第8話 おー神よ!
歯磨きを終わらせた神は、既に二階で寝ている嫁と子供を他所に、いつものようにピーナッツを食べながらテレビを点ける。
いつもの行動だが、しかし今日は違う。何たって神。悟りを開いた釈迦。生きながらに人道から仏道へと道を切り開いた称えられるべき私。ピーナッツを一掴みするのもいつもの行動のように見えて、つかんだ瞬間触れたピーナッツが光ったとか光らないとか。リモコンのボタンに触れると触れたボタンが光るとか光らないとか。私が触れたものは光るとか光らないとか。う~む実に惜しい。ここに嫁と子供が居たならば、その神々しさをまるで仏陀の教えを後世に伝えるお経の如く記憶、記述、読唱することは間違いなく、どれどれと二階にお越しに行こうか迷ったが止めた。悟りを開いた自分を見て見てとキャピキャピするようで恥ずかしい。何より悟りを開いた人間がわざわざ、悟りを開いたよどうだね思う存分見なさいな!なんて外の評価に興味を向けるほど野暮なことはない。これはあくまでも私の中にある、ある一つの扉を拓いただけのことである。とことん考え抜き答えを導きだしただけである。他者に認められるために悟りを開いたわけではない。答えは、神のみぞ知る、なのだ。
歯磨きをした後にピーナツを食べてしまったので再度歯磨きをする。
明日から私はどのように振る舞えば良いか、悟りを開いた者としての態度というか、やはり堂々としていたい。挨拶もこちらからせず相手から言ってもらいたい。ひれ伏してほしいというか、崇め奉って頂きたい。その為にどのような態度、姿勢が望ましいか、しばしば鏡の前で考え込んでいたが、上の階から嫁に、いつまで起きているのか、明日も早いのだから早く寝ろという言葉をかけられ、あ、はい、と素直に従い床についた。
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