私の「目利き」レッスン ―20代からはじめる賢い買い物―SNS時代の女子大生が見つけた、本当に価値のある選択
ソコニ
第1話「トレンドの罠」
「これ、すっごく良いらしいよ!」
スマートフォンの画面を覗き込んだユカリが、輝くような笑顔で言った。表示されていたのは、某有名コスメブランドの限定ファンデーション。大理石のようなマーブル模様が施された美しいケースが、画面の中で妖しく輝いている。
「確かに可愛い…」
私、山田美咲も思わず見入ってしまった。インスタグラムのストーリーズには、このファンデーションを使用した美しいメイク動画が次々と流れていく。
「これ使ってる人、みんな肌キレイに見えるよね」
「でしょ? 限定品だから、今買わないとなくなっちゃうかも」
ユカリは美容系インフルエンサーを目指している。フォロワーも着実に増えているらしく、最近は企業からサンプル商品が届くことも増えてきたと聞いた。
私は財布の中身を確認する。残り数千円と、まだ限度額に余裕のあるクレジットカード。今月のバイト代は既に入ったばかり。家賃と光熱費は引き落としが終わっている。
「じゃあ、私も買ってみようかな…」
その言葉に、ユカリが嬉しそうに携帯を操作した。
```
商品名:限定マーブルファンデーション
価格:6,800円
効果:SNS映え+15、カバー力-5
特性:限定品、トレンド
相性:写真撮影時
```
「あ、これネット限定だから、今ポチっちゃおう!」
ユカリの後押しもあって、スマートフォンで注文画面に進む。クレジットカード情報を入力し、送信ボタンを押した瞬間、何か引っかかるような違和感があった。でも、その時は気にしないことにした。
数日後、届いた商品を開封する私。確かにケースは美しい。でも、肌に塗ると思ったより薄づき。画面で見たような完璧な仕上がりにはならない。
「まあ、使い方のコツがあるのかも…」
そう言い聞かせながら、私は鏡の前で何度もファンデーションを重ねた。けれど、インスタで見たような美しい仕上がりにはならない。
その夜、帰宅後に見た通帳の残高に愕然とした。まだ月の半ばだというのに、残りわずか。スマートフォンには、新作コスメの広告が次々と表示される。気づけば「いいね」を押している自分がいた。
これは、私の消費者としての物語の始まり。あの時は知らなかった。この失敗が、私の人生を大きく変えるきっかけになるなんて。
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