七つの魔人〜凡人の俺が最強の魔人と友達に!?〜

偶然寺かなめ

第1話 好奇心とは、人を動かせるための最大の燃料である。

 かつて、この世の七割を滅ぼした魔人達がいた。

彼等彼女等は七つの魔人と呼ばれ、人々から恐れられていた。

しかし、この魔人達は死闘の末英雄に討ち取られ、消滅したのだった。───

 ───それが約二千四百年前、西暦千年頃から千年間も続いたとされる「世界千年戦争」である。


 西暦三千四百年、十一月。

「教科書百九十五ページ開けー」

「……」

今日の昼飯なんにしようかな…


ギーーーーーーーーーン


「えー、西暦千年から約千年間続いた歴史的な大戦争、は、騎士下鳥 恵壱朗したどり けいいちろう率いる英雄達により、この戦争の原因である魔人達が討ち取られ、結果世界にはまた平穏が訪れたのであった…と、ここテスト出るからなー、メモっとけよー」

「「「はーい」」」

あ、エビフライ食いたいな。


ギューーーーーーーーン


「ちなみにこの戦争により世界の何割が被害を受けたか、はい鈴木すずき!」

タルタルソースってなんであんな美味いんだろう。

あゆむ!歩!指されてんぞ!」

「…あ、何?」

「何じゃなくて!指されてるって!」

「なーんだ分かんねーのかぁ?昨日もやったぞー」

「あー…ごめん康太、カスセンなんて言ってた?」

「世界千年戦争の被害は世界の約何割かってさ」

「おけ。はい!五割!」

「はい!不正解!」

「「「(笑いの渦)」」」

「なんっだよ!そんな笑うか!?」

「だって!あんな自信ありげに答えたのに(笑)」

恥ずかしすぎて死にそう


グヲーーーーーーーーン


「はい座れ座れ落ち着けー(笑)流石に鈴木が可哀想だー(笑)」

「カスセンも笑ってんじゃねーか!」

カスセンまじ許せん

「えー、で。この英雄達についてー」

もう決めた、今日は奮発してスペシャル定食頼むわ。この心の傷を癒したすぎる。


ドスーーーーーーーーン


…てか、さっきからなってるこの音なんだよ。どっか遠くで工事してるみたいな、飛行機が飛んでるみたいな……

 鈴木 歩すずき あゆむは気になって窓の外を覗いた。

すると近くの山の方から、黒いモヤのようなものが立っているのがわかった。

「なんだ…あれ」

「ん?何が?」

「いや、あれ…」

「?なんもねーけど?」

「は?いやいやあれだってあれ!」

「だからなんもねーって!寝不足で幻覚でも見てんじゃねーの?動物の画像ばっか検索してるからだよ」

「ちげーって!ほら!!」

「お前ら…」

「「ヒッ」」

「まともに授業聞く気ねーならそれでいいが、俺はお前らの評価を自由に操れるいじれるて事、忘れんな?」

「「……はい…」」




 絶対おかしい。

あの黒いモヤは薄くなってはいるが、康太こうたもカスセンも皆見えていない。あれは絶対何かある、俺の勘がそう言ってるんだ間違いない。

トンッ「あだっ」

誰かにぶつかり、ぶつかった相手が衝撃で倒れる。

「あ!ごめん!大丈夫か!?」

立てるか?と言って手を差し伸べる。

「…いや、こちらこそごめんね、私も不注意だったよ」

「怪我ないか?」

「大丈夫、心配しないでくれ。」

 ……すごい、美人だ…

彼女は青紫系の花束を詰めこんだような瞳と、藤色ふじいろの長髪…なんだかとても爽やかで鮮やかな美人だった。

「ぶつかって悪かったな、ごめん。でも歩き読書はやめた方がいいと思うぞ」

「そうだね、これからは気をつけるよ」

「あ、その本…」

「あれ、興味あるのかい?」

、ついさっき授業で習ったんだ」

「へえ、この戦争を授業で習うのか」

「?知らなかったのか?」

俺は一年だしここは中等部がないから、後輩で習ってないって事はないよな…俺と同じサボり症か?

「ここで出会ったのも何かの縁かもしれないね。一応名前を名乗っておくよ。」

「お、おう」

「私の名前は文司 満有もんじ まゆう。ただの読書好きな美少女さ」

「自分で言うのか…」

「あれ、君さっき私に見蕩れていなかったかい?」

「なっ!?」

ッッんでそれを知って!?

「恥ずかしがらなくていい。私は歴史的美女、いや美少女なのだから!」

「間違ってはないけど、そう自信満々に言われるとイメージ崩れるな…」

出会って間もないけど

「で、君はなんて名前なんだい?」

「あー、俺は鈴木 歩だ。まぁよろしくな」

「歩くんか、よろしくね。」

キーンコーンカーンコーン…

「!もうこんな時間か…」

「じゃあまたどこかでね、歩くん」

 そう言って彼女はこの場を去った。

でも不思議だな、あんな人この学園で見た事ないぞ。あんなに美人なら学内でも有名になると思うんだが…

「……」

今日は不思議が多いな。




──────


「そっち行ったぞ!」

「捕まえろ!」

ガサガサガサッ

「はっ…はっ……!!」

「逃がすな!追え!」

クソッ!!こんなところで…ッ!!

