第284話 それぞれの教師の思い
夕食を食べた後、居間でゆっくりとしていた俺の耳に、サナの言葉が届いた。
「これまでも生徒を見てきましたが、シュウヤくんはとても優秀ですね。実力も申し分なく、今では私の教室の代表者のような立ち位置です」
「噂は聞いているわ。元々キタハラで鍛えていたのもあるし、三大君を父に持つなら色々と仕込まれたでしょうね」
「ふふっ、今ではわたくしの自慢の生徒です」
イヴとサナの会話を聞きつつ、最近の授業報告書を頭の中で思い出す。
シュウヤはそのリーダーシップを生かして、クラスの中心的な存在になっていた。
彼を慕う連中も多い。そもそもサナのクラスはセイラン出身者が多いというのもあるのだが。
「あら? でも私のクラスのティルファも中々よ?」
「剣と聖魔法どちらも使いこなせる才媛ですからね。イヴさんが教えるのならさらに強くなるでしょうし」
「指導に熱が入りやすいのは事実ね」
「ん。エンデー、私たち、同じ」
ムゥの一言に、三人は俺の方を一斉に見た。
なんだ? と思っていると、サナは満面の笑みで尋ねてきた。
「お父様、わたくし達を教えている時は、今のわたくし達のようにワクワクしていたのですか?」
「そりゃあな。俺から言わしてみれば、お前ら以上に出来た教え子はいねえし」
あの時の胸の中で弾けた火種は、今でも覚えている。
イヴは真っ白なキャンパスに絵を描いているような感覚だったし、ムゥとは夢中になって魔法式を弄り回した。サナだって、同じ刀使いとしてその才能にちょっと嫉妬したくらいだ。
俺の言葉に、イヴ達はまんざらでもなさそうに照れる。
イヴとサナは小恥ずかしそうにしているし、ムゥも机に突っ伏していたが、顔の向きを変えていた。
その様子に、ちょっとだけ嗜虐心がくすぐられた。
「にしても俺の気持ちが分かるようになったとは、お前達も立派な先生だな? 学園でもお前らは人気だし、俺も鼻が高いぜ」
教師の人気は学園の売り上げにも直結する。
特に三人は強さだけでなく教え方やビジュアル的な要素も強いので俺の学園のTOP3だ。
ただ授業を受けた生徒の満足度という意味だと後一人、かなり高評価の奴がいるが。
「正直私としてはまだまだという気持ちもありますが……少しずつ成長して先生に認められるのは嬉しく思います」
「え、イヴさんでまだまだだったら、わたくしなんて全然なのですが……」
「でもサナ? それならあなたは、先生と同じだけの指導の領域に達していると思うの?」
「それは難しいと言いますか……やはりお父様はお父様なので……」
「……エンデー、教え方、他に、人たらし」
好き勝手言っている三人。
っていうか、サナのお父様はお父様って何も変わってねえじゃねえか。
そんなことを思っていると、そういえば、とイヴが話題を変えた。
「ムゥのクラスにも中心になってる子がいたわよね? ロスティアだったかしら?」
「ん。ロスティア。マルク・マギカ、貴族。私のクラス、中心」
「優秀なの?」
「実力、ある」
ムゥの言ったロスティアとは、彼女のクラスのロスティア・ローレリウスのことだろう。
下級貴族らしいが、社交性が高く、友人が多いムゥクラスのリーダーだ。
シュウヤ、ティルファ、ロスティア。
彼ら彼女らだけでなく、他にも優秀な人材は今学期は多い。
やはりクラスの中に優れたリーダーシップを取るメンバーがいると、全体の意識に良い影響を与えるようだ。
それを考えると、今はスカイグラス学園の黄金期とも言えるのかもしれない。
「ですが、シュウヤ君がわたくしは最も優秀だと思います。無論、ティルファさんやロスティアさんも優秀ですが」
「あら? それは聞き捨てならないわね? 今回一番優秀なのはティルファよ」
「いえいえ、いくらイヴさんでも、ここは譲れません」
「……決めるの、早計。でも一番優秀、私、クラス」
イヴ、サナ、ムゥの三人がそれぞれの教え子が一番優秀だと主張し始める。
サナの遠慮がなくなったことで、こうして意見のぶつかり合いが見れるようになった。
(……まあ、自分の手塩にかけてる生徒が一番優秀だと思うのは仕方ねえよな)
イヴ達の気持ちはよく分かる。
俺は比較対象がいなかったけど、もし居たら、俺の生徒の方が優秀だ! って言ってただろう。
……いや、イヴ達は贔屓なしに優秀を飛び越えているわけなんだけど。
「まあ、教師同士で自分の生徒が一番だって思って、指導に熱が入る分にはいいか」
今もなお自分の生徒の良い点を上げ続ける三人を見ながら、こいつらすっかり教師の考え方になったなと、苦笑いした。
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