努力の天才、クラス転移で追放されるも根性だけで成り上がる
陽田 日向
第1話 異世界召喚
<これより異世界転生を実行します。>
無機質な声で頭の中にそう響いた。直後、俺達はクラス全員異世界転生していた。
──数時間前──
「では、これよりバスに乗って空港に向かいます!」
俺達のクラスを受け持っている担任がそう言うと皆がワイワイと騒ぎながらバスに乗り込む。
俺も内心楽しみではあったが何故か嫌な予感がして少し体調が悪くなりあまり皆と騒ぐ事は出来なかった。
「努?大丈夫?」
俺の名前を呼び体調が悪そうなのを心配してくれるこの娘は倉本柚奈。俺の幼馴染だ。
「大丈夫、大丈夫」
俺はそう軽く返す。
「なら良いんだけど、、、、」
何か言いたげな様子だったが俺は先にバスに乗り込んだ。
バスに乗り込んだ後でもクラスの皆は騒いでいた。
頭も痛いせいか少し眠たくなってきた俺はそっと目を閉じた。
それから数時間経った頃だろうか。いきなりバス内に大きな衝撃が伝わる。それと同時にバスが崖から転落してしまった様だ。
「「「ウ”ワァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”」」」
皆の断末魔と共に一気に視界が真っ白になった。──
そして今、バスの転落事故で死にかけていた俺達は異世界に召喚された。周りには俺達を召喚したであろう魔術師らしき男達が数名と無駄に豪華で背もたれのデカイ王座に座っているいかにも我儘そうな王がいた。
「よくやったお前達!”勇者召喚”は成功したぞ!」
王がそう言うと魔術師達も大喜びしていた。
そんな中、俺達はバスの転落の最中だったので、骨が折れていたり、酷いやつは折れた骨が皮膚を貫通していた。痛みでそれどころではなく状況を把握出来ている者は誰一人としていなかった。
それに気付いた魔術師達は
「「「傷つきし彼の者達に癒しを与えよ!ヒール!」」」
そう唱えるみるみる俺達の怪我は治っていった。
クラス全員がその状況に困惑していると、王の横に立っていた聖女の様な格好をした人が俺達にこの世界について説明してくれた。
その1、この世界には魔力という力がありその力を使うことで先程の様な魔術を使えるということ。
その2、この世界には魔王が存在しており、召喚された俺達に魔王を倒す勇者になってもらうとのこと。
その3、この世界に召喚された異世界人は召喚される際に魔王にも対抗出来うる強力なスキルが貰えるということ。
俺はよくラノベで異世界転生系を読んでいたので大体の内容は理解することが出来たが、他のクラスメイト達は理解出来ているやつもいれば理解が追いついていないやつもいた。
「皆さん突然の事で驚いているかも知れませんが1度”ステータス”と唱えてみて下さい」
聖女がそう言うとクラスメイト達は各々のタイミングで『ステータス!』『ステータス!』と唱え始めた。俺も続いて
「ステータス!」
そう唱えるが聖女の説明にあったスキル欄に何も表示されていなかった。クラスのやつらは
「俺のスキルは”神速”だったぜ!」
「い〜な〜、俺なんて”身体強化”だぜ?」
などと、さっきの事がまるで無かったように各々のスキルについて確認し合っていた。
そんな中、聖女が俺のステータスを見てそれを王にコッソリ報告していた。
「ゴホン、諸君にはこれからこの世界で英雄となり魔王に悩める民達を救って欲しい!」
王がそう言うと、クラスの男子達が一斉に
「「ウォーー!」」
と雄叫びを上げ早くも異世界を救う流れになっていた。そこに王が続けて
「しかし、諸君らの中に魔王討伐において不必要な存在が居る」
『誰だ誰だ』と皆がザワつくなか王は勢い良く俺を指差し、
「この者がスキルを所持していない無能である!無能が居ると勇者が魔王討伐をする際の士気が下がる!よってこの者を追放処分とする!」
おいおい、勝手に召喚したのにそりゃ無いぜと思いつつも、確かに俺はスキル欄に何も書いて無かったので、恐らく俺にスキルは無いんだろうとは思っていたがクラスメイトが王から俺を庇ってくれるだろうと内心高を括っていたが、予想とは裏腹にクラスメイトの俺を見る目は冷たかった。
「お、おいおい冗談だろ?」
俺が苦し紛れにそう言うと
「今から俺達は魔王討伐っていう命を懸けた仕事をする訳で、そんななかお前みたいな足手まといが居ると俺らの危険が増えるんだよ!」
仲が良いと俺が勝手に思っていたクラスメイトからそんな事を言われ俺はとてつもなくショックを受けた。そんな中、
「努を足手まといなんて言うのはやめて!追放なんてもっとありえない!」
俺を追放しようとしていた王とクラスメイト達を前に俺を庇ってくれたのは、バスに乗る前も心配してくれた倉本だった。しかし、庇ってくれた倉本を王の側近の兵士が抑えつけ、俺は別の兵士に掴まれながら街の外へ連れて行かれた。俺はこんな王やクラスメイトが居る街の近から早く離れたかった為無我夢中で走った。疲れも忘れて走り続けた。あれから何時間走り続けただろう。もう脚が動かず産まれたての子鹿の様にガクガクと震え上がり、その場で仰向けになって倒れた。頭だけ動かし辺りを見回すとそこは何も無い草原で召喚された城のある街はもうすっかり見えなくなっていた。
「畜生、、、、、、」
暗くなり始めた空を見上げながらそう呟くと、俺は少し泣いてしまった。俺には本当にスキルが無いのかと何度も
「ステータス!ステータス!」
とステータスを開いたり閉じたりし、スキル欄を長い間見つめ続けた。しかし、スキルが表示される事はなかった。俺は深く絶望した。ふとステータスのスキル欄以外が気になったので見てみると
[スピード↑5]と表示されていた。他の基礎ステータスの体力、パワー、スピード、防御、魔力、幸運、は全て10のままだった。俺は何故スピードだけステータスが上昇したのか考えた。
「あ、、、、ここまで全力で走って来たからだ、、、、」
そうだ。考えられる原因はそれしかない。
「ハハハハ!」
俺は思わず笑いが込み上げてきた。
「努力次第でまだアイツらを見返せるチャンスが来るかもしれないな」
そう口にすると心にとても余裕が出来た。
俺は努力すると思い立った瞬間に後のステータスアップメニューを考え、脚を奮い立たせ早速トレーニングを開始した。俺の下剋上の物語はこうして幕を開けた。
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