早く、早く奴等を見つけなければ…ッ!!


──────




 放課後、下校路にて。

「……てことがあってさ、なんか今日は引っかかる事が多い日だなぁって」

「大丈夫大丈夫明日には忘れてるって!」

「いやお前じゃないんだからそんなすぐには忘れないと思うけど」

「あれ今ナチュラルにディスられた?」

「あーあ…クラス聞いときゃよかった」

「せっかく美少女とラブコメ的展開で出会ったのに、可哀想な歩…俺が慰めてやろうか?」

「どうやって」

「そりゃあもちろん純愛のキッスで」

「おえぇええええ」

「言っちゃなんだが俺も吐きそう」


「うぉぉおおおお!!!」

「あ?」

 先程の山の方から野太い声達が響いてくる。

「なんか大会でもやってんのかな、見に行く?」

「……!!」

「歩?」

「…これ持っててくれ」

そう言って鈴木 歩は笹木 康太ささき こうたに無理やりかばんを託す。

「えっちょっ歩!?おい待てって!!おーいー!?」


!!


「先部屋行っててくれー!」

そうして鈴木歩は山の方へと走って行く。

「はぁ???」




 とりあえず黒いモヤの方へ走って来たはいいものの…

「これってけもの道じゃね?なんかデカい生き物が通ったみたいな感じするし…」

「そこのお前!」

「ひッッ」

 見つかった!?

いや見つかったってなんだよ!!俺は普通に、好奇心に従っただけの一般通行登山者だし…!!

鳳凰英雄学園ほうおうえいゆうがくえんの一般科生徒だろ?今ここは危ないからさっさと寮に戻りなさい!!」

「いや俺、あるもの?を探してて…」

「私は英雄科一年A組担任、小原 人おばら じんだ。先程この山で魔獣の発見情報があり英雄科のほぼ全人員を持って捜索中なのだ。」

「いやだから探し…」

「だが安心したまえ!邪悪なる魔獣は必ずや我々の力で討伐してみせると誓おう…って!居ない!?」




「なんか変な人だったなぁ…」

 ていうか、そもそも、あの黒いモヤの原因ってなんだ?

まさか魔獣?その線は濃厚だな。でも俺魔力発現してねぇしなぁ…

…まぁ、人目見て「あぁ!これが原因ね納得~!」したら帰ればいいでしょ。

英雄科が対処してんならそう心配は要らないだろーし

ドスッ

「アダッ」

ドサッ…

 なんだ?今何にぶつかった?木なんて前に無かったはず…

「…ほぁ……」

「……」

で、



「出たァァァァァァァァァ!?」

魔獣!?えっマジで嘘だろ魔獣じゃん!?

 俺は2mか3mくらいある、鱗のついた狐みたいな魔獣の腹にぶつかってしまった。

 母さん父さん今までありがとう産んでくれてサンキューそしてさようならありがとう俺の人生…

「…貴様」

「ひっ」

喋れんの!?

「貴様アリスを知っているか」

「…え?アリス…?」

「…知らぬならしょうがない」

魔獣は前足を上に挙げる。

「ひ、た、助け…」

!!

「黒いモヤ…」

 …テンパってて気づいてなかったけど、あの黒いモヤはこの魔獣の身体中から吹き出ていた。

 ……それと、

「近くで嗅ぐと血なまぐさい…鉄みたいな匂いだ」

「……」

「もしかしてその黒いモヤ、アンタの血なんじゃねぇの…?」

「…そうだとしても、貴様には関係あるまい」

「関係ねーし今から殺される身だけど…最後にこのモヤの正体を知れて、よかった…」

 後悔が無いわけでは断じてないが、とりあえず好奇心を満たすことはできたのだ。

「…魔獣とは気まぐれなものだ。行け、二度と我の視界に映るな」

「え、?」

まさか、逃がしてくれる…ってことか?

