第49話 after meeting2
「!? そうなのね・・・それで、どんな話を?」
「イクシードが想像以上に異端者と深く関わっている事が分かったんだ。ハームフルだけじゃなく根本的に。そんでもって今あるイクシードという組織は表面的で何処もイクシードと深い関係じゃない。だから元を辿ろうとすれば想像以上に骨が折れると思う」
「・・・そうよね。私も薄々勘づいてたの。イクシードに送った諜報員達は大まかな組織図は手に入れられたとしても、大本までは辿り着けてないわ。そこに違和感があったのだけれど、やっぱり現状のイクシードは形だけだったのね」
「そういうこと。それでそんな組織が俺達を目の敵にしているのは別にサリー達がどうこうって理由じゃないみたいなんだ。むしろ異端者(俺達)が原因だって話だ」
「なるほど、そうね。イクシードの連中は異端者を集めている。噂では異端者を使った催し物をしてるとかって聞くから別に不思議じゃないわね」
「そうだな。それと・・・」
とラックは口が固まってしまった。
言いかけたところで躊躇う。
(アレク・ラグザス(俺)の事は話さなくていいか・・・俺の名前を知っている奴は今はデズしかいないんだ。なら変に話を広げてもややこしくなるだけだしな)
「ん?何かあった?」
「いや、何でもない。とりあえず聞き出せたのはこれだけだった。それ以外は時間も無かったから聞けなかったよ」
「ええ、十分よ。大体の情報はこっちでも集まってるから、とりあえずミッションであるオリーブの始末が出来ただけで完璧よ」
「そうだな。・・・それじゃあ俺は一旦これで。また何かあったら連絡くれ。それまでルーカーの所でのんびり稼ぐとするよ」
「そうね。それが現状一番ね」
「だな、そんじゃあドアを開けてくれ」
「はい」
そう言ってラックの右側のドアが開く。
ラックは車から降り、ふと何となくスマホの画面を覗き込む。
すると数分前に着信があったことが目に入った。
「ん、これってティーチからか?それもちょっと前だな。かけ直すか」
そう言ってその場でティーチにかけ直した。
滅多に電話は寄越さないはずのティーチから電話がかかってきたのは違和感があると感じ、急いで連絡を取る。
スマホを耳に当てて繋がるのを待つ。
二コールが鳴った後に電話が繋がった。
「もしもし?」
「俺だ、さっき連絡があったからかけ直した。何かあったか?」
「ラックか。ああ、そうなんだ。実はさっきボムのコンピュータに不正アクセスが検出したって言って動かなくなったんだ」
「何?」
「その後ウィールに見てもらっても分からず、どうしようかと思ってな」
「ん〜そうだな・・・とりあえず何も触らずそのままにしといてくれ。変に触って情報が取られると拙いからな」
「わかった。それじゃあ何も触らず待っておくよ」
「因みに何でそうなったかだけ聞いていいか?」
「確かボムが言うにはメールが届いていて、何かを確認しようとしたらそうなったと」
「メールか・・・」
(怪しいな。ま、いたずらだとは思うがこういうのはしっかり調査すべきだな)
「なるほどな。なら今後はメールとか一切あのコンピュータに来るはずないから触るなって言っといてくれ。後もちろん私用もな。自分のスマホがあるから、調べごととかもそれでやってくれ」
「了解」
「それじゃあ今日はウィールに送ってもらって帰ってくれ。次までにどうにかしとくよ」
「助かる。それじゃあ」
「ああ」
そう言って通話を切る。
ここで軽く一呼吸置く。
というのも決して機器類が強いわけじゃないラックは対処法が思いつかなかった。
しかし次回までにどうにかすると言ってしまった以上、何とかしないと・・・そんな考えを巡らせているとふと一人の顔を思い浮かべた。
「どうかしたのかしら?」
「あ~そうだな。こっちのコンピュータにウイルスが感染したみたいでどうしようかと」
「なるほどね。それは拙いわ。あのコンピュータにはドラッグの情報とか入ってるじゃない」
「ああ、そこで悪いけどジェシー、今から時間あるか?少し付き合ってほしいんだが」
「え!?」
「別に無理にとは言わない。また後日でもいい、空いている日が・・・」
「いえ、大丈夫です。この後は報告書を書くだけですので、それならいつでも出来ます」
食い気味に答えるジェシー。
それに少し驚いたが、それ以上に安心が大きかった為流した。
「そうか。ならサリー、ジェシーを借りるぞ」
「ええ、お好きにどうぞ。貴方のパートナーだものね」
サリーは何か含みがあるように強調していた答えた。
特に語尾の単語を分かりやすく。
「おう?ならジェシー、俺の車に乗ってくれ」
「はい、ではサリーさん、私は一旦こちらで失礼します」
「ええ、わかってるわ。いってらっしゃい」
ジェシーは軽く会釈をして車から降りる。
ラックは助手席に置いてあった血の付いたジャケットを取り出しサリーの乗っている車に乗せる。
「そうだ。悪いけどこのジャケットクリーニングしといてくれ。結構血が付いてグチャグチャなんだ」
「そうね。なら新品のを用意しておくから、また次回の時にでも取りに来なさい」
「オーケー」
「それじゃあ私達はこれで、また連絡入れるわ」
「ああ」
そう言ってドアが閉じて車が発進する。
静かな立体駐車場にエンジン音が鳴り響いて黒いミニバンは去っていった。
この場にラックとジェシーだけを取り残して。
そうしてジェシーの方を見ると黒いジャケットを来ているだけで、下はまだドレス姿であった。
車内では後ろから見ただけだったから、ドレス姿だとは気が付かなかった。
「なんだ、まだそれ来てたのか?動き難いだろ。着替えるか?」
「いえ、このままで大丈夫です。着替えに時間がかかりそうですから」
「そっか。それじゃあ乗ってくれ、直ぐに動くからな。ちゃんとシートベルトは・・・」
「着用ですよね。分かってますよ」
「・・・そうか」
クスクスと可笑しそうに微笑むジェシー。
それを見てラックは少し戸惑ってしまった。
何故だかわからないが、少しだけジェシーから目が離せなかったからだ。
とは言え、止まったのも一瞬で意識を取り戻し二人は車に乗車する。
しかしそれでも少し落ち着かないのか、何も言うこと無く車を発進する。
それにジェシーは驚いたが、何かを感じ取って口を開くことは無かった。
そうして暫くの間気まずい時間が流れながら、無言で車を走らせるのであった。
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