もう遠くへ行ってしまった君へ

藍色の星 みり

1 出会い、そして付き合い

これはもう、かれこれ一年以上前の話だ。俺のネットでの、初恋の話。


俺はとあるネットコミュニティに居たんだ。そこには当時出来たばっかりのカップルが居てね、二人は愛の言葉を伝え合っていた。自分たちはそれを見てイジっていた。恋人のことを聞かれて恥ずかしそうにするのを聞くのが、恋愛してない我らに出来る唯一のことだった。


でもわかっていた、恋人が居ない寂しさ、そんな中見せられるカップルのイチャイチャを見せられる虚しさを紛らわすために、相手をイジって、自分の気分を高揚させることで寂しさを紛らわせていたということに。実際、そのコミュニティでの通話が終わり一人になった時、自分の虚しさ、惨めさに泣いてしまうこともあった。


そんな時にコミュニティ現れたのがあの子、後に彼女となる子だった。純粋無垢、天真爛漫という言葉にふさわしい、けがれを知らない元気いっぱいの子だった。そんな子が、コミュニティで他の人と言い合いになって、当時管理者であった俺は会話に割って入って止める。するとその後その子からDMで連絡が来る。その相談を聞いた時、それがどうにも他人事に思えず、気にかけるようになったのだ。


その数日後、コミュニティでは荒らしが現れ、管理者である自分たちが対応に追われかなり疲弊して、若干の自己嫌悪になっていた。その時いろんな人に慰めの言葉をかけてもらったのだが、その子の「よしよし」という言葉になんだか心が安心感というものに包まれたような感覚だったことを覚えている。今思えばあの時からもう好きだったのかもしれない。


その更に数日後、自分の学校の修学旅行シーズンで、撮った写真や行った場所の感想とかを言うスレッドをコミュニティに立てていたのだが、その子がずっと俺の話を楽しそうに、興味深く聞いてくれたのだ。そうしていつしか修学旅行のことを聞いてほしいという理由から、その子に楽しそうに聞いてもらいたいからという理由に変わっていった。


そこではっきり気づいたんだ、俺はあの子のことが好きなんだって。

その日の夜、好きという気持ちに気づいた俺は、その子と友達で、なおかつ恋人が居る人に恋愛相談をしに行った。この気持ちをどうするべきか、告白しようか、それとも留めておこうか、するならどうやって伝えるべきか。そんな事を話した。また同日、俺の好きな人を当ててきやがったやつがいたのでそいつとお互いの好きな人(相手は恋人持ち)について語り合った…修学旅行の夜にネットでとはいえ恋バナをするなんて、なんだか王道の展開だな。


そうして修学旅行も終わりを告げた後の土曜日、告白の予定日だ。ただ俺の顔色は険しかった…。その子は恋愛は遠くから眺めるのが好きなのであって、自分が当地者にはなりたくない、おまけにネット恋愛には否定的であることを知った…今自分がしているのはネット恋愛だ、つまり…、だけど気持ちは伝えないといけない、決めたんだから。


告白をして、好きになった理由を話した。それでもあの子の過去など色々あったことでこの告白は受け入れられないと言うことを聞いた、でもこれからも普通に話してくれることになったから、気まずくなって離れることはなかったからそこは安心した。でも、自分としては初恋が消えたようで2日間ほど本気で落ち込んだ…いや待て?、俺が断られたのはネット恋愛に否定的だからであって、俺自身のことを悪く見られている、と言う訳では無いということに気付いた。ならまだ、チャンスはあるなと俺の中で行動を起こす気が生まれた。


それまでは自分が相手に対して一方的に好意を向けていただけだ、これからは相手から自分のことを好きって思ってくれるように、精一杯アピールしていこうと、いろんな方法を使った、時々DMを送ったり、そういう話になった時、やんわりと、俺は君のこと好きなんだけどなっていうニュアンスを含ませたりした。


そうしたら1週間後、その子が、

「どうすればいいのかな…」

とツイートしているのを見つけた…もしかして、しつこかったかな?…ウザイって思われたかな、と気が気じゃなかった。だけどどうやら友達にこのことを相談してたらしく…付き合うくらいなら大丈夫って言ってもらったらしく、今度は相手の方から、

「〇〇くんが良ければ…付き合ってくれませんか!」

と言って貰えたのだ。家には親がいたから叫ぶことをなかったけど、自分の部屋に行って声に出さず心の中で叫び散らかすほど喜んだ。色んな人におめでとうって言ってもらった。これまでの全ての事が報われたような気がした。

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