ウィステリア・ミラージュ
@Yukari_Kamisiro
2023年:蜃気楼のような女の子 第一章
とても、可愛い女の子――
それが、彼女を見た第一印象だった。
清楚で、知的な感じだけど、恐ろしいほど静かな女の子――
それが、しばらく彼女と同じ教室で過ごした後に感じた、偽らざる気持ちだった。
誰とも話をしない。人形みたいな、少し不気味な女の子――
それが、彼女と机を並べて半月経った後の、率直な感想だった。
きっと、彼女に対するこの感想は俺特有のものではなく、男女の別なく、クラスメイトの皆が感じていたものであろう。それくらい、彼女は誰とも話をしなかった。
ただ黙々と、教室の片隅で本を読んでばかり。そして時々ふと顔を上げては、中空をじっと見つめるのだ。その様子は、まるでそこに何かいるかのようで……その姿を見ていると何とも言えない悪寒が体を突き抜ける。
気味が悪い――
その頃になると、次第にそんな声も多くなり、転入当初は学校中の男子であれだけ賑わっていた教室の廊下も、すっかり物寂しくなってしまった。
もう、彼女に話しかける人は誰もいない。
そう――ただ一人のお調子者を除いて。
断っておくと、このお調子者の男子は、善人ではない。
〝みんなで仲良く〟なんていう薄ら寒い信念は持ち合わせていなかったし、困っている人に無償で手を差し伸べるようなお人好しでもなかった。
それでも尚、彼が彼女に話しかけたのは、彼女が美人だったからだ。
それでも尚、彼が彼女に話しかけ続けたのは、一人静かに中空を見つめる彼女の姿が、妙に気にかかったからだ。
それ以上の理由はない。
自分では、今でもそう思っている。
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