クリスマス・ラプソディーSeason3
羽弦トリス
第1話くじ引き
ここは日本から遠く離れたサンタクロースの国。
舞台はここから始まる。
いつもこの季節になると、大手のサンタクロースは自然と仕事が舞い降りるが、個人のサンタクロースは、サンタクロース組合に所属して、12月の初めに配る国と地域のくじ引きがある。
場所によって楽で賃金の高いや忙しい割りには低い所もある。
サンタクロースJー033番は、トナカイの赤鼻とくじ引きの前の一服をしていた。
「なぁ、旦那。オレたちゃ、2年連続で日本の名古屋市だ。今回は楽な国にしてくれよ!」
と、煙を吐きながら赤鼻は言った。
「うるせぇ〜、オレも好き好んで名古屋市を選んだ訳じゃねぇよ」
Jー033は、缶コーヒーを飲みながらタバコの煙を吐く。
「えぇ〜、サンタクロースの皆さん、ただいまより、配る地域のくじ引きが始まります。列に並んで下さい」
と、サンタクロース組合の広報がエロい格好で拡声器を使って叫んでいた。
この広報のおっぱいはFカップらしい。
「じゃ、赤鼻、行ってくるわ」
「あぁ、今年は頼んだぜ旦那」
「おぅ、任せとけ!」
列に並んだサンタクロース達は、次々に番号札を受け取っていく。15分後、電光掲示板に担当国が映し出される。
【バチカン市国……Jー033】
Jー033サンタクロースは大喜びして、赤鼻のもとへ歩いた。
「旦那、今年は?」
「じゃーん、バチカン市国」
「やったな?旦那」
「あぁ、1日半でプレゼントを配られるな」
ゴホッ、ゴホッ
痩せ細ったサンタクロースが、うずくまっていた。
「どうした?Sー052さん」
「わ、わしゃどうすりゃ良いんじゃろ?」
「何の事だい?」
「わしゃ、こんな遠く量の多い国を引き当ててしもたわい。ゴホッゴホッ」
「大丈夫ですか?」
と、赤鼻も心配した。
Sー052は、血が混じった痰を吐いた。
その様子を見ていたJー033は、
「じいさん、代わってやるよ!元気だしな。後これ、スペシャルドリンク。10年若返るそうだから、これ飲んで」
「あ、ありがとう。Jー033さん」
2人は行き先のくじを交換して、Sー052はトナカイに引かれて去って行った。
「旦那、優しいなぁ。そう言う所がオレは好きなんだ。で、どこの国だい?」
「……」
「そんな、顔すんなよ。で、どうせ近場だろ?」
「……日本」
「……えっ?」
「日本の名古屋市」
「この疫病神!何で3年連続で日本何だ!しかも名古屋市」
「まぁ、東京よりマシじゃねぇか?」
「旦那、東京、大阪はサンタクロースが5人も担当ついてんだ、名古屋市だけだよ!1人は」
「また、宅配便を使うか?」
「その方が良いよ」
「今回ばかりは、わしも疲れた。業者に頼んで贈ってもらう。病院は、雇った日本人サンタクロースに配ってもらおう」
「で、旦那は何の為に日本に行くの?」
「チッチッチッ、甘い!業者の接待を受けるんだよ」
「接待?」
「うまいもん、飲んだり食ったりよ!」
「それは良い」
すると、Fカップのサンタクロース組合の広報が近付いてきた。
「あのぅ、Jー033さんですよね?」
「あぁ〜、そうだよ」
「お話しが……」
Jー033は事務所に向かった。
「これはこれは、Jー033さん」
「あ、X神父さん」
「実は、頼みたい事が一つや二つありましてね」
「何でしょうか?」
Jー033は紅茶を飲みながらバームクーヘンを口に運んだ。
「あなたに、日本のクリスマスの盛り上がり度を探ってもらいたいのです。もちろん、クリスマスシーズンは心躍る者もいますが、クリスマスどころではない子供達が大勢います。それを調査して下さい。後、子供達にサンタクロースの存在を教えて下さい。今はサンタクロースは架空の人物として、幼い子供も理解しているようで」
X神父は、悲しそうな顔付きだった。
「お任せ下さい。X神父様」
「ホントですか?良かった。成功報酬はまた、ボーナスで付けますから。金額は、出来高で」
「分かりました」
赤鼻はウォッカを呷っていた。Jー033を見付けると、
「どうでした?旦那」
「赤鼻、今年は出来るだけソリを走らすぞ!若いヤツラに言っておけ。それ、オレにも」
サンタクロースは、ウォッカを呷ると、赤鼻と若いヤツラが引くソリに乗って、自社工場に向かった。
これから、日本のサンタクロースプレゼントを配るべき子供達と、住所の確認をしなければならない。
リストが出来上がるのは、3日後でありプレゼントを用意するのに5日間は必要だった。
それを、貨物飛行機で運び業者と自分らで配る手配をするのだ。
今年の売り上げは例年以上だろう。そして、ボーナスも入る。
サンタクロースは、クリスマスの日だけで、1年分の生活費を稼がなくてはならないのだ。
さて、今年のクリスマスはどんな奇跡が起きるのやら。
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