やらなくて良かった、研修講師!

崔 梨遙(再)

1話完結:1200字

 僕が、大阪の求人広告屋(採用コンサルタント会社)に勤め始めてスグの頃の話。僕は3年のブランクもあったので、最初の新人研修の依頼が来たとき、講師は僕の上司が引き受けて、僕はアシスタントをやることになりました。相手は僕のお客さんの某企業の新人達。某企業の人事部長と人事課長が立ち会いました。


 その年は、申し込みをもらうのが遅かったので、遅い採用活動のスタートとなったので、既にどこかの会社に応募して不採用になった新人ばかり。人数は6人いましたので、遅いスタートの割には人数には満足してもらえましたが、“質”という面では微妙でした。採用というのは、“人数”と“質”、両方を問われるのです。この年は、応募して来た人間は全員採用したとのことでした。“質”という面では、某企業には我慢してもらうことになったようです。


 そして、新人研修。男女半々でしたが、男性3人の内1人、女性3人の内1人、この2トップが問題児でした。男性陣の問題児、A君は喜怒哀楽が激しく。1日で喜怒哀楽が何回も態度に出る人でした。女性陣の問題児、Bさんはやたら喋りまくり、必要以上に場を盛り上げようとする人でした。Bさんも、喜怒哀楽、というか喜と楽と哀が激しい人でした。Bさんの場合、怒の感情は見られませんでしたが。


 とにかく、2人ともよく喋ります。結果、残りの4人が引くという感じでした。その状態で、研修が進行していくんです。危なっかしい研修でした。何度か、無意味にA君が講師の上司に突っかかっていき、上司は堂々と受け止めてA君を研修に集中させるように誘導していきました。そしてBさんもよく喋って、笑ったり泣いたり。上司はBさんも堂々と受け止めて、慰め、励まし、たしなめて、研修を進行していきました。


 僕は、その2人がそうなったのは、育った環境によるものではないか? と思っていました。もし、そうなら、2人のことがかわいそうに思えます。


 実は、僕達は面接の時に同席していたので、僕は上司に、


「A君とBさん、ここで不採用になったら、ウチで採用してあげませんか?」


と言ったという経緯がありました。採用になりましたから、もうそんな心配はしませんでしたけど。2人は面接の時から目立っていたのです。



 某企業の人事部長、課長、僕の上司、僕の4人で食事に行きました。その時、人事部長が僕の上司に、


「研修、お願いしてよかったですわ-!」


と言いました。僕も、“僕が講師をやらなくて良かった-!”と思いました。僕には無理です。手に負えないです。研修って、相手(受講生)によってはスゴく難しいのだということを知りました。僕にとっては良い勉強でした。突っかかってくる相手に対する対応の仕方などを学ぶことが出来ました。必要なのは、経験値なんですね!



 僕の上司は偉大だなぁと思いました。







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