一歩間違えばという発想は大きな間違いだと思ういじめ問題

星咲 紗和(ほしざき さわ)

第1話 いじめは「一歩間違えば犯罪」ではなく、すでに犯罪である

「一歩間違えば犯罪になる」という表現を、いじめ問題において耳にすることがあります。しかし、この言葉には違和感を覚えずにはいられません。いじめとは、そもそも「一歩手前」などではなく、すでに犯罪行為そのものです。他人の尊厳を傷つけ、精神的・肉体的苦痛を与える行為が許されるはずはありません。それを「子どもだから」「若気の至りだから」と見逃す社会の姿勢こそ、大きな問題です。


例えば、暴力を振るえば傷害罪、物を壊せば器物損壊罪、無視や悪口を続ければ侮辱罪や名誉毀損罪に該当する可能性があります。大人であれば即座に法律で裁かれるような行為が、子どもだからという理由で「いじめ」と表現され、軽く扱われる。この認識の甘さが、被害者の心をさらに傷つけ、加害者の行動を助長しているのではないでしょうか。


いじめが発覚した際、しばしば加害者側が「そんなつもりはなかった」「冗談だった」と言い訳をします。しかし、被害者が感じる痛みや恐怖は、加害者の意図とは無関係です。「つもりがなかった」では済まされないのです。こうした言葉がまかり通る社会では、被害者の心が置き去りにされ、真の解決には至りません。


さらに、「いじめはどこにでもある」といった言葉も問題です。これでは、いじめを容認するかのような空気を作り出し、被害者を孤立させます。いじめが「普通のこと」だと認識される社会で育つ子どもたちは、人権や尊厳の大切さを学ぶ機会を失い、問題が繰り返されていく悪循環に陥るのです。


いじめは犯罪行為であり、厳しく対応すべき問題です。その認識を社会全体で共有することが必要です。被害者を守るためには、まずいじめが何であるかを正確に捉え、その本質を見誤らないことが重要です。次回は、被害者と加害者の間にある不平等について考察していきます。

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