第53話

「みことちゃん!」




ふと脳裏を掠める幼い声。なんだろう。懐かしいような。




「尊ちゃんさ、俺がまだ小さかったころ守ってくれてたよね。」


「······あ」




心当たりはある。あるんだけど······その、キャラが違いすぎて。




私の記憶にあるのは、か弱そうで女の子みたいにかわいらしい男の子。今目の前にいる人と同一人物とは思えない。




「まさか······京くん?」




その言葉を聞くと花が咲いたように目輝かせて、今にも飛び上がりそうな勢いで詰め寄ってきた彼。




「そう!はぁ、よかった······ようやく思い出してくれたんだね······!」


「マジか。」




嘘だ。あんな天使みたいだった子がこんな破天荒な変態に成長しているなんて知りたくなかった。




「その時尊ちゃん言ったよね。俺が強くなったら付き合ってくれるって。」


「······は?」




「いやいやどんな冗談だよ」とツッコミたくなったが彼の純粋な目を見るに嘘を吐いているとは思えなくて、ぐっと言葉を飲み込む。




······うーん、私そんなこと言ったけ?

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