14
ロスウェンが導いたのは干し草小屋のなかで、母屋とも隣家とも離れている。冬のあいだに使ったので、干し草自体は隅にすこしあるだけだ。その上に身を投げ出し、スカートをめくり上げて脚をひらく。イネスはかがみ込んでそこに唇を付け、舌を使うので、ロスウェンは早々に吐息に喘ぎ声を含ませる。自分の身を覆うものも、イネスのからだを覆うものも煩わしく、ロスウェンは乱雑に服を脱ぎ、イネスからも引き剥がす。欲望と暗がりのせいで、自分がどう動いているのかもわからなくなる。太ももでイネスの顔をはさみ、ぎゅっと引き締めてしまう。手を握り合っていて、彼女のやわらかな手のひらに爪を立てる。
ごめ、なさい、痛くして……
いいよ、もっとひどくして。
くぐもった声でイネスが言い、また舌を使う。村じゅうに響くような声が出そうになり、ロスウェンは唇を咬む。
腰が浮き、いじましく足先が地面を叩く。上半身を起こして、彼女の頭をつかみ、自分の脚のあいだに押しつける。
イネスさま、好き、好き……──
すねで最初に触れたイネスの太ももに脚をこすりつけ、摩擦で熱を持つほど触れあわせる。そのうちに波がはげしくくり返し打ち寄せて、ロスウェンはながながと達した。
やさしく口づけされ、はっとしてイネスの背に腕を回す。
……きもちよかった?
ええ、とても。イネスさま、きょうは……
耳に唇を押し当て、イネスはささやく。
すごく昂奮してる。
ロスウェンは顔全部が赤くなるのを感じ、彼女の背骨を指でたどる。
腰ちかくになるとイネスがびくびくと震え、ここがよわかったことをあらためて確認する。ロスウェンは起き上がり、イネスを壁に向かって座らせ、その後ろから背に舌を這わせる。骨とそれのない場所をたどり、へこみのかよわさと盛り上がりのしなやかさを舌で感じ取る。やわらかく、汗ばんでいて、吸い付くようで、いとおしさがこみ上げる。前にまわした手は、そっとぬかるみのなかを進む。イネスが額を石の壁に押しつけ、ときおり愛らしい声を上げる。イネスがロスウェンの片手を取ると、自分の口のなかに入れる。ゆびさきを吸い、指の股を舌でおしひらき、てのひらをくりかえし舌先が這う。ふだん何気なく使っている場所を、イネスがひもといて花ひらかせる。
思わず彼女を後ろから抱き締める。自分の情欲によるものなのか、彼女の求めなのかわからない行為で、互いの快楽が高まる。音を立てて彼女のうなじに口づけ、痕がつくほどつよく吸う。このひとはわたしのものだと、あさましい執着で彼女に痛みをきざみつける。その傲慢さは目がくらむようで、彼女の口のなかで舌をつまみ、ことばを紡ぐはずのその器官をもてあそぶ。
あやうい橋を渡っている。これ以上したら、彼女の信頼を失うかもしれない。しかし、ぬめりとあたたかさを持つ舌が、涙が出そうなくらい丁寧に、ロスウェンの指を愛撫し、欲情を掻きたてる。くり返し彼女のうなじに口づけし、浮かせた腰に自分のからだを擦りつけ、ことばをうしなったまま一緒に動く。イネスの太腿がびっしょりと濡れ、その奥はロスウェンの指を飲み込んで放さない。
イネスがロスウェンの指を甘噛みする。その拍子にもっと奥に指を入れると、イネスがむせたので、慌てて抜き取る。
あっ、イネスさま、ごめんなさい。
いいの。
イネスが振り向いて、唇をかさねる。正面に向き合って、ロスウェンはイネスの胸に手を這わせる。すでに濡れている指がイネスの豊かなふくらみのかたちを変え、その先端をやわらかくこすると、イネスはひときわ甘い声を上げた。そのたび、ロスウェンはたまらなくなってイネスの頸すじを吸う。イネスが顎をのけぞらせ、感に堪えないようにからだをふるわせる。ロスウェンは無抵抗のイネスのからだをひらき、かがみ込んで、たたみかけるようにしたたりのあふれる場所に唇をつける。イネスは脚をぴんと伸ばし、唇を咬んで快楽に耐える。
夜が深まり、ようやく日が沈んで、静まりかえった湖のほとりにはふたり以外だれもいない。月の淡い光のもとで、くすくす笑いながら水に入る。
つめたいよ!
そうですよ。この島にはあたたかい夏なんてないんです。
ロスウェンが澄ました顔で言う。
あっ、イネスさま、あんまりざぶざぶ行くと……
うわっ。
イネスさま!
ロスウェンが慌てて駆けつけると、深みに落ちかけたイネスがロスウェンを抱き締める。
……ちいさいころはここで泳いだ?
いいえ。からだを洗うくらいです。
もしかして泳げない?
……あまり。
ふーん。
イネスはつまらなそうに言い、ロスウェンが止める間もなく、水を跳ねて泳ぎ始めた。
寒いよー。
寒いんですって! 風邪引きますよ!
さっきまで汗かいてたから平気ー。
イネスさま!? どっちなんですか!
そう言い合っているうちに、イネスが湖のすこし奥まで泳いでいく。突き出た岩に掴まり、
ロスウェン!
名前を呼ぶ。
なんですか?
呼んだだけ。
……。
ロスウェンは息を吐き、慎重にイネスを追いかけた。まだ足のつく、胸程度の深さで助かったが、湖に入るのが久しぶりすぎて、イネスが怪我をしていないか心配になる。
イネスさま、痛いところはないですか? 岩にこすれたとか……。
イネスが片手を差し出す。ロスウェンがそれをつかむと、ぎゅっと抱き寄せられる。
痛いのはね、こころ。
イネスさま……。
ロスウェンが不安になって顔を上げ、イネスの頬に触れる。
さっきの……舌をつまんだり、喉のほうに指を入れたりしたの、いやでした?
イネスはけらけら笑う。
ちがうよ!
えっ、じゃあ、咬んだり、つよく吸ったりしたの……
ちがうって!
わたしが、──あなたを自分のものだって言ったこととか──……そういう傲慢なところが……
……ちがうよ。
間近で見つめ合い、イネスは穏やかに言う。
こうやってすぐそばにいる。ここ最近はずっと。からだでは快楽を共有できる。でも、城に帰ったら、召使と官僚に戻る。あなたはわたしに仕える。──もう、そういうのはいや。……あなたが、自分のことを傲慢だと、思っているのが苦しい。あなたは、……わたしを、……愛してくれているのに。
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