第2話

さて。


ここは現代日本から遠く離れた次元すらも異なる世界。いわゆる異世界と呼ばれる場所だ。


そんなこの世界の姿が、地球の如く丸くてボールの様な球体をしているのか、それとも何処ぞの神話に出てくる世界の様に、天動説よろしく丸いお盆に載せられた平らたい大地であるのか……。


まぁ、そんな事は今の俺には知ったこっちゃない。それはこれからこの世界を作って行く、こちらの世界の賢い人間が考えれば良いことだ。


それを転生者の俺が、偉そうに前世の知識をひけらかし、さもしたり顔でとやかく言うのは、なんか違うだろ?俺だってそれくらいの分別はわきまえてるつもりだよ。


でも。


それでもやはり……。俺の個人的な感想を言わせてもらえるならば、この世界はほぼ全くと言っても良いぐらいに地球と似た世界である。朝には東からお天道様が登り、そのお天道様が夕方には西の彼方へと沈んで行く。そして夜に空を見上げれば頭上には幾千もの星が輝き、おまけにひと月ごとに満ち欠けを繰り返す月まで存在する。


いや、似ているどころでは無い。それは動植物の生態や人々の暮らしに至るまで、まるで地球そのものだ……。



ただし……。それは今の俺が知りうる限りでの話なわけで……。


つい先日、俺はふとしたことで自らを魔法使いと名乗る老人と知り合った。


とは言っても、その老人は本当にしょうもない魔法を一つ使えるだけのチンケな魔法使いである。


『道を歩く人間を転ばすことが出来る魔法』


たったそれだけ。目の前で誰かが転ぶだけ……。


けれどもそれは疑う余地など全く無い、誰がなんと言おうが確かに魔法であった。


つまり……自分が知っているつもりになっていたこの世界も、たった一つのくだらない出来事でまるっきり別の世界になってしまう。


もしここが地球であったなら――俺はその魔法とやらもインチキ臭いペテン師の手品とたかをくくる事が出来たろう。しかし、どういうわけかこちらの世界の俺はそれを魔法だと自然に理解できてしまった……。


そう。


だからこそこの世界はやはり、俺にとってどう仕様もないぐらいに異世界なのである。


そして、俺には全く馴染の無いこちらの世界地図に描かれた東西二つの大陸。その東側の大陸のほぼ中央にエーデルと呼ばれる新興国家があった。今俺は、そのエーデルと言うまだ産声を上げたばかりの国の騎士団長の息子として第二の人生を歩んでいる――



  

だがしかし……。そんな恵まれた環境も俺にとってはある意味針のむしろでしか無い。


だって俺は――


騎士団長である父親に完全に疎まれているのだから。

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