介護の予算と将来の不安
星咲 紗和(ほしざき さわ)
第1話 迫り来る介護と不安
両親が年老いてきたな、という実感が、ふとした瞬間に私を襲うことがある。玄関先で小さな段差につまずきかける母、少し重い物を持つとすぐに息を切らす父。若いころの両親は、私を当たり前のように支えてくれていた。その記憶があるからこそ、二人が衰えていく様子を目にするのは、少しばかり胸が痛む。
両親は今、年金に頼って暮らしている。時折、母は「お金がないのよ」とため息をつく。具体的にどれほど不足しているのか、その家計事情を私は知らない。知らないからこそ不安は深まる。もしも両親が、もっと手厚い介護を必要とする日が来たとしたら、その費用はどう工面できるのか。施設に預けるとなれば、初期費用や入居後の月々の支払いは高額になる場合もあると聞く。自宅で介護できれば、それに越したことはないかもしれないが、私自身が障害を抱え、一般就労が困難な立場だ。今は障害年金に頼り切りで、十分な蓄えなど到底ない。
将来を思うと、目の前にたくさんの問いが浮かぶ。経済的な基盤が弱い中で、介護という現実にどこまで立ち向かえるのか。どこまで両親を支えられるのか。そもそも、両親が老後を穏やかに過ごすには、どのような準備や制度の活用が必要なのか。これらは今すぐ答えが出るわけではない。だが、答えが出ないからといって目を背ければ、何も解決しない。むしろ、気づいた今から少しずつ、何が必要か、どんな選択肢があるかを探っていくべきなのかもしれない。
両親の手元資金と私自身の生活基盤、その二つが揺らいでいる現状は厳しい。身動きが取りにくい窮屈さがある。けれど、漠然とした恐怖に押しつぶされるより、今は「不安」という気持ちを正面から見つめたい。両親が介護を必要とする未来への道筋は、まだ白紙だ。だからこそ、これから少しずつ明らかにしていけばいいのだろう。「まだ何も決まっていない」ことは「可能性がある」ことと裏返しだと信じたい。ここが私の出発点なのだ。
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