田舎住みの道具師、王都へ行く

クククランダ

第1話 実家追放


 ゴリゴリと何かを削る音が部屋に響く。


「ふ、ふふ」



 次には部屋が光り出す。眩い光は部屋だけでは収まらず部屋の隙間から漏れていく。そして光が収まったのを見て。



「ふふふ。はっはっはー!! 完成だぁ!!」



「うっさい!!」



 部屋の扉が勢い良く開かれた。寝巻き姿の黒髪の女性が怒りの形相で俺を見る。


「ん? どうしたんだ、母さん。そんなに怒って」



「あんたがやかましいから怒ってるのよ! あんた今何時か分かってんの!?」



「えっと、確か夜の12時くらいか?」



 はて? 一体なんでこんなに怒っているのだろうか? 俺には良く分からん。俺がきょとんとした顔で母さんを見ていると母さんはため息をつく。



「良い? 今日はもう寝なさい。分かった?」



「えー? 俺まだまだ作りたい物が……」



「分かった?」



 母さんは笑顔のまま、顔を近づけて来る。あ、これやばい奴だ。俺の経験から言うとこの顔をしている時に何かやらかすと般若のような顔になる。



「わ、分かりました」



「そう、良い子ね。お休みなさい」



 バタンと扉を閉める音がする。仕方ない、俺も今日は大人しく寝よう。そんで明日早く起きて再開しよう。俺はベッドで目を閉じる。



▲▲




 清々しい朝、小鳥が囀り、朝日が差し込む。田舎だからこそ空気が美味い。そんな素敵な朝から始まる1日は。



 俺の部屋の爆発で終了した。




「「「………」」」



 寝巻き姿の母と父。そして俺が部屋のリビングの椅子に座っている。



「リド。あなたこれで何回目?」



「えっと、大体120回目くらい……です」



「そう、120回……」



 やばいやばい!! 今日の母はなんだかいつもと雰囲気が違う。いつもなら怒りの形相か笑顔なのに目が笑っている状態なのに、今は無だ。今まであんな顔は見たことないから怖い!



 父さんも初めて見る母さんの顔にオドオドとしている。



「……リド」


「は、はい!」



 急に名前を呼ばれて体が跳ねてしまう。今回のお仕置きは一体なんなんだ? 前みたいに1ヶ月道具作るの禁止とかか?



「あなた、王都に行きなさい」



「……え?」



 なんで? 王都? 話の脈絡が無さすぎて混乱してしまう。一体どう言うことなのだろうか?



「えっと、なんで王都に」



「私は前に言ったわよ。次に部屋を爆発させたら家を追い出すって」



「え、いやいやそんなこと聞いて………あ」



 思い出した。確かに言ってた。あの時は道具が作れない悲しさのせいで気に留めてなかったけどそんなこと言ってたな。



「と、言うわけでリド。貴方はしばらく王都で頑張って来なさい」



「いや、でも!」



「良いわね?」



「……はい」



 こうして俺は王都に行くことになった。

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