第一章 絶望と希望と
ここから俺の物語は始まった…のかもしれない
みずへび座第7星系外縁部:Area56暗礁宙域
────様々な大きさの小惑星が不規則な軌道で移動している暗礁宙域の中を、数隻の駆逐艦と巡洋艦で構成された艦隊が航行している。
その中の一隻、ふるたか型強襲揚陸巡洋艦、2番艦かこ
その艦の格納庫で俺、〔ソウヤ·イワモト〕は巨大な人型、16式両用戦闘機[紫電改]のコックピットにて出撃を待っていた。
俺の乗る紫電改は、〈機〉という単位がつくものの中でHVF《Humanoid Variable Fighter》に分類され、全高15mを超える巨大なロボットだ。
そのため今の俺は機体との神経接続により視点がかなり高く、格納庫内の様子が一望できるのだが、その格納庫は混沌という言葉が相応しいほどの大混乱だった。とは言っても、物資の固定や危険物の収容などを行っている〈かこ〉所属の乗組員は怒号こそあげているが動揺した様子はなく、実際に恐慌状態に陥ってるのは外部から大量にこの艦に搭乗してきている者達しかいない。
ではどうして格納庫がそれほど大騒ぎになっているのかと言うと、俺の所属する艦隊、〈ヒビヤ艦隊〉はとある理由から王国、正確には〈ロイヤル連合王国〉から攻撃を受け、ショートワープを繰り返して命からがらこの暗礁宙域に逃げ込んだのだが、それでも敵の追跡を受けているに等しい空間航跡を消せず、再び敵の攻撃を受けることが予想されていたからだ。
そして案の定、敵出現を知らせる警告が艦内に発せられる。
『本艦隊後方56000km、王国艦隊ワープアウト。
…どうやら敵は暗礁宙域ごと吹き飛ばせる艦隊を繰り出してきたらしい。対してこちらは巡洋艦2隻に、中破含む駆逐艦が4隻しか居らず、戦力差は圧倒的である。
本来こんな状況になったら降伏し、捕虜として捕らえられるのが一番生き延びる確率が高いのだが、このヒビヤ艦隊がその選択肢を取ることはないだろう。
なぜなら今ヒビヤ艦隊が輸送しているものが俺が所属する国、〈大和連邦〉が誇る最強のパイロット、〔ハクト・サカイ〕の愛機だからだ。(ちなみに格納庫で騒いでいる整備士達はこの機体について来たやつら)
彼の愛機である純白のHF[天雷]は連邦の軍事技術の粋を集めて作られた最新鋭機にして、彼専用のワンオフ機であるため、絶対に王国に渡すわけにはいかない。
もし仮に王国の手に天雷が渡った場合、連邦の軍事機密が大量に流出する上、ハクト・サカイの戦闘データが奪われてしまう、もしそうなれば、彼を中心とした連邦の快進撃は停止せざるを得なくなるだろう。
ならどうしてそんな大事なものをこんな小規模艦隊で輸送しているか、疑問に思ったんじゃないか?「大規模な輸送船団で輸送すればいいのに」とも、「それが出来ずともその〔ハクト・サカイ〕を乗せた上で輸送すれば襲われてもどうにかなるんじゃないか?」ともな。
その疑問はもっともだが、今はのんびりと答えている暇はないらしい。
『敵
通信による指示の後、艦外の光学カメラから共有された映像にロイヤル王国航宙軍の主力戦艦であるNelson級攻撃戦艦がこちらに砲塔を向け、エネルギーを充填している様子が映し出される。
あんなものをまともに食らえば駆逐艦はおろか、巡洋艦である〈かこ〉もひとたまりもないだろうが、大混乱に陥っている格納庫とは対照的に、艦隊通信では至って冷静な指示が飛び交う。そして各艦の防御態勢が整ったその瞬間、極限まで圧縮された幾筋ものビームがヒビヤ艦隊に向かって放たれた。
放たれた紅いビームは射線軸上にある小惑星を総て蒸発させながら向かってくる。しかし莫大なエネルギーを含むそれは、ヒビヤ艦隊にダメージを与えることは叶わずに、宇宙空間に霧散していった。
(さすがヒビヤ艦隊だ、各艦のリアシールドを融合させ円錐状に展開して戦艦の砲撃を往なした)
続けて放たれる砲撃も悉く弾かれ、このままなら耐え切れると思うかもしれない。
しかし、この戦法は直線的な攻撃であるビームや電磁加速砲には有効だが、不規則な軌道で向かってくる艦載機やミサイルに対しては有効性は低くなってしまう。それに、俺の見立てではそろそろ…
『敵艦隊より艦載機の発艦を確認、ツルギ隊、ハクバ隊は前方カタパルトより発進せよ』
(お出ましか…!)
Nelson級の砲撃がひと段落したからか、敵艦隊は航空母艦を中心に大量の艦載機を発進させてきた。
艦隊司令部より発進の指示が出た機体が自動で格納庫から発進口に移動させられる間、俺たちパイロットに敵艦載機の情報が提示される。
(敵部隊の編成は…
そんなことを思いつつこれから始まる迎撃戦のプランを部隊に共有し、俺は[紫電改]のメインシステムを起動した。
***************************************
ソウヤによってスリープ状態から起こされた鋼鉄の巨人は、眠気を吹き飛ばすかのように反応炉を活性化させ、機体の足元から順に各スラスター、駆動部、スライド量子装甲、センサー、内蔵武装等を確認。
やがて全てのチェックを終了して出撃準備完了をパイロットに示すと共に、自身のバイザーに蒼い光を灯す。
『こちらツルギ1、発進準備完了』
『管制室了解、発進シークエンスを開始』
自らのパイロットと管制官のやりとりを聴きながら、鋼鉄の巨人は自らの足を固定するカタパルトにエネルギーが充填されるのを認識する。
『…エネルギー充填完了、射出タイミングをソウヤ・イワモトに譲渡する』
『了解((行くぞ相棒…!))』
『ツルギ1、ソウヤ・イワモト、出るっ!』
勇ましいパイロットの言葉と共に、鋼鉄の巨人は電磁カタパルトによって時速1200kmまで加速され宇宙空間へと飛び出した─────
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