姉の身代わりで嫁いだ残りカス令嬢ですが、幸せすぎる腐敗生活を送ります
やきいもほくほく/ビーズログ文庫
一章 残りカス令嬢と腐敗魔法
1-1
――ここはベルファイン王国 この国に住む貴族たちは、
しかし、ネファーシャル
十六
代わりに十八歳になる姉のアデルは両親に愛されて育つ。
明るくてよく笑い、彼女はマグリットにとっては
アデルはハニーゴールドの髪と
そしてアデルの魔法はベルファイン王国で初めての『
自分の身を守るように防壁を張る。
小さい
両親も魔法の力が強いわけではなく、
そんな中、珍しい魔法の力を持ったアデルは二人の希望となった。
両親はアデルを『特別な子』『神様からの
実際にアデルの魔法の力がわかってからネファーシャル子爵家にはいいことばかり起こる。
ネファーシャル子爵領は雨が降りやすく、作物が育ちづらい土地で、年に何度も
しかしアデルの防壁魔法のおかげかはわからないが、毎日のように空は
特別な魔法属性を持つ子どもは何かと
ベルファイン王家には二人の王子がいた。
アデルの
しかし両親から過保護に育てられていたアデルは騙(だま) されやすく世間知らずな一面もあった。
一方、マグリットは『残りカス』と呼ばれていた。
両親はマグリットを自分たちの子どもとしてではなく使用人として育てていた。
自分がマグリットの立場だったら、そう考えるだけでゾッとするだろう。
今日もマグリットは、誰よりも早く起きて
畑から野菜を
そうやってシェフや従者、庭師や
そのためマグリットはそれらの代わりに朝から晩まで働き通しである。
身なりを
掃除が終わり、街に買い物に出て昼ご飯や夕ご飯の材料を買っていた。
マグリットは街の人たちの同情の視線を感じながら、カゴに卵やオマケをしてもらったパンの耳を入れた。
そして立派な屋敷へと走っていく。 アデルと
けれど、マグリットはこんなひどい
こうして街の人たちは、マグリットの
それがわかっていてマグリットも暗い顔を見せることなく、
多感な時期にもかかわらず、
それはマグリットが、日本という国に住んでいた
日本では
二人の最期を見届けた後、住む場所を探すついでに
自分で言うのもなんだが、祖母に教えてもらった料理はどれも絶品だ。
(……ああ、日本食が食べたい)
そんな気持ちで卵を見ていると、あっという間にネファーシャル子爵邸に着いてしまう。
(いけないっ! 早く昼食の準備と夕食の仕込みをしないと……!)
雇っていた料理人が急病の際に、マグリットに食事を作れと命令したネファーシャル子爵と夫人。
何よりアデルがマグリットの料理を気に入ったことがきっかけで、毎食作ることになった。
自分が食べたくて日本食に近いものを作るのだが、もちろんベルファイン王国にはないものばかりだ。
マグリットが料理をしたことがないのを彼らは知っていたので、オリジナルのレシピだと思われているようだ。なので気にせずに好きなものを作っている。
掃除も料理も買い物も、マグリットにとっては苦痛ではなかった。
アデルや両親がマグリットを馬鹿にしているため、皆には
そんな日常に大きな変化が起こるとは思わずにマグリットは広い
マグリットがいつもの昼食の時間にスフレオムレツとサラダと手作りのマヨネーズ、オリーブオイルと塩とパン、昨日から味付けしていた肉を焼いたものを、手のひらと腕に何皿も乗せ、
「あれ……?」
いつもは
マグリットはテーブルに料理を置いて首を傾げた。
(……珍しいこともあるものね。席についていないなんて。何かあったのかしら)
マグリットがそう思っていると
とりあえず時間通りに用意したように見せるために、皿を並べて
慌てた様子で部屋に入ってきたネファーシャル子爵と夫人。
マグリットの姿を視界に入れた
ワンピースの
「――おいっ、答えろ! アデルから何か聞いていないか」
「え……?」
「いやよぉ、アデルッ!まさかっ、そんなぁ……
やっと手が
珍しく取り乱している二人を見ながら、マグリットは襟元を直すことすら忘れて
していた。
子爵は数少ない使用人を呼んで血走った目でアデルのことを聞いている。
「一体、どうすればいいんだ。すっかりアデルも
「もう約束まで一週間しかないのよ やっぱりアデルは納得できなかったのね。どうしましょう……!」
二人はアデルをどんなことよりも優先してきたはずなのに、何かがおかしい。
どうやらアデルは一カ月前に
アデル自身も嫁ぐことに納得したと言っているが、この状況からしてそうではなかったらしい。
「アデルは今どこにいるんだ。まさかあんな顔だけの男についていくなんて信じられない……っ!」
「あのベーイズリー
「今から
「馬車の車輪の
会話の内容から推測するに、どうやらアデルは朝食を食べた後すぐに裏口から
アデル付き侍女のレイにも『具合が悪いから昼食まで休む』と伝えていたらしい。
レイはアデルの言葉を信じて他の業務にあたっていたそうだ。
(これだけ使用人が少なければ誰にも見られることなく、簡単に屋敷を
マグリットを含め、使用人が三人しかいないネファーシャル子爵家。
表向きには
アデルの駆け落ち相手であるオーウェンはベーイズリー男爵の次男。
ベーイズリー男爵領はネファーシャル子爵領の
オーウェンとアデルは顔見知り程度だったはずだが、実は最近になりマグリットは何度も二人の
夜中にアデルが部屋の窓から身を乗り出し、そのアデルに愛を
それに
アデルを間近で見てきたマグリットだが、何一つ自分でしたことがない彼女がこれからどう生きていくのか気になるところだ。
特に美しさにこだわりを持っていた夫人は、
子爵家は決して
自分のことは少しならば自分でできる子爵たちだったがアデルだけは別。ずっと侍女のレイがつきっきりで世話をしており、お
アデルに
(もし王子だったらお
アデルの結婚相手は一体、誰なのか……ネファーシャル子爵たちの反応を見る限り、格上の令息であることには
と言っても、社交界に出ていないマグリットが結婚相手の名前を聞いたところでわかるはずもない。 マグリットは取り乱す二人を観察しながら壁の
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