ー短編集ー

秋猫

夢をみる

夢を見続けている。






起きて…






昔、夢を叶えたかった。上手くいかなかったんだ。






好きな人がいなくなった。できれば起こしたかった。






ある日、おばあちゃんの病院に行ったんだ。




幸せそうにねむっていた。






ある日、親しい人の自殺を聞いた。




この人を起こしては行けないと思った。






《きっと沢山戦ったから休ませてあげようね。》







心も化学も、そんな事は出来なかった。







…できるならばずっと傍にいて欲しかった。







僕はね、薬を沢山飲んで眠っていた。





優しく溶けていく時間が心地が良かった。





昔のように貴方と一緒に居られるね。






光すらも閉ざされる。雪と一緒に溶けたい。







「さあ、起きる時間だよ!」






「君のように君を起こしたい人、ずっと傍にいて欲しい人がいるよ」


 

 




「起きて〜?」


 



君は?





「僕は〜君の夢の中の僕だよ!」






「意識していなくても夢に出てくることがあるでしょ、あれだよー!」





なるほど…







僕、…僕沢山頑張ったよね?夢の中に居たいな〜?





「そうだね!良く頑張っているね。ずっとずっとここに居たいよね。」






「……ごめんね。」






「君を起こしたいし、そばにいて欲しい。幸せになって欲しい。」





おばあちゃん達の面影が見えた気がした。






そうだね。僕もそう願ったことがあるよ。






だけど、言われたのは初めてかも。






僕は夢を見た。







ー夢は1つじゃないよー?

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