御伽の学院 〜TSから始まる美少女だらけの学院生活!〜

猫そぼろ

第1話 ある日、突然、美少女に


「こ、これがオレだと……」


 雑多な品物が所狭しと並べられた室内。 壁際に並べられている棚にはよく分からない薬品が詰め込まれている。 中央付近にある簡易的なベッドの周りだけ比較的片付いており、この一角だけが普段から使用されているのだろうと推測出来る。


 一見して診療所にも見えるが剥き出しで並べられた怪しげな液体の入ったビーカーや使用用途の分からない機材などを見ると何かの研究室なのかも知れない。

 よく見れば診療所などによくある簡易的なベッドにはなぜか四肢を拘束するための拘束具が取り付けられている。


 そんな少し恐ろしい実験すらしてそうな室内で、八咫綱やたづなロウは入り口付近の壁に取り付けられている大きな鏡の前に立ち呆然と呟く。


 つい今朝方まで健全な男子高校生だったはずのロウは、今は白に近い銀色のロングヘアの美少女になっていた。

 女性だとか少女ではなく圧倒的な美少女である。


「どうだい? 完璧な美少女だろう?」


 そう言ってロウの映る鏡を覗き込む様にして1人の女性が恍惚とした表情を浮かべている。

 先程までは至って普通の男子高校生の制服姿──濃紺のブレザーに白シャツにネクタイ、グレーのズボンといった装いだったが鏡に映る現在のロウはネクタイを取り外し、血糊のベッタリとついた白シャツにズボンを脱いで無地のトランクスだけである。


 ロウに真津戸まつどアヤカと名乗ったその女性も十分に整った顔立ちをしているのだが美少女と化した八咫綱ロウの隣では若干霞んでしまう。


 少しだけピンクの毛束の混じった長い藍色の髪を無造作に1つに結えてヨレヨレの白衣の下には学生の頃に使っていたのか、3本ラインの入ったジャージを着ている。

 大きな丸い眼鏡の奥では大きな瞳が熱っぽく八咫綱ロウを見つめている。


「さぁ、一応身体検査をしておこう。 何の取り柄もない凡愚で汚らわしい男から神秘的で輝かしい美少女になったんだ、どこか不具合がないともいい切れない」


 そう言ってアヤカはロウを拘束具の取り付けられた簡易ベッドへと誘導する。


「男の扱い酷くない!? っていやいや、そもそもなんでオレ女の子になってんの!? えっ!? ちょ、ちょっと? なんで手を縛って……」


 疑問の尽きないロウをベッドへ寝かせるとテキパキと四肢を拘束していく。

 さっきまでは検査をすると真面目な顔を取り繕っていたが、もはや口元はニヤケにニヤケて涎まで垂れそうになっている。


「ぐへへ、大丈夫大丈夫。 痛くしないからぁ。 先っちょ、先っちょだけだからぁ」


「ちょっ!? ぐへへって笑う人初めて見た! いや、ってかやめて! ちょっと! 駄目! 太くないソレ!? いやぁーーーー!!」


 この後めちゃめちゃ採血した。


◾️



「ふむ、血液の方は検査に送るとして……あとは君の身体を隅々までしらべようじゃないか! スリーサイズも測らないといけないしな、ぐへへへ」


「ううっ…………な、なんでそんなオッサンみたいな笑い方を……ってかスリーサイズとか測らなくていいですってば!?」


 無理矢理に採血されたロウはまるで美少女が襲われた後の様にベッドの上で涙目で蹲っていると、真津戸アヤカは今度はスリーサイズを測ろうと手をワキワキと動かしてだらしの無い笑みを浮かべている。 下心があるのがミエミエである。


「何を言っている! 君は美少女を舐めているのか? キチンとサイズを測らなければピッタリな下着を選べないだろう! それとも何か? 君は美少女になった今現在も男の時と同じ様にこんな色気のないトランクスにノーブラのままで一日中過ごすつもりなのか? いや……それはそれでアリか?」


「いや、そんな事より早く男に戻して下さいよ! 女になるなんて聞いてないって!」


 真津戸アヤカの勢いに負ける事なくロウは自身の正当な権利を主張する。


「聞いていないだと? ああ、たしかに言っていない。 だが私は美少女にならない・・・・とも言っていない。 それに、よく思い出して欲しい。 私があの時君に何といったのか」


 言われてロウは少し思い出してみる。

 アヤカと出会ったのはそんなに昔の事じゃない。 というか今日だ。 今日の夕方、なんだったらまだ数時間と経っていないかもしれない。

 

 そう思い返せば、今日は朝からツイていなかった……


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