英雄はヒーローを好む

ふつうのひと

英雄の色

『いけ!負けないで!僕たちのヒーロー!』


 昔から、画面の中で流れるテーマソングが好きだった。


 負けても、何度でも立ち上がり、汗水垂らして世のため人のために何か大きいものと戦う姿が好きだった。


『ヒーローが悪の帝王にやられちゃった!?お願い! 立ち上がって! 僕たちのヒーロー!』


 正義のヒーローも、悪のヒーローも、皆好きだった。それぞれが誰かの為に何か大きなものと戦っているから。


 でも、そんなヒーローに群がるガキは嫌いだ。

 守るべきものを知ろうともせず、そのくせヒーローには「自分達を守るために戦え。絶対に負けるな」とほざくだけ。勝手に、ヒーローに理想を押し付けている。

 そんな奴らも許容するヒーローは好きじゃない。


 ヒーローは孤高の存在でいて欲しかった。


 人知れず暗躍するヒーローなんて、最高じゃないか。


 そんなヒーローを、俺は夢見ていた。


「俺も、嫌ってた奴の内の1人だったんだな」


 世界、この世の人間全員、なんでもいい。何か大きなものを守る為に戦うヒーローが好きだった。


 たった1人のどうしようもないクソガキを守る為だけに戦うヒーローは嫌いだ。


「俺なんか、守ってんじゃねぇよ....」


 俺たちのヒーローは、こんなクソガキを守って死んだ。


『戦え!どんな事があっても!皆を守るために!』


 それが出来たら、どんなに良かっただろうか。


 俺とこのヒーローの立場が逆だったら、少しは変わっただろうか。


 目の前には悪の帝王、俺はただの一般市民。何が出来ると言うのだろうか。


 あぁ、でも。


『次は! 次こそは!』


「守ってくれてありがとな。俺だけのヒーロー」


 震える拳を力強く握り、無理やり作った笑顔で恐怖を隠す。

 きっと、ヒーロー達は皆こうして、自分を保ってきたのだろう。


『そう! 次は!』




「───次は、君の番だ!正義のヒーロー!!」

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