第9話「初めての達成感」



月末の夜。私は緊張した手つきで、母からもらった家計簿の最後のページに数字を書き込んでいた。


「えっと、バイト代が…食費が…」


一つ一つの項目を丁寧に確認する。レイカ先輩に教わった化粧品は確かに初期費用は上がったけれど、肌トラブルの対策費用が減った。フリマアプリの売上は、予想以上の金額になっている。


「あとは…」


スマートフォンの「目利き」アプリを開く。今月の支出分析が表示された。


```

月間レポート

収入:128,000円(バイト)

臨時収入:12,600円(フリマ販売)

支出:132,400円

特徴:

- 日用品の選択最適化:+3,200円削減

- 化粧品の見直し:長期的に+5,000円削減見込

- 衝動買い:先月比-65%

収支結果:+8,200円

```


「プラス…?」


思わず二度見してしまう。入学以来、初めての黒字だ。


母の家計簿に最後の数字を書き込む。ページの隅に、小さなメモも残した。


「今月の発見:

・安いものが、必ずしも得とは限らない

・続けられる範囲の節約が大切

・たまには贅沢も、計画的に」


この一ヶ月を振り返ると、確かに我慢もあった。でも、それは辛い制限ではなく、自分で選んだ判断だった。コンビニでの賢い選択、フリマでの販売、そして必要なものへの適切な投資。


「ね、ね、見て見て!」


LINEで母に家計簿の写真を送ると、すぐに返信が来た。


「すごいじゃない!でも無理のない範囲で頑張りなさいね♪」


温かい言葉に、思わずほっとする。


その時、アプリから新しい通知が届いた。


```

特別メッセージ:

初めての黒字達成、おめでとうございます。

あなたの成長ポイント:

・日々の小さな決断の積み重ね

・長期的な視点の獲得

・価値を見極める力の向上


次のステップ:

無理のない範囲で、貯金習慣を始めてみましょう

推奨:月収の10%から

```


ベッドに寝転がり、天井を見上げる。昨日までの私なら、この黒字分で新しい服でも買っていただろう。でも今は違う。


スマートフォンのメモ帳を開き、新しい目標を書き込んだ。


「来月の目標:

・貯金習慣スタート

・必要なものリストの作成

・自分へのご褒美は計画的に」


窓の外では、新しい月の夜空が静かに輝いていた。小さな一歩。でも、確かな変化。明日からは、また新しい挑戦が始まる。

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