〜グレン、レオンの冒険③〜



…何か、めっちゃ引き留められている件。




翌朝、ゆっくり起きて商業ギルドに行ったら。

にこにこ顔のジャックさんと、ちょっと畏まった格好のおじさんと、筋肉ムキムキなお爺ちゃんに囲われて、ギルドの奥まった部屋へGo!


村から持ってきた商品全部、思ってた以上の価格でさっくり売れたのには吃驚したけど、早々に売れてくれてラッキーだったよな。

グレンも大喜びだったし。


何か買ってくれた人達も、商品をバッグから出す度に大はしゃぎしてくれて、売り甲斐あったしさ。


…特に、父さんが開発したって言う調味料シリーズは、こっちでは“幻のソース”として語り継がれてるらしいよ?プププ。


スタンピードで、アストラ村が壊滅したってなってからは、伝説のソース化してたらしい。

地味に凄いな。


まあ村から出る時も、村長事業の一押し商品として調味料類はかなり沢山、持たされたからなぁ。

でも俺らは懐疑的だったんだよな。

だって、実際は行商の人は来なくなってた訳だし?


かっちりした服を着込んでいるおじさんは、涙を流しながら始終、調味料が入った瓶に頬擦りしてた…いや、怖いって。


何か


「決めつけずに、、、行商しに向かっておればっ……」


とか始終、ブツブツ呟いてた。

グレンと2人、なるべく視界に入れない様にした。


まあ、まさか俺らも村自体が滅んでるって思われてるとは、想像もしないじゃん。

マジックバッグだったから言われるままに詰め込んできたけど…正直、荷物制限あったら絶対そんなに持ち込んで無かった商品である。


だってこれ、村にめちゃくちゃ普及してる品だし。

物心つく頃には各家に、当たり前に常備されてる奴だったし。

それが、こんな大金になるなんて誰が思うよ!?って言う、驚愕の事実。



基本俺らの村って全員農民だし、加工品の調味料よりはやっぱり、作物の方が断然数は多かったんだけど。

この周辺の壊滅具合を知らなかったから、これもまあ持ってったら多少は売れるだろ、位に思ってたら。

…只今この街、復興に力は入れてるものの、食糧は心許なかったらしく。

これも大いに喜ばれて、結構良い取引になったんだよな。

タイミングが良かった。


喜ぶのは不謹慎だけど、初めての商談?は、思いの外上手くいって俺ら大満足!

村の人に頼まれてたあれやこれや以上に、仕入れができそうで良かった良かった!!



こっちの商談は上手くいったんだけど。

本題はここから!と言わんばかりに、持ってた魔道具売ってくれ!交渉には正直辟易した。


特に、ムキムキなお爺ちゃんが、この街の冒険者ギルド長らしくってさぁ…。


「この結界魔道具があればっ!次にスタンピード起きた時に、多くの命が助かるんじゃあっ!!」


って大泣きで訴えて来たからマジで大変だった。


———でも、そう言われても困るじゃん。

俺ら、その魔物たちが多く生息するであろう森の中に帰って行かなきゃならない訳だし。

来る時は、そんな危険な森だって認識してなかったから、のんびり歩いてられたんだけど…知ったからには俺らだって結界必須だっての!


しかも、街に残る爪痕を付けた大物魔獣って、結局決死の戦闘の末、追い払っただけだって話だし…俺らは俺らの命の方が大事だもん。

自分たちの家族が危険なら、また話は違うけど。

所詮は他人の話だし。

そこは、いくら訴えられてもグレンの盾になって、断固拒否した。

これは、絶対、譲らない!


…まあ、絶望してるお爺ちゃんにはグレンが、帰ってから兄さんに新しい奴作ってってお願いしてみるからって約束してたけど。


感極まったお爺ちゃんに、ぴょ〜いぴょいっと、胴上げされてたのはまあ、受け止めてあげれば良いんじゃないかと放置した。

危険は、無いだろ。


その他の小道具についても……そうそう。あのかっちりの人って実は、商業ギルド長さんだったらしいよ。

冒険者ギルド長の大騒ぎ交渉?で、暗黒思考からは復帰したみたい。

お爺ちゃんに便乗して約束取り付けてたのは、やっぱり抜け目無いよな。


「お兄さんには是非!一旦こちらに来て頂きたいのですが!!」


って言ってたけど…父さん絶対来ないと思う。


一応、これだけ待遇させて頂きますよ、な手紙も渡されたけど。

…俺らだってもう、俄然帰りたいのに。

……まあ、辺境の村だから舐められてるんだろうけどさ。

断然、ここより居心地良いからなぁ、あの田舎村。


…俺、糞の臭いが身体に染み付いちゃったんじゃ無いかって、ちょっと心配してるんだよな。

あんまりにもずっと臭過ぎて…鼻が麻痺してるからもう今は、分かんないんだけどさあ。



買い出しは、ジャックさんが付き添ってくれた。

ジャックさんってばこの街では顔が広いのか、各店舗で色々おまけ貰えた。

全部もれなく、アイテムバッグに収納。


さて、それじゃあ帰るか!って段階になって…何か急に目の前に、執事様登場。


「ご同行、願いたいのですが」


と言いつつ、有無を言わせず馬車に乗せられ、領主館にドナドナ。

…いや、逃げようと思えば逃げれたんだけど。

ジャックさんに小声で、逆らわない方が良いってアドバイスされちゃったからさぁ…。


まあ父さんにも、万が一お偉いさんが出て来た時は極力逆らうなって言われてたから、素直に馬車に乗り込みましたけども。


———そして現在。

冒頭でも言ったけど、絶賛引き留められ中なう。


相手は、この街の領主様な。

外は、危険だからって話だけど…ぶっちゃけ、ここに居るから安心って訳でも無いんだよなぁ。

あの魔獣の件然り、俺らの精神負担限界指数的にも。

…でも、それが相手には一切通じ無いから、現状どうしよう?ってなってる訳で。


この御領主様に俺らの情報喋ったのは……言うまでも無く、門のお兄さんこと、ジャックさんだ。

ジャックさんとはここに着いた時点でお別れ済み。

だってジャックさん、ここにお勤めの人だし。

俺らはお客さんな立場だったから、行き先は当然違う所って言うのは理解は出来たけど…突然、放り出された気分よ。


良い人だったし、大いに助かった部分も多かったけど。

……正直、裏切られたって気分がですね?

勿論、言ってたお礼は無しだな。うん。




「どうする?」


「困ったねぇ…」


このバッグ、時間停止機能付きだから買った物の消費期限は気にしなくて良いものの。

帰る期間を大幅に超えた……っていうか、帰す気無いだよなぁ、ここの人達。


ギルド長のお爺ちゃんは引き下がってくれたけど、交渉が決裂したなら人物ごと、留めとけば良い理論を展開されたからなぁ…。


…無理やり出たら、次この街に来た時に困るだろうから逃げ出してないだけで、出る事自体は造作も無いんだけど。


一番の狙いはこの結界の魔道具。

ついで、その他諸々。


次来た時に!とかは通じなかったよ。


「行商って……思ってた以上に大変だし……」


面倒くさいね、と呟くグレンはもう、心折られてるよね。

これ、帰ったらもう村から出ないフラグだよな。

でも、俺もちょっとうんざり気味。

全然話、通じないんだもんよ。


帰ったら一時は、村からは出たくなくなりそうではある。

…妹に癒されたい。












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