第二話 魔術師の資質 4

「ケーリュさん、さっきはありがとうございました」

 買い物が終わって私がテーブルにいたケーリュにお辞儀をする。

「ああ」

 一瞥だけしてまたケーリュは酒を飲み出す。

「あんたら、魔術師だな」

「ええ、ああ、はいそうです」

「転送門も使ったことがない?」

「それは……」

「骨董品の金貨を持って、骨董品の服を着て、か。あんたの服、国家魔術師の正装だな。そんなもの着ているやつなんてどこにもいやしない。いや、中央都市のカビた塔にはいるんだろうな」

 ケーリュがアランを見る。

「この街は国の外れだ。隣街から来る人間しかいない。そこに行く方法もあんたらは知らないってことは、そこから来たわけじゃない。この街の反対側には何もないはずだ。あんたら一体何者なんだ? タラントが言う通り、うさんくさいな」

「さっきの礼だ」

 アランがテーブルに銅貨を数枚置いた。

「ふん、まあいい」

「転送門について知りたい」

「国家魔術師様が、五十年も前に作られた転送門のことを?」

「ああ」

 五十前なら私もアランも城に閉じこもっていた。その間に新しくできた魔術だろうか。

「試験じゃないよな? 俺を試そうとしているのか? 転送門の使用権限を取り上げに来たのか?」

「違う、そうじゃないんだ、ただ、転送門について知りたい」

「わかったよ、俺の家に行こう。魔術の話をするには、ここはあまり適切じゃないからな」

 ケーリュが立って、アランが置いた銅貨を掴む。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る