【第2話】聖術

「……ん♡ …ハゥ♡ んんっ♡♡ ……ハァ♡♡♡ ……んっ♡♡♡♡♡

 あ、イ、イk……んんんっ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡!!!!!!!!


 …………ふぅ♡


 ……それで? 結局、あたしらはこれからどこへ行くんですか?」



「まずは荷台で何をしていたか言えぇぇぇぇぇ!!!!」



 それは目的地に向かう馬車での私の憤り。


 私の妹分たる神子みこのエスカは初めて馬車に乗るということなので、私が御者として馬を駆ってやっていたというのに、聞こえてきたのが先程の声であったと、私は怒りを露わにしていたのだった。


 ……まぁ、誰だってそうなるだろうが。


「なにって……

 風になびいて香ってきたアイファ先輩の素敵な匂いに、

 ついあたしの股間が発情しときめい……


「いや、すまない。自分で言っておいてなんだが、やはり何も言うな。

 そして今後一切教えるな。

 勢いに任せて言ってしまっただけで、

 きっと聞くと後悔するだろうから何も言わないでくれ」


 できれば一生。

 ……ま、まぁ、何となくわかるし。


「えぇ~?! もう~、どっちなんですか~。

 新手の羞恥プレイかと思って、心もお股もドキドキしてたのに~♡

 アイファ先輩は攻めるのがお好きなんですね~って♡」


「お前なぁ……。

 それより、暇なら『聖術マナライズ』の特訓でもしておけ。

 聞けばお前、聖術マナライズの特訓をいい加減にしていたそうじゃないか」


 正確には聖術マナライズの特訓『も』だそうだが。


「えぇ~」


「え~、じゃない。……ったく」


 そうして、狭い御者席であるのに私の隣に無理矢理座った銀髪ショートのエスカに取り掛からせた聖術マナライズとは、我ら神使みつかい神子みこを含めた戦乙女ワルキュリアが、戦乙女ワルキュリアになるために覚えなくてはならない技術のことだ。


 右手の甲に移植された聖術具ライズ・ツール――聖晶器カルマ・コアを動力源とする聖具カルマ・ツールと呼ばれる物の一種――によって知覚できるようになる瑪那マナ――この世界に存在する目には見えない物質――を使って、自然の力の模倣ともいうべき事を意のままに発現させるという摩訶不思議な行為のこと。


 理屈や理論は全く知らされてはおらず、その技術によってフォルグは1000年以上前にこの世界を支配したそう……だが、今はいいか。


 その技術――特に瑪那マナを知覚するという行為は非常に繊細なものであり、誰にでも使えるという訳ではなく、戦乙女ワルキュリアになるべく全寮制の戦乙女ワルキュリアの養成所――通称:宿舎しゅくしゃに集った者のうち、およそ半数以上は聖術マナライズを使うことができず、25歳までという年齢制限によって戦乙女ワルキュリアになることを諦めざるを得なかったりする。


 それを幸いにもできるようになっていたのが私であり、エスカであるという訳だが……



「……よし! できた! おち○ち○!!」



「何でそれを作ったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」



 青い瞳を輝かせて何を見つめているかと思えば、宝の持ち腐れとばかりに、自分のスカートの中から長さ20cm台のソーセージをニョキっと生やして……って、本当に何してんの? この子。


「いや~、いつかアイファ先輩に使ってもらおうと思って♡」


 元々はただの自己満足的に使おうと思って練習していたそうだが、私に出会ったことで、最初は私がいいとずっと我慢していたとも。


「って、聞かせてくれるな! お前のそんな性事情!!」


 ちなみに、周りから聞いた話によればこのエスカ、先ほど言ったように宿舎での聖術マナライズの授業は適当に流し、戦闘術の訓練では『一本で強いなら二本で二倍強い!』とか言って、ハイラルディンに継承されている『ハイラルディン流戦闘術』の項目にはない二刀流を独自に編み出しそれにだけ励み、座学に至ってはほとんど寝ているという問題児中の問題児だそうで、そのせいで巡礼に出発する前にはひと悶着あったのだが……それはまた別の機会に語るとしよう。


 ……別に語る必要もないのだがな。


 一方で、こうして数ある自然の属性ともいうべき概念の比較的覚えやすいと言われる四大よんだい属性のうち、地の聖術マナライズを易々と使っておち○t……んんっ! 男性にしかない部位を作ってみせたのだから、才能だけはあるのだろうが……


「なんでそう、くだらないことに才能を使ってしまうんだ。お前は……」


 おかげで頭が痛くて仕方がないという私を余所に、当のエスカはといえば、


「確かに。これを使うのはアイファ先輩なんだから、

 あたしに生やしても意味なかったですよね。


 ……という訳で、はい。アイファ先輩♡」


 ニョキッ♡

 と、すぐさまソーセージを私に生やす……って!!


「生やすなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 しかも、ご丁寧にスカートの下から生えてきたっていうか感じまで出してるし!!


「そりゃ、スカートの上からじゃ、情緒が無さ過ぎますから」


「いや、情緒の話なんてしてないんだが!?

 おち○ち○を生やすなという話をしているんだが!?

 ……って、ついおち○ち○って言ってしまったではないか!! 恥ずかしい!!」


「……フフフッ。アイファ先輩のおち○ち○♡」


「やめろ! 私のおち○ち○を撫でるな!

 ……って、私のおち○ち○ってなんだ?!

 つい言ってしまったが、私のおち○ち○ってなんなんだ!?」


 確かに股間から生え、ブラブラとしてはいるが、少なくともこれは私のでは無……


「……ん~」


「……って、今度はどうした? 急に黙り込んで」


 お前の情緒はどうなってるんだ?


「いや~、とりあえず作ってはみたんですけど……

 おち○ち○って、こんな感じで合ってるのかなって?」


「え?」


「ほら、流石にあたしも本物のおち○ち○は見たこと無くて、

 とりあえずソーセージみたいって話だったんで、

 ソーセージっぽく作りましたけど……」


「ま、まぁ、そうだな。確かにこれはまんまソーセージだもんな」


 今朝、ハイラルディンの宿舎の食堂で、朝食のメニューの一つとして食べている者も居た気がするし。


「う~ん、もう少しディティールにこだわりたいなぁ~」


「いや、そこに拘ってる暇があるのなら、

 もう少し真面目に聖術マナライズの特訓をだな……」


「本当、なんで宿舎じゃもっとおち○ち○のこと教えてくれないんでしょうね?

 普段は小さいけど、興奮すると大きくなる棒状の物ってことぐらいしか

 教科書にも書いてないし」


「お前、性教育の勉強はちゃんとしているのか……」


 他の事に関しては『だって、興味なかったので』と、聞いた話は本当だったというし……


「ちなみに先輩は見たことあります? おち○ち○」


「え? ……い、いや……私もおそらくお前と同程度の知識しか無……


「なるほどなるほど。

 ……つまりアイファ先輩は未だに処〇はじめてと♡」


「ぬあっ!? お、おまっ!?」


「アイファ先輩は処〇はじめて♪ アイファ先輩は処〇はじめて♡」


「や、やめろ! はしたない!!

 そもそも、嬉しそうにするなぁぁぁぁ!!!!」


 こうして、『とりあえずおち○ち○に関しては後で勉強しておきますね?』と言ったエスカに対し、この話まだ続くのかと呆れることしかできない私なのであった。



 ……というか、早くこのおち○ち○外してくれ!! なんか恥ずかし……






「……アハァ♡ 新しい妹ちゃん、見~つけた~♡」






 ……って、なんだ?

 今、とても嫌な視線を感じた気が……


 気のせい、だったか?

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