

 ……って、何故にこのタイミングでベルエッタの名前?」


 それも私の同期の神使みつかいの名前だが……急にどうして?


「「……ハァ」」


「だからそのため息は何なのだ!?」


「……まぁ、アイファが品行方正こんなんなのは、今に始まったことじゃないけど……」


清廉潔白そんなんだから親衛隊ができるんだってこと、もっと自覚した方がいい。

 ……というかしてくれないと困る。主に私たちの精神衛生上」


「精神衛生上?」


「だね。特にハイラルディンここじゃ出会いなんて碌に無いし、

 外で男が作れる神使みつかいならともかく、

 神子みこちゃん達じゃそういうのも無いから……」


「あなたに惹かれるのも無理はない。あのエスカって子だってそうだろうし。

 ……無論、同性愛ってところまでじゃ無いんだろうけど」


「そうなの、か? ……って、外でって……

 他の神使みつかい達は、巡礼でそんなことをしているのか?」


 確かに神使みつかい神子みこは、恋愛が御法度という訳ではないが……って、なんか急に話題変わってないか?


「まぁ、あなたみたいに

 神使みつかいという役職に誇りとか憧れとかを抱いてもって外から入ってきた組は

 そんな気持ちはないんだろうけど、

 生まれがハイラルディンここの子たちだと、

 コロっといっちゃうことも多いみたいだから」


「な、なるほど……?」


 生まれがハイラルディンここというのは、ハイラルディンにある孤児院のことを指すのだろう。


 そして、ハイラルディンには男性が居ないので、巡礼で初めて男性と接するということになると、ついそういったことに興味を抱いてしまうという感じか。


 私は生まれ故郷では、普通に年上の男性とも接していたしな……って、だから話変わってないか?


「おかげで男作って神使みつかいを辞める子も結構居るらしいし。

 聞いた話じゃ、最近フォルグ様が始めた神使みつかい特別強化生制度も、

 神使みつかいが男作って辞めるっていう体裁の悪さを誤魔化してあげるために

 始めた制度だっていうもんね」


 神使みつかい特別強化生制度とは、確かフォルグが特別に目をかけた者たちが、その腕前、神使みつかいとしてのレベルを引き上げる特別メニューを課されることになっているという制度だったか。


 そして、その強化生に選ばれた者は、2度と戻ってきてはいないという話もあると、確かにモーリィの言うようにその可能性も……って、あれ? 特別強化生?


 なんかその言葉、どこかで……


 今まではエスカのような力を貸してくれそうな子を探すのに必死で、あまりその制度を意識していなかったが……いま改めて聞くと、その言葉を私は知っているような気が……


「って、少し話逸れたけど……

 要するに色々溜まってる子には、

 アイファの距離の近さは劇薬レベルにヤバイってこと」


「だね」


「……今も話は逸れてないのか?」


 何故、男性に免疫が無いと私が劇薬扱いされるのだ?


 私はさっきからお前たちの話をちょこちょこ聞きそびれているのか?


「いやだって……アイファって本当、気にせず体とか触れてくるじゃん?

 体を押し付けてくることもあるし」


「そ、それは女同士なのだから別に……

 って、も、もしかして嫌だったのか?

 だとしたら無意識とはいえ、申し訳ないことを……


「嫌って訳じゃないし。むしろ嫌がる子がいないって話。

 なんかいつもいい匂いするし。鍛えているはずなのにすごい柔らかいし。

 こっちが汗かいてても『私は気にしないぞ』とかイケメンムーブかましてくるし」


「気遣いはできるし、人当たりは良いし、フォルグ様にだって気に入られてるし。

 あと、エグイぐらいに美人でスタイルもい……


「お、おい……急にどうした?

 ……というか、面と向かってそのようなことを言われるのはその……

 さ、流石に恥ずかしいのだが?」


「そしてそれ!

 その恥ずかしい思いをした時にはめっちゃ顔を赤らめて恥ずかしがるところ!

 なにそれ、可愛すぎない?! イケメンで可愛いって反則じゃない!?」


「わかる。男に渡したくないぐらいキュンキュンする」


「だよね~。おかげで攻めでも受けでも需要あり過ぎで

 ついあなたで致しちゃった・・・・・・こともあるし。

 ……すんなり何度もイけた・・・のには流石にビックリしたけど」


「攻め? 受け? た、戦いの話か?」


 にしては『致しちゃった』とか、『行けた』の意味がわからないが。


「私も。

 ……というか、同期やその下でアイファで致してない子がいないと思う」


「お前も?」


「しかも、あのベルエッタに至っては、

 毎夜あなたで何度もしてるって、隣の部屋の子が言ってたs……


「あ、あの……お前たちはさっきから何の話を……」


 やはり私は話の途中を聞きそびれているのか?


「別に? アイファは知らなくていいことだよ」


「そ。アイファはそのままが良いって話」


「?????」


 そうして、途中から彼女たちとの会話についていけなくなっていた私の肩を、何故か温かい目で叩いてくるユリンとモーリィなのであった。



 ……って、本当に何なんだ?


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