天冥聖戦〜世界神族の始まり(中巻)

くらまゆうき

シーズン1 世界の始まりと出雲神族

第1話 混沌の中で

 光と闇が産まれた。そして膨張を繰り返し、やがて生命という概念が芽生えた。光と闇との間に産まれた子どもは、天之御中主神アメノミナカヌシ盤古ばんこ、ラー、ガイア、ユミル、そしてアヌの六柱である。

 彼らは、光と闇に包まれる世界を疑問に思い、なぜ自分たちが産まれてきたのか、日夜議論を続け、やがて結論へと辿り着いた。


「新たな生命を産み出し、世界を広げるべきなのでしょう」


 こうして世界は始まった。全てを始めた六柱は、光が消え闇に包まれていく様を見て世界を広げるべきだと感じたのだ。

 光は消えるが、新たに光が産まれて、また消えていく。これを生と死という概念とした。やがて、自らも死が訪れる。ならば、次の生命を産み出す必要がある。

 そして、世界は生命の数だけ広がっていくべきだ。住む世界も、明かりを照らす力も必要である。


「子どもや孫たちが暮らせる世界を創りましょう。 まずは、小さな箱に入れて見守るのが良いでしょう」

「ならば、箱を照らす力が必要である」


 試行錯誤を繰り返し、球体の箱を創り上げてみた。失敗して、気体の塊となり時には爆発して新たな「破壊」という概念を産み出してしまった。

 球体の箱の一つを明かり役として、膨大な力を注ぎ込み、最初に創り上げた完成品を「太陽」と名付けた。やがて完成品を増やしていき、最後に創り上げた最高傑作を「地球」と名付け、子どもたちを住まわそうと決めた。


「なんと美しいのか。 そうだ我が子たちが暮らすには、様々な試練を与えなくては強く育ちませんわね」

「では、自然という概念を与え、自ら開拓していくのはどうだろうか?」


 六柱は、我が子を甘やかすことなく「試練」という概念と共に自然を産み出した。塩の水、緑の葉、固い物体などを創り出して、自らの最高傑作の中へ入れていった。

 世界という概念を創り上げた六柱は、いよいよ我が子を地球へ生み出そうかとなった時、新たな概念を産み出してしまった。


「では地球へ降りて、我が子を育てましょうか」

「何を言うか。 我が子は自力で育っていくのだ」

「馬鹿なことを言うものではありませんわ。 我が子の未来を見るべきでしょう」


 六柱は、初めて意見が合わずに口論となった。ここで産まれた概念が、「争い」と「愛」である。

 我が子を見てみたいガイアは、地球へ降り立とうした。だが、残りの五柱は反対している。そして仲裁に入ったラーとユミルは「平和」という概念を産み出して、ガイアと共に地球へ降り立った。

 アメノミナカヌシと盤古ばんこは、彼らと別れ、神去かむさりとなりて壮大な光と闇の力の一部へとなった。


「ここが地球ですか。 さすが我々が創り上げた世界ですわね」


 大陸に降り立ったガイアは、自分たちよりも先に地球に降り立った存在に眉をひそめた。

 ガイアのような女であり、ユミルのような男という概念を持つ二柱は仲睦まじく手を添え合って、長い棒を海へ突き刺している。

 やがて二柱は、海から棒を抜くとそれはほこであった。互いの顔を見合わせて、満足げに微笑む二柱は矛を空へ向けて振りかざすと、水滴が滴り、水滴は陸地となった。


「まあなんと素敵なことでしょうか」


 ガイアは、大陸が出来上がったことよりも、二柱を見て興奮している。なぜなら、我が子を産み出す時に感じた「愛」という概念を互いに持って、共通の目的を果たそうとしているからだ。

 この世界で初めて見る美しさに惹かれたガイアは、自らもあの若人わこうどのような日々を送りたいと感じた。


「そなたら名をなんと申すのか?」

「アメノミナカヌシに産み出されました伊邪那岐イザナギと申します」

わたくし伊邪那美イザナミと申します」

「なんと素敵な関係でしょうか。 私も素敵な相手を求めましたので、産み出すことにします」


 イザナギとイザナミは、互いの顔を見て嬉しそうに微笑んでいる。なんと素敵なことなのかと、胸踊るガイアは自らも「愛」を分かち合える相手を産み出した。

 屈強な肉体と共に産み出された男をウラノスと名付けたのだった。

 

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