真の恐怖
戦徒 常時
真の恐怖
いつものように家に帰りました。
冬と言うこともあって、夕日が玄関の奥まで差し込んでいました。
扉は勝手に閉まるのに任せて、靴を投げ出し、家の中に上がりました。
その日は疲れていたこともあって油断してしまったのでしょう。
異変にはすぐに気づきました。
扉がバタンと閉まる音が、いつまで経ってもしなかったのです。
私は思わず振り返りました。
そして見てしまったのです。その白く細い手を。
白い手は私の身の丈ほどありました。指は6本。
中指が2本あることを除けば、人間の手の骨格です。
しかし、一番重要なのは、骨しかなかったことでしょう。
その手は骨の手でありました。
メラニン色素が無いのではなく、カルシウム質の白さでありました。
まるで死神の手のようだと思いました。
私は自分の手足が震えるているのを感じました。
全身の血の気が引いていくのが分かります。
もうだめだ。助からないんだと思いました。
震えるばかりの私に向かって、白い手はゆったありと近づいてきます。
もう限界でした。
気づけば、私は白い手に齧りついていました。
茶渋まみれの黄色い歯で、バリバリと骨を噛み砕き、髄を啜ります。
白い手も驚き私を握りつぶそうとしてきます。
しかし、それは悪手というものです。
私は体というからだから蛇の頭を生やして、白い手の指を絡め取り、締め付け、砕き、牙を立てました。
もはや趨勢は決したのです。
全ての骨をしゃぶり尽くすのは時間の問題に過ぎませんでした。
全てを胃袋に収めた後、私はニンゲンの似姿に戻りました。
さて、私はこれからどうしたら良いのでしょうか。
お夕飯は、要らなくなってしまいましたね。
※この作品は、実際の悪夢のおすそわけです。
真の恐怖 戦徒 常時 @saint-joji
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