第14話

「……相変わらず、キレたら手がつけられないのね……。

まぁ……相手が相手だものね」



杜羽は神矢を見つめて、少し切ない表情を浮かべた。




皆がただ見守ることしか出来ずにいたその時、森教官が神矢の元へとゆっくり歩み寄った。




「神矢……!」




「……!森教官っ……危ないです!」




瑞依は森教官に向かって叫んだが、森教官は神矢の霊力の渦の中へ自ら飛び込んでいった。




「……くっ……神矢っ……落ち着け……!」



神矢の放つ超越したチカラの渦の中で、さらに突き刺すような冷気が森教官を襲う。



森教官は苦痛に顔を歪ませながらも、なんとか神矢の左耳のピアスに手を触れた。




「……!」



神矢はハッとして森教官の手を振り払ったが、すでに遅かった。



神矢の意識が、遠のいていく。




「森教官っ……!」



瑞依と妃、真樹は、神矢のシールドから放り出された森教官に駆け寄った。



森教官の身体は本当に凍りついたかのように硬く冷たく、指先から徐々に青くなりはじめていた。




「教官っ……大丈夫ですか……!?」




「……ちょっと……キツイな……」



森教官は動かなくなった身体で、口だけでニッと笑った。




「神矢を……頼む……」




「おい!すぐに森を治療室へ運べ!」



貝藤教官の言葉に、教官達一同は森教官を運んだ。



一方神矢は、遠くなる意識の中で膝をつき、未だに響を睨みつけていた。




「……無様だね神矢くん。

君は協会や高柳博士に飼い慣らされた犬だ。

自由に戦うことすら出来ない……同情するよ」




「……っ……オマエ……!」



神矢は息を切らし、左耳に走る激痛に耐えて尚、響を睨んでいた。




「……神矢……」



瑞依は霊力の無くなった神矢を見つめながら、響の言葉に何故か悲しい気持ちになった。




「……っ全部……全部……っオマエ……オマエらがっ……」



神矢の瞳から、一筋の涙が流れ落ちた。



薄い薄い、涙の線。



おそらく、それに気付いたのは瑞依と響だけだろう。




そして、神矢は意識を手放した。





「……」





『お前達がっ……全部お前達が悪いんだ……!』




………………あれ……?



……なんで……



何か、今の言葉……昔誰かが……。





…………誰だった?

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