クラスのお嬢様の彼氏のフリをしたら懐かれて甘々に
月姫乃 映月
第1話【お嬢様の彼氏のフリをする】
人が賑わう街中を歩いていると、ある光景が目に止まった。
それは同じクラスでお嬢様の
別に俺が知らないだけで萌香の知り合いというだけかもしれないが、明らかに萌香の様子がおかしい。ゆっくりと後ずさりをしたり少し怯えた表情を浮かべている。知り合いと話しているには不自然だ。
萌香の父親は超大手会社の社長、母親は元人気アイドル。結婚を機に引退したらしい。
萌香は母親に似たのか、アイドル顔負けの綺麗で可愛らしい容貌をしている。
そしてすらりと伸びた綺麗な脚、モデルのような抜群のスタイル。そして可愛らしい声をしていて学校でも屈指の人気を誇る。誰がどう見ても美少女だ。
そうなれば考えられるのはナンパの一択。
流石に中学からの仲の友達が困っていて見過ごすわけにはいかない。
「何度言われても行きません! この後用事あるんです!」
「本当にちょっとだけだからさ、ほら行こうよ」
「や、やめッ!」
そう言って男の一人が萌香の腕を掴もうと伸ばした手を俺は掴んで止めた。
近づいて行くのにつれて会話が聞こえ、ナンパであることは確信した。
「すみません、俺の彼女に何か用ですか?」
「えっ……
「チッ! 彼氏持ちかよ」
そう口にすると二人の男は素直に去って行った。
勝手に彼氏と名乗って萌香に気持ち悪がられるかもしれないが、友達と名乗って素直に帰ってれる保証はない。なら嘘でも彼氏と言ったほうが何倍も大人しく帰ってくれる可能性が高い。
「どうして暖人が……」
「たまたま通りかかったら萌香を見かけてナンパされてそうだったからつい……」
「そうなんだ、ありがとう。助けてくれて嬉しかった」
「いいよこれくらい。じゃあまたな、気を付けろよ」
そう言って帰ろうとすると萌香は俺の服の袖を掴んで引き留めてきた。
「ん? どうかしたのか?」
すると萌香は少し顔を赤らめながら口を開いた。
「ちょっとだけ付き合って。……ほら、彼氏って言ったのに直ぐにどっかに行く所見られたら嘘ってバレちゃうでしょ……」
「確かにそうだな。どこか行きたい場所でもあるのか?」
「あそこのカフェに一緒に行ってほしいの」
そう言って萌香はお洒落なカフェを指さした。
「ああ、最近新しくできたあのカフェか」
カフェができることは結構昔から知っていたが、つい最近オープンした綺麗な外見のお洒落なカフェ。
そんなお洒落なカフェに一人で行く勇気がない俺はまだ一度も行っていない。
「あのカフェでね、恋人限定のパフェが期間限定で発売されているのをネットで見て凄く美味しそうだから食べて見たくて」
そう言って萌香はスマホの画面を見せてきた。
画面には巨大なパフェが映し出されていて、大きくカップル限定と表示されている。
写真を見る限り、通常のパフェの二倍……いや、三倍はありそうだ。
最下層にはマンゴーとメロンがあり、その上にバニラアイスクリームがあり、生クリームそして苺の順で乗せられている。
生クリームにはイチゴソースがかけられていて美味しそうだ。
「いや、でもそれ恋人限定なんだろ?」
「さっき言った……さっき暖人俺の彼女って言ったもん」
「確かに言ったけど……でも萌香って家に専属の料理人が居るんだろ?」
「居るけど、それがどうかしたの?」
中学一年の頃、萌香がお嬢様だと知った時に少し気になって色々と聞いたことがあり、その時に料理人を雇っていることも聞いたことがある。
「ならその料理人にこのパフェ作ってもらえるんじゃないか?」
「そんなことしないわよ。私だってお嬢様になりたくてなったわけじゃないし」
「そうだったな。悪かったよ、ごめんな」
俺は知っている。萌香は周りから自分がお嬢様だという事だけで特別だと思われることを嫌っていることを。
お嬢様だからという理由か美少女という理由かは分からないが、少し近づきにくい存在だと思われているのに嫌気がさしていることも知っている。
萌香を少し近づきにくい存在という事も分からない事も無いけど……。
だからこうしてお嬢様学校とかではなく普通の中学に通っていたし高校にも通っている。
「それじゃあカフェ行くか」
「うん!」
そう言って萌香は俺の隣に笑顔で並んだ。
萌香とはこれで五年目の付き合いになるけれど、今まで二人でこうして外を並んで歩いたことなんて一度も無い。
腕が当たる程近くを歩く萌香からは凄く良い匂いがしてくる。
それに結構露出が多い服、オフショルダーって服だっけな、それを着ているせいで目が勝手にそっちに吸い込まれてしまう。
「ッ⁉」
少し手が触れてしまっただけで鼓動が早くなる。
意識しないなんて無理な話だ。
今は萌香が俺の彼女って事なんだよな……。
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