「……」

なんかこいつ、授業で習った魔獣と全然違う。

「…アンタ、英雄科に狙われてんだろ?」

「……」

「なぁアンタ、小さくなれるか?」

「……?」

「俺、アンタが悪い魔獣だとは思えねぇんだ。だから助けたい。」

「…訳の分からんことを」

「小さくなれるのか?」

「……なれんことは無いが、少々姿が変わってしまう」

「そいつは好都合だ。頼む、小さくなって俺と逃げてくれ」

「…貴様、名は何と言う」

「俺は鈴木 歩だ。知恵も魔力も力もない普通の学生。」

「そうか」

「!!」

魔獣が小さくなっていく。

「我が名はアタシン、七つの魔人と呼ばれた者達の最後の生き残りである。」

「…今なんて?」

「だから、我が名はアタシン。七つの魔人最後の生き残りだ。」

……


「ぇぇえええ!?」

「うるさいぞ貴様!」

「だってあの教科書に載ってる七つの魔人だろ!?いやでもお前魔獣じゃん!!どゆこと!?そもそも魔人は全員倒されたんじゃ…!!」

「ウザい」

「ウザい!?」

「我小さくなるのに疲れてこのキャラと威厳保つのもうムリなんだけど」

「キャラ作ってたのかよ!!」

「ほら我を助けるんだろう?急がないと我ごと殺されるぞ~」

「ひっ」

に、


「逃げるは恥だが役に立つ!!」







「…どうにか誰にも会わずに山降りれたな」

「お前影薄そうだもんな」

「ひでえなお前、仮にも恩人じゃねぇのか俺」

「あのままだったら残った力でこの街とその周辺まで焼き払っていたからな、むしろ我が貴様の恩人だ」

「いや怖、お前そんなこと考えてたの?」


「弱ったものだねアタシン、昔なら国ひとつ滅ぼしていた君が今や街ひとつとオマケ程度しか滅ぼせないとは」


「なっ…!!」

「やぁ歩くん、お昼ぶりだね」

「文司…さん?」

「マユでいいよ」

「アリス!」

アタシンは文司 満有に飛び移る。

「アリス!?え文司さんがアリス!?」

「アタシン~久々に会えたと思ったらなんだいその可愛らしい格好はぁ~♡」

モフモフモフモフモフ

「くすぐったいぞアリス~!」

さっきからアタシンのイメージがだいぶ崩れている。雪崩かってくらい超スピードで崩れてる。怖いくらいに。

「ところで、アタシンはなぜ歩くんと一緒にいたんだい?彼は魔人ではないはずだが」

「コイツが我を連れて逃げるなどと面白い戯言を抜かしたからだ。」

「あ~、確かにそれは面白い…げふんけふん、熱烈なプロポーズだねぇ」

「は!?いや俺は別に…」

「それと、マユでいいって言ってるじゃないか、ぜひ私の事はマユと呼んでくれ。あとさん付けも痒いからやめてくれ。」

「…マユとアタシンはどういう関係なんだ?」

「…ここじゃあなんだから私行きつけのカフェに行こう。そこで話すよ。それと…」

アリスがアタシンに手をかざす。

「傷は治しておいたから、これでこれ以上尾行もされないだろう。」

「?これ以上?」

その瞬間、後ろから10人ほどの英雄科生徒が現れる。

「おいおい嘘だろ…!?」

「気がついてなかったのか」

「気がついてんなら言えよ!?」

「あんな大口叩いたんだからそれなりに何かあるものかと…」

「だから!知恵も魔力も力もねーんだって俺は!あるのは好奇心と行動力だけだ!!」

「あっはは、面白いね君たち(笑)」

「笑い事じゃないって!やべーじゃんこれ…」

英雄科の一人が前へ出てくる。

「貴様ら、魔獣を使役するのは違法だぞ!!」

「許可証がなければでしょ?私持ってるよ、許可証」

「なっ!?」

「この子が暴れた訳でもあるまいし、魔獣だからと言って取って食おうとするなんて…君たち英雄は愚かで野蛮だね」

「なっ…ええ英雄科を侮辱するな普通科風情が!!」

「英雄科は知力、魔力、力全てに恵まれた者たちの言わば宝石箱だ!!その中の宝石である我々を侮辱するなど、万死に値する!!」

「ま、まぁそんなカッカしないで…冷静に話し合いましょう?ね?」

「……ッッ!!」

あっこれダメそう

「我々英雄科を侮辱した事、一生後悔させてやる!!」

「!?」

まずい!英雄科の奴ら、魔力火炎砲撃とうとしてやがる…!!

「マユ逃げっ」

えっ


「私は怠惰。世の全て、そしてその使命を怠けその罰を受けし者。

その怠惰の魔人である私が命じる、彼らの記憶と時を過去に、無垢で怠惰なる時間に巻き戻したまえ。」


すると辺りが光り出す。



パチクリ、

 光が消え辺りを見渡す。

「は…!?」

「ばぶぅあ」

「うぃぁ」

「うきゃぁぴゃはは」

「コイツら、幼児退行…してる?」

「彼らの精神の時間を、一時的にだが赤ん坊の頃に戻したのさ」

「す、すげぇけど…時間を戻すったってそんな高度な魔法…英雄科でもできる奴いねぇんじゃ……」

「ほらいくぞ歩、我を運ぶのは貴様の役割だ」

「私体力ないから歩くんが運んでね」

「な、なんだお前ら…」

今日は不思議が多すぎる…




《続く》

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