『天使様』と呼ばれてるTS転生少女と変態『氷姫』
アイズカノン
第1話 『天使様』と呼ばれてる少女
このクラスには天使様がいる。
「天使様。おはようございます」
「天使ちゃん。おはよう」
「あぁ、天使様だ……」
「そうだな。今日も可愛いな」
そんなたわいもない日常が流れている。
学園ラブコメじゃよくある話。
クラスに一際目立つ、栗色の明るいブロンドのセミロングヘアに、水晶のように蒼い瞳を持つ少女。
衣装は普通のよくあるブレザータイプの高校学生服に黒いタイツを履いている。
「いい匂いしてたな」
「あぁ、良いところのお嬢様だって噂を聞いたことあるぞ」
「それほんとか」
「あぁ」
当事者以外は呑気なもので、あることないこといろいろと噂を立てる。
それもネット掲示板のスレの如く……。
そう……、当事者以外は……。
(皆んな、自分のことじゃないからっていろいろ言い過ぎ……)
何を隠そう……、その当事者が僕なのだから……。
「
「おはよう。今日も教室を綺麗にしてくれありがとうね」
「いえ、そんなこと。ただ私は当たり前のことをやっただけで……」
「当たり前を当たり前にできるって凄いことなのよ。だから、ありがとう」
「はい。こちらこそ、ありがとうございます」
教室の席についた僕に声をかけた少女は、毎朝教室を綺麗に掃除してくれる良い子。
たまたま朝早く来てしまった時に彼女と一緒に、楽しく談笑しながら掃除したこともあったので、それから毎日挨拶されることになった。
「あぁやっていつも労いの言葉を言う彼女は『天使様』」
「俺も毎日掃除したら『天使様』にああ言って貰えるかな」
「お前じゃ無理だ。諦めろ」
「そんなぁ……」
やめろ。
僕を『天使様』などという、学園ものでよくあるような呼び方するのやめろ。
〈ガシャ〉
「それじゃぁ、皆んな席につけ〜。あぁ、そうだ高咲。今日も学校にお前に助けれたってお礼の電話が来たぞ」
「「「おぉーー!!」」」
やめろ。
僕はただそうした方が良いからしただけだ。
「そう……ですか。ごめんなさい。私はただ困った時はお互い様という当たり前のことしただけで……」
「おぉ〜」
「やはり天使」
「さっきの伏線とは……。そこにシビれる憧れる」
「天使様、素敵」
「きっと前世でも良い得積んだだろうな〜」
「かもなぁ〜」
やめたまえ。
本当にやめたまえ。
僕の前世はそんなに清くない。
むしろ邪悪。
だって……僕の前世は、どうしようもないダメな男だったのだから……。
=====================
それはある日のこと。
まだ男だった僕は、いつものように仕事終わり、そして帰っていた頃。
(今日も疲れたなぁ……)
日頃の仕事の疲れを癒すために、ラブコメ小説原作やオリジナルのラブコメ漫画を電車で読みながら帰っていた。
(今日もヒロインは可愛いなぁ〜)
傍から見たら気持ち悪いであろう笑みをマスクの下で隠しながら、いつものように読んでいた。
〈ガシャン〉
「えっ……?」
唐突な揺れとともに、僕の意識はシャットダウンした。
@@@@@
次に意識が目覚めたのは、柵の付いたベッドの中だった。
(あれ……、ここは?)
覚醒した意識の中でどうにか起き上がろうと、手足を動かすが、中に浮いたままだった。
「あぅ……あぅ……」
可愛いらしい赤ちゃんと思われる声が、どこからともなく聞こえた。
「あっ!。お母さん。ユイが起きたよ。」
どこからともなく若い声が聞こえた。
よくよく見ると、柵の上から覗き込む大変若い少年がどうやら声の主のようで、じっと僕を見つめていた……。
…………ん?。
『見つめていた』?。
「あら、ユイ。おはよう」
一見、少女にも見える美人の女性が、これまた柵の上から見つめていた。
それと同時に、僕の中である仮説が組み上がっていった。
「お母さん。ユイ凄いよ。俺の顔を見て、反応してたもん」
「そうなの!。きっとユイもあなたのこと『お兄ちゃん』だってわかったのよ」
ンンン!?。
『お兄ちゃん』!?。
そんな……、僕にはお兄ちゃんなんかいなかったはず……。
えっ……?。
「わぁ、ごめんなさい。ユイ。大丈夫よ」
おそらく……、母親と思われる女性が柵の中に手を入れて僕の身体を抱き抱えた。
この時の身体の感触から、おそらくこの時の僕の身体は推定赤ちゃん。
「さぁ、よしよし」
母親に抱き抱えられた僕が、優しくあやされている間に見た鏡に写る自分の姿は……。
案の定、可愛らしい赤ちゃんだった。
覚醒から数年後。
四足歩行から二足歩行に成長し、身体も成長した。
そして成長してわかったことは、僕は女の子として新たに生を受けたことだった。
(あっ……)
部屋に立てかけてある鏡を見た僕は思わず生きを呑んだ。
それは僕が
(僕はこの子、この『天使』に報いるような人生を歩まなきゃ……)
もうその時には方針は決まっていただと思う。
だからできる限り努力した。
頑張ってきた。
=====================
そしてさらに数年後。
その努力は『天使様』という形で昇華された。
やった。
やり過ぎてしまった。
「ありがとうございます。天使様」
「良いよ。困ったらお互い様。ね」
「本当にありがとうございます」
私は昇降口で手伝いをした女学生を見送ったあと、上履きをローファーに履き替えていた。
ポツ……ポツ……と外では静かに雨が降っている。
(折りたたみ傘持ってきといて良かった)
僕はカバンから傘を取り出した。
今日は雨が降るって予報だったから、折りたたみじゃない方持ってきてたのだが……。
それも困ってる人に渡してしまった。
(さて、帰るか)
僕は少し重い足取りで学校から帰っていった。
しばらくした帰路の途中。
僕は公園に立ち寄った。
何故かは分からない。
でもきっとそうなのだろう……。
(あっ……)
公園の広場の近くに雨宿りできる場所がある。
木製のテーブルとベンチ、それから草花で覆われた屋根のたまによくある休憩場所。
(
僕はそんな休憩場所で雨宿りしている少女とであった。
黒髪のミディアムショートヘアに桜色の瞳。
僕と同じ制服を着た1人の少女。
【
僕の『天使様』と同じく、『氷姫』と皆に呼ばれている少女。
【
この出会いが運命だったかどうかは分からない。
でも、今となってはこれも運命だったと思うようになっていた。
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