イデラ物語−1
真倉マリス
第1話 洲業製薬工場襲撃作戦①
ピリダ「ここが目的の
ヘリのプロペラ音をかき消すように、リーダーのピリダが声を張り上げた。
仕事を前にして気持ちが昂ってきた。この瞬間が俺の生き甲斐である。
ピリダ「今から作戦を決行する。一斉に飛び込め!」
そう言われて俺たちはヘリコプターから飛び出した。真下にある巨大な建物を目掛けて落下していく。
爽やかな風を体全体で感じているときに、監視塔のようなところからこちらを覗く人影が見えた。そう思ったときには、建物の屋上にいる警備員がこちらに向けて無数の弾丸を放ってきた。
飛んでくる弾を躱しているうちに地面が近づいてきた。俺はパラシュートを開き、背負っていたマシンガンを右手に持ち替え、彼らに照準を合わせてそのトリガーを引いた。
視界の中にいた奴らが軒並み倒れていく。
蹂躙する快感を味わううちに、地に足がついた。
まず拳銃に持ち替え、待ち構えていたが怯えて何もできなかった臆病な奴の頭を射抜いた。
俺は西へと向かっていき、西の端にある建物の中へ突入した。
建物内部へと進入していくが、意外なことに人の気配がまったくしない。警備員はさっきのがほとんどで、職員は既に避難したのかもしれない。
時間をかけて細部まで捜索したが、めぼしいものは何もなかった。
俺はトランシーバーを取り出した。
スピダ「西館にブツはなかった。それに、人一人の気配も感じない。他のところはどうだ?」
ピリダ「東館も何もなかった。何か違和感を感じるな。」
コリダ「おい、倉庫を発見したぞ。中央館の製造ラインの近くだ。リシダも来い。」
アピダ「待て!特出の電波を確認した!」
スピダ「なに!?まだそんな時間経ってないぞ!」
その時後ろから物音がしたため、咄嗟に物陰に隠れた。
俺のすぐ横を、特徴的な赤い光の弾がかすめた。あれは
警察特別出動隊、略して特出。俺らみたいな物騒な奴らを取り締まるために作られた集団。教養所育ちの連中で構成されているから、そこら辺の警備員よりも全然強い。
でも、俺にとってはそんなものは敵じゃない。物陰から銃口だけを出して、お返しに顔面に鉛玉をぶち込んでおいた。
確かにそうしたはずだったが、彼は少しのけぞったあと、何事もないようにこちらを向いていた。
間違いない。彼らは”ヒトフポロイト”を服用している。
その薬は、俺たちが洲業製薬工場を襲撃した目的でもある。ヒトフポロイトとは、国が兵隊のために作った薬だ。それを服用すると、HPの概念を作ることができる。攻撃を受けてもそれが外傷になることはないが、代わりにHPが削れていく。そしてHPがゼロになったら死ぬ。まさに、ゲームの世界と同じシステムになるわけだ。
つまりあちらは何回か攻撃を与えないと死なないが、こちらは最悪の場合一発受けただけで致命傷になりうる。
さすがにこの状況は好ましくないので、救援を求めることにした。
スピダ「こちらに特出の奴がいる。援護を求む。」
リシダ「私も特出と遭遇した。数はざっと六人くらいか。私の方にも来てくれ。」
そんな連絡も来た。
その間に、特出の奴らが近づいてくる音が聞こえた。足音の数的に、こちらも六人くらいいるだろう。連絡してる時くらい手加減してくれ。
だが、こいつらは俺のことを舐めすぎだ。俺はこれまでにたくさんの戦士を葬ってきた。
俺もまた拳銃を取り出し、物陰から飛び出した。
攻撃にあたれば致命傷になるが、当たらなければどうということはない。相手は俺に向かって銃を撃ってくるが、たかが六人が撃ってくるだけだ。俺はそれを全て避けてみせた。
銃弾を避けることには慣れてるもんでな。
そして、俺も拳銃のトリガーを引いた。標的は一人に絞る。
続けて四発撃った弾は全て標的の頭に直撃した。そこまですれば流石に応えるらしく、標的にしたものは後ろへと下がっていった。
逃げながら相手方と距離をとり、相手の弾を避けながらこちらは一人ずつ攻撃を集中させてダウンさせる。
そんなことを繰り返した。
次第に、HPが削られた奴らは戦線を退き、こちらの優勢になった。
残り一人になった時には、相手がたまらず逃げ出したため、俺はその後を追った。俺に喧嘩を売った奴は全員逃さない。
だが、追った先に新しい顔ぶれがいた。数は二人、そして、そいつらだけ仮面をつけている。
これが噂に聞いたことがある”覆面の騎士”か。特出の中で、厳選された四人が集まった集団。彼らだけ、理由はわからないが変な仮面をつけている。
といっても、俺達も同じように仮面をつけているけどな。それは、顔を隠して本人を特定されることを防ぐためだ。
覆面の騎士1「お前が”レボルス”内最強と言われるスピダか。」
ガタイのいい男が話しかけてきた。
スピダ「これはこれは、お褒めの言葉をどうも。」
覆面の騎士1「そうだな、俺達を倒せたらもっと褒めてやろう。」
戦い甲斐がありそうな奴らが来たと考えていたら、突如隣の壁が爆発した。
爆風の中に、二人の人影が見えた。
スピダ「コリダ、それにピリダか!」
コリダ「お前が珍しく弱音を吐いてるから来てやったぜ。スピダ、これを受け取れ!」
そう言って彼は二つの物を投げ渡してきた。注射器と、何かの液体が入った瓶。
ピリダ「それがヒトフポロイトだ。俺たちはもう服用したぞ。」
スピダ「なるほどね、そういうことか。」
俺は液体を注射器に入れて腕に打った。とても不思議な感覚だった。例えるなら、体の中で”命”が巡るような感覚がした。
そして、俺はさっき話しかけてきた奴とは別の奴に銃口を向けた。
スピダ「お前、一番強いだろ。俺と相手しろよ。」
体型的に女性で、年齢も俺と同じくらいといったところだが、たくさんの戦士をこの目で見てきた俺には、彼女が一番強いということがわかる。
俺は常に強いやつと戦う。それが一番楽しいからな。
覆面の騎士2「いいでしょう。あなたが私の相手ですね。」
ピリダ「俺が男の方を相手する。コリダはリシダの元へ行け。スピダはそいつに専念しろ!」
スピダ「いいぜ、興が乗ってきたじゃねえか!」
イデラ物語−1 真倉マリス @maguramalice
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