第9話

「……やっぱり、あたしのこと心配してくれてたんだよね」




「当たり前じゃん。

何、俺と口喧嘩したかっただけって言いたいのかよ」



慧汰は呆れたようにため息をつく。




「そうじゃないけど……。

何か……不思議で」




「……何が」




「なんで妃はあたしのことそんなに思ってくれるのかなって」




「……」



慧汰はじっと瑞依を見つめた。




「……何?」




「……いや。

つまりお前はそれだけあいつのことを救ってんじゃねぇの?」




「救ってる?」




「ま、俺はなんとなくわかるけど」




「……?」



瑞依はキョトンとした表情を浮かべた。




……あたしの方がいつもお世話になってる気がするんだけど。





「……でさ、俺は別に瑞依が危ない目に遭ってほしいなんて思ってないからな」



慧汰は瑞依から目を逸らしたまま、気まずそうに言った。




「わかってるよ。

慧汰の言いたいことは」



瑞依は微笑んで返す。




「慧汰はあたしがもし立候補したいのなら、立候補するべきだって言いたいんでしょ?

つまりは意欲ある人がするべきだってこと」




「そ。そういうこと。

俺は高柳理事長を信じてる。

いくら特殊部隊っつっても、まさか生徒にそんなに危険が及ぶようなことはしない筈だ」

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