第7話 スープ

 はあ。こうなることは分かってたじゃないか。だからやめとこうと思ったのに。でも勇気を出していったんだ。神様ももう少し優しくしてくれてもいいじゃないか。村の番人らしき人がこちらを見て言う。


「ロン!このバカが!不死身アンデッドなんか連れてくるな!」

「え!不死身アンデッドって何?」

「こいつは魔王の手下というか、しもべというか、道具だぞ!」

「何それ?でもこの人いい人だよ!」


 はいはい。どうせ僕は魔王の道具にもなりませんよ。ロンも俺を見離すんだろうな。これで振り出しか。あれ?なんか思ってた反応と違うぞ。


「何言ってんだ。不死身アンデッドに人格などない。生きる屍ってやつだ」

「だって今日たくさん遊んだもん。ね、ブルース」


 俺はそれを証明するために必要以上に頷いた。この子は何ていい子なんだ。親は神、あるいは仙人の類だろうな。


「ブルースだと?お前こいつと話したのか?」


 ロンは今日のかくかくしかじかを話した。


「それで帰る村がないから、連れてきたんだよ。本当にいい人だから大丈夫だって!襲ったりなんてできるわけない!あんまり自信なさそうだし!」


 うん。今ので聖騎士にグレードダウンだな。だが、番人が受け入れたところで、他の村人に受け入れられるには無理だろう。俺は悩んでいるとロンの口からすぐに答えが出た。


「僕の家にこっそり泊めるから!お願い!」


 番人はしょうがなく受け入れてくれた。


 しかしこいつの親はどういう反応をするのだろうか。俺は追い出されることを覚悟してロンについて行った。



 ロンの家は一人暮らし用の小さな古屋だった。中は綺麗と言えるようなところではなく使い古された家具や食器などがそこら中に散らばっていた。奥から出てきたのは老人でゆっくりとロンの方を向き、話しかけた。


「ロン、それは友達かい?」

「そう、ブルースだよ」


 俺が不死身アンデッドだということに気づいていないのだろうか?老人はこちらを向き軽く会釈をして笑っていた。


「僕生まれた時から両親はいなくて・・・ルド爺ちゃんが引き取ってくれたんだよ。」


 ロンは何処か遠くを見ていた。魔女の子だと思われ、村人から白い目で見られる。

その上両親も居ないなんて・・・まだ小さい子供なのに生まれた時からそうだったと思うと心が傷む。


「爺ちゃん!そういえばブルースは魔女の話知らないんだって!だから教えてあげてよ!」

「ほう、それは珍しいことだ」


 ルドはそう言いながら震えた手つきで俺とロンにスープをくれた。


「年寄りの話を聞くのは、退屈じゃろう。飲みなさい」


 スープの熱は身体中を伝っていく。


「それは伝説でもおとぎ話でもない。現実じゃ」


 ルドは震えた声で話を始めた。


 昔まだ街がなかった時代に一人の男は旅をしていた。だが男は一つだけ不可解な場所があることに気づいた。地図に載っていない村があるのだ。その村は隠れるように存在していて、見つけるのが困難だった。男はその村を探し回り、遂にたどり着いたのだ。


 たくさんの気に囲まれた小さな村。村人は青い目をしている。男は村の人々に歓迎され、祝福をされた。そこで行われた歓迎会は不思議なものだった。


 村の人は一丸となって一つの木を作り上げたのだった。あなたの木だよとその木に手を合わせていた。木は無論そんな刹那的に作れるものではないのだが、村の人々は一つの小さな芽に手を差し伸べ、念を込めると芽はたちまち成長したのだった。男はそれをと呼び、帰って人々に伝えた。



 スープは無くなっていた。俺はルドの巧みな話に心を奪われていた。本当にあったかはさておき不思議で面白い話だ。それからその魔女の村はどうなったのだろうか。

と思った束の間、村から叫び声と警鐘が聞こえた。


「山賊が来たぞ!」


 どうやら神は考える余裕も与えてくれないくらい俺をいじめたいらしいな。

俺たちは緊急事態を悟り、家から飛び出した。


 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る