祈り ~この想い届きますように~【短編集】
音無 雪
祈り ~先輩の努力~
まだ暗い道を走ってきた。
自慢のロードバイク
今回は私史上最長のロングツーリング
もうすぐ もうすぐ ゴールが見える。
――――
私の足で来たかったんだ。
電車でもバスでもなくて自分の力でここまで来たよ。
伊勢神宮
いちばん偉い神様がいるんだよね。
朝早いからまだ静か まばらに参拝客がいるだけ
調べてきたんだから 正式なお参りの仕方
鳥居をくぐる前に一礼して
橋を渡ると空気が変わる。ここは特別な場所なんだ。
しばらく進むと右に川が流れてる。さっき橋で渡った川
神様の前に立つ前に手を清めておく場所だって
本当は手だけじゃなくて全身を清めるのが良いと思うんだけど無理 無理 無理
手を入れただけで凍えるくらいに冷たいよ。
でもせめて脚くらいは清めておこう。みんなは手だけだから神様に良い所見せるんだ。
ああああ 冷たい 涙がでちゃう
我慢だ 先輩の為なんだ 頑張れ私
――――
砂利を踏みながら いちばん奥の社殿
ようやく会えましたね。偉い神様
お願いに来ました。
お賽銭は500円玉 奮発したよ。
正式なお参りは 二礼二拍手一礼 うん 完璧
神様 聞こえてるかな。
先輩がね。もうすぐ試験を受けるの
大事な先輩なんだよ。
別に彼氏ってわけじゃないよ。まだね。
一生懸命に勉強してるんだ。いつも参考書持っていっぱい線が引いてあるの
偉い神様なら先輩の事見てくれていたよね。
お願いだから合格させてください。
学業専門の神様もいるみたいだけど一番偉い神様にお願いに来ました。
先輩の努力とは比べられないけど、私も頑張って自分の力でここまで来ました。
私の努力も込みでお願い叶えてくれませんか。
よろしくお願いします。
時間をかけてお願いしたから聞いてもらえるよね。きっと
――――
お守りを買いたいけどここは我慢
私がここに来たのがバレちゃうよ。
陰ながら先輩を応援するのが良い女だからね。
すぐに先輩に教えちゃうお母さんにも口止めしたから完璧でしょ
うん なんだか達成感
きっと先輩の試験も上手くいく気がする。
さあ 帰るまでが遠足です。
もう一走り がんばれ私
がんばれ先輩
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます