第29話 はなとりじいさん 中編

「ふう……美味いわあ……これだけの為に仕事してるまで言えるわあ……」


「苦いだけでしょそんなの。ちょっと舐めてみたけど全く美味しくない!」


「若いわねwでも、ビール🍺におつまみ🦑も頂いたしゆっくり休めたわ」


「500mm缶🥫を……3缶も空けちゃって……飲酒朗読は初めてでしょ? 気を付けてよ?」


「はいはい。では」続き、いくらろおおお?


「わ、わーい😊」

お、お母さん? 再びセリフ💬が「」からはみ出てしまってますよお? 大丈夫でしょうかこれ?


ーーーーーーーーーーー木のうろの中ーーーーーーーーーーー


「こ、これはまずい事になったぞい。出るに出られん……」

そうです。嵐を明けた直後には鬼達は宴を行う習性があるのです。嵐が止んだ事を喜ぶ種族なのでしょうか? そしてそれは、3日続きます。おまけに不運にもおじいさんが隠れている木の前で開催されてしまいました。


「隙を見て逃げ出せないか? うーむ……駄目そうじゃなあ」

おじいさんの心配などお構いなしに宴には欠かせないお酒🍶が次々と出て来ます。すると、みんな互いに杯をうけたり、さしたり、まるで人間のする通りの、楽しそうなお酒盛りが始まりました。


「がははははw」

お杯の数がだんだん重なる内に、お頭鬼は、酔い潰れて、笑い崩れています。すると下座の方から、一人の若い鬼がやってきて、お三方の上に食べ物を乗せて、お頭鬼の前へ持って行きます。ですがお頭鬼は何か訳の分からない事を仕切りに言ったり。突然笑い出したりしながら飲み続けています。その様子は少しも人と違った所はありません。

やがてお頭鬼は、何かを思い付いた様に……


「誰か、歌う者はないか? 踊る者はないか?」


と言って、そこらを見回します。

お頭鬼の傍に座っていた鬼が、出し抜けに笛🎷を吹き始めます。

ピーヒョロロー


そして続いて、太鼓🥁の代わりに腹を出して叩く鬼も。

ポンポン

「おにはーうちーふくはーそとおおおお……いよおおおお……ぽんぽん」

そしてその音楽に合わせて一つ目の鬼が大きな声で歌い出しました。すると料理を運んでいた若い鬼も、前へ飛び出してきて、さんざん踊っては引っ込みました。それから代わる代わる下座の方から、一人一人違った鬼が立ってきて、同じように踊りました。中には上手に踊って褒められる者もあれば、不器用な踊り方をして、みんなに笑われる者もありました。踊りが終わる度に、みんながぱちぱち手を叩き、


「おお、歌も良い! 踊りも良い! やんややんや」


「いいぞおお」

ぱちぱち

とはやしました。お頭鬼はその時、さも愉快そうに高笑いをして、


「あっはっは。面白い、面白いぞお。今夜の様な愉快な宴会は初めてだ。よし、もう一人誰か! もっと珍しい踊りを踊れる者はいないのか?」


「なんと!」

おじいさんはさっきから、木のうろの中で体を縮めながら、それでも怖い物見たさで首だけのばして🦒外の様子を覗いていました。その内に、根が剽軽ひょうきんなおじいさんですから、いつか怖いのも忘れてしまって、見世物でも見ている気で、面白がって鬼の踊りを見ていました。そうする内に、自分もだんだん浮かれ出してきて、今のお頭鬼の言った言葉が耳に入ると、自分も飛び出して、踊りたくなりました。

しかしうっかり飛び出し、一口にあんぐりやられては大変だと一度は思い返して、一生懸命我慢していましたが、その内鬼共が面白そうに手拍子を取り出しますと、もう堪らなくなって、


「構う物か。出て踊ってやれ。お頭鬼は踊りが見たいと言っていたんじゃ。誰も出ずにここで隠れていても宴は終わらん。もういい、食われて死んだらそれまでじゃ」

とすっかり覚悟を決め、腰にきこりの斧🪓を腰に差し、烏帽子をに鼻の頭まで被って素性を隠すと、前も見えずに飛び出します。


「よう、こりゃこりゃ」


と言いつつ、ひょっこりお頭鬼の鼻先へ飛び出しました。

余りに突然の出来事ですから、鬼の方が驚いてしまいました。


「何だ?」


「あれは? 人間じゃないか?」

みんなは総立ちになって騒ぎました。

一度飛び出してしまったおじいさんはおじいさんでもう済ましたもので、一生懸命、伸びたり、縮んだり、縦になり、横になり、左へ行き、右へ行き、くるりくるりと木鼠の様に、元気良く跳ね回りながら、踊ります。スタミナ配分など一切気にせず、この踊りを踊り終えたらもう燃え尽きてもいい! そんな覚悟が感じ取れる、正にラストダンスと言える踊りではないでしょうか?


「よう、こりゃこりゃ」

とお酒に酔った様な声を出して、さも面白そうに踊りました。すると? だんだんみんな釣り込まれて、一緒に手拍子を合わせながら、


「しかし、巧い気がしてきたぞ、いやこの男……踊りが……異様に……巧いぞ! さっきの踊りが霞んで見えるレヴェルだ……!」


「言われてみれば……すごいぞじいさん!」

といいながら、はち切れそうな大笑いをして、おじいさんの踊りに夢中になっていました。踊りがすむと、お頭鬼も感心して、おじいさんに


「こんな面白い踊りは初めてだ。じいさん、明日の晩も来て、踊りを踊るのだぞ」

おじいさんはそれを聞き、自分のセンスが鬼に通じた事にまず安堵します。そして、得意気な顔に変わります。


「へえへえ、お言い付けがなくともきっと参りますよ。今晩は何しろ急な事で、稽古をして来ませんでしたから、明日の晩までには、ゆっくりおさらいをして参りましょう」

すると?


「いいや、ああは言ってますけども、その場になると横着をきめて出てこないかも知れません。約束を違えさせないために、何か、質に取っておいてはどうでしょう?」

冷静な一人の鬼がお頭鬼に提案します。 


「そ、そんな事はありませぬ。わしも踊っていて楽しかったのです。笛に太鼓の調べがわしに力を与えてくれたのです」


「そんな嘘信じられない。あんなのただ適当に打った腹太鼓だ」

この鬼は腹太鼓を演奏していた鬼みたいですね。


「何? 適当にやっていたのかお前?」


「ひい? い、いえ。本気でやっていました。そんな事よりも、お頭? どうでしょう?」


「成程、まあ、いいだろう。それで、何がいいか? 何を取りあげておくのだ? お前の意見は?」


「皆の意見を募って下さいませぬか?」


「そうか。では皆の者! 何を預かるか言って見せよ」


「そうですね……あの頭の烏帽子はどうでしょう?」


「これはばあさんから貰った大切な物でして……」


「そうか! なら好都合ではないか? それに烏帽子が無くては格好がつかぬか。成程、良い考えだ。他にいるか?」


「いや、斧はどうだ? 仕事が出来なくなる」


「それもいいな」


「ふ、普通に困りますよ。他の物はありませんか?」


「そうか? では、じいさんの頬のコブを取るのはどうだろう? コブは福のあるものだから一番大事な物に違いない」

お頭鬼が閃きます。


「そ、そんな?wwww」

そう言いつつおじいさんは心の中は、きたああああ(*´Д`)と思っています。まさかこんなところで60年近く悩んでいたコブとおさらば出来るかも知れないのです。鬼にそれがバレないように、わざとびっくりした風をして、一世一代の芝居を始めます。


「おやおや、とんでもない事を仰います。目玉👁️を抜かれましても、鼻👃を切られましても、このコブを取るのだけはどうかご勘弁下さいまし。長年の間、宝の様にしてぶら下げている、大事なコブでございますから、これを取り上げられましては、本当に困ってしまいます」(決まった……憎いくらいに……)

 

「それ見ろ。あの通り惜しがっているコブだ。あれに限る、取り上あげておけ」

お頭鬼の指示に手下の鬼はすぐそばへ寄ってきて……


「いいか? 取るぞ」

といいながら、ぽきりとコブをねじ切ってしまいました。


「やめてくだされえ(笑)うわああああ(笑)あれ? 痛くないぞい」

何故か痛くはありませんでした。鬼の皮膚から出る瘴気には麻酔効果でもあるのでしょうか? ですが、出血は止まりません。


「ち、血が」


「大丈夫だ。これが止血の薬💊だ。塗って置け」


「へい」

ぬりぬり

すると、血が止まり、皮膚が再生していく感じがします。


「おお、これは……凄い薬じゃあ」

ちょうどその時、夜が明けて、烏🐓がカアカア鳴きました。


「ああっ大変だあ。山の頂上に逃げろおおお」

鬼達は驚き、立ち上がりました。


「明日の晩はきっと来い、コブを返してやるからな」

お頭鬼はこう言いつつ、慌てて山の頂上へ消えていきました。一体そこに何があるのでしょうか?


「ふう、なんとかなったぞい」

スリスリ

おじいさんはその後で、そっと顔を撫でてみました。


「お、おおおお……😭」

ゴゴゴゴゴ


すると、長年邪魔だった大きなコブが綺麗に無くなって、後は拭いて取ったようにつるつるしていました。しかも、そこだけ10代の若い皮膚だったのです。という事は鬼のくれたあの薬は全身に塗れば若返る事も出来るのでしょうか? 鬼の薬剤師の技術は人間を追い越しているのかも知れないですね。しかし、おじいさんの様子がおかしい気もします。気のせいでしょうか?


「これはありがたい。不思議な事もあるものだ」(だが、もう一度行く訳にはいかんな。返されたら元も子もない)

おじいさんは嬉しくて堪らないので、早くおばあさんに見せて喜ばしてやろうと、首を振り振り、急いで家まで駆けて帰りました。

すると?


「ぷうー」

おや? ガキ大将がおじいさんを見るやまたまた頬を膨らませています。


「ん? お主わしの頬を良く見ずとそれをやっているな? 愚かなガキじゃて」


「ぷうー……ありゃ? ないべさ。コブ、どうした?」


「お主のコブのモノマネが余りに下手糞じゃから愛想を尽かしたのではないか? わはははは」


「ち、ちくしょう」

ダダダダダ


「もう来るなよー」


「ワンワン!」

白はいつの間にか帰ってきていました。


「おお、白様? どこに行っていたのですか? 探しましたよ? でもそのお陰でコブが取れました」


「良かったワン。でもその呼び方は止めてワン」


「そうかい? じゃあ白! 帰ろうか」


「ワン!!」


ーーーーーーーおじいさんの家ーーーーーーー


「ただいま」


「おや、コブをどこへやったのですか?」


「鬼に踊りを見せたらもう一度来てほしいと言って質に取られたのじゃ」

おばあさんに真正面を見ていいました。どこか自信に満ち溢れていますね。おばあさんは、久しぶりに見るおじいさんの真正面の顔に少し顔を赤らめ、


「まあ、まあ」

といって、目を丸くしておりました。

すると、おじいさんの家の隣にはよくばりじいさんが居まして、それを聞いて大変羨ましがって、おじいさんの家に訪れます。しかし歩き方がおかしいんです。真っ直ぐ歩いている筈なのに、いつの間にか左に寄っているんです。これはもしやコブが左についている事からその重さでおじいさんの意に反して左寄りになってしまうのでしょうかね? そこまでは分かりません。


「おじいさんコブはどこへ? もしや上手な医者に切って貰ったのかい? どこだか教えてくれんか? わしも取って貰いたいのじゃ」


「なあに、これは医者に切って貰ったのではないんです。昨夜山の中で鬼が取っていったのです」

するとよくばりじいさんはひざを乗り出して、


「それは一体どういう訳じゃ? 鬼がそんな事を? どうやって?」

そこでおじいさんは、こういう訳で踊りを踊ったら、後で質に取られたのだと、詳細を教えました。お隣のおじいさんは、


「こりゃあ良い事を聞いた。ではわしも早速行って踊りを踊るぞい。おじいさん、その鬼の宴がどこで開かれるか教えてくれるか?」


「ああ、いいですよ……」

ニヤリ😃

突然唇の片端を釣り上げる様な笑みを浮かべつつ、詳しく道を教えてやりました。

おじいさんは大層喜んで、山を登って行きました。しかしピュアなじいさんですね。そんな嘘の様な話を疑わずに走っていきました。60近い高齢の体で、大勢の鬼の前で踊りを踊るだけの勇気があるのなら自分でコブを取ってもいいのではと思いますが……本気で取って貰えると信じ切ってしまった様ですね。

あ、ここで正当な理由で話を逸らします事をお許し下さいありがとうございます。

考えて欲しいのですが、おじいさんはとんでもない勘違いしています。それは次おじいさんが鬼の宴会に参加してしまったらどうなるかという事です。

その時に確実に質として取られていた預り物を、踊りが上手かろうが下手であろうが


【返却される】


と言う事なんですよね。もし、


『あれ? このじいさんちょっと違うぞ?』 


と、気付かれるかも知れません。ですが実のところ鬼に人間の区別等出来ません。人間が蟻🐜を見分ける事が出来ないのと一緒。例え既に左頬にコブが付いていたとしてもです。おじいさんっぽければもう本人が来てくれたと思い込んでしまいます。そして踊りを終えたらこんな感じになるでしょう。


『良い踊りだった。約束通りこれを返すぞ』

ポン


か、


『何と酷い踊りだ……もういい! これは返してやるからもう帰れ』

ポン


の2パターンのリアクションしか起こりませんよね? おじいさんは初めて体験する不思議な出来事の連続で分からなかったのかも知れません。だから鬼は又コブを取ってくれると考えた? その理論はどう考えても通用しないと思いませんか? 鬼の手には自分のコブがある。それは冷静に考えればよくばりじいさんでも想定は出来ます。ですが、浮かれてしまっている彼ではまさか預かり物として大切に保管してあるなんて事実、到底想像出来ないでしょう。心の片隅に鬼が勝手に処分した位にしか考えていないでしょう。まあ自分のコブが取られて嬉しくて一切の出来事を忘れたなら仕方ありません。ですが、山の木のうろに隠れていて、宴で飛び出した事はしっかりと教えています。なのに、自分のコブを貸したという事


【だけ】


忘れているのは悪意があると思いませんか? それを十分考えた上で情報を提供するべきだったと思うのですがいい加減すぎますよ……そんな簡単な事を60年生きていて分からない筈がありません。あの時、おじいさんがコブを取られた理由だけは絶対に話さなくてはいけない局面です。それをしっかり伝えないと……鬼は正直じいさんに再び宴を盛り上げてほしいから大切だと嘘を言った彼を信じ、コブを預ったのです。

ですが、おじいさん目線では二度と行く必要はありません。当然他の誰も鬼の宴に行く必要はないのです。何故ならそこに行ったらコブを取ってくれる鬼ではなく、コブを返してくれる鬼しかいないのですから。なのに教える必要ありますか? 本来、


『いや、最早お主が行っても無駄じゃ。医者を頼るのじゃな』


と言うのが本当の正直じいさんではないでしょうか? それなのにどういう訳かよくばりじいさんにそこに行かせようとしているのです。

もしや、踊って面白かったお礼でコブを取って貰えたと言う嘘を付き、自分の身代わりによくばりじいさんを鬼の宴へ? そうです、おじいさん来なければ鬼が怒って村までやってくる危険性を払拭する為、人身御供として遣わせたのでしょうか? もしそれが真実であればまずいのではないでしょうか? よくばりじいさんと言われていますけど、おのおじいさん、まだそこまで欲を出していません。自分の頬のコブを取りたいという純粋な願いを伝えただけ。それなのに絶対にその願いが叶わない方法を進んで教えたと言わざるを得ません。むしろ正直じいさんの方が嘘を付き、よくばりじいさんを利用し、自分を守る形になってしまっているのです。これではどっちがよくばりじいさんかわかりませんね……はっ! だいぶ逸らしてしまったことをお詫びします。ですが凄い論理的に語れたと思いませんか? これね、アリサちゃんのお説教を聞いている内に私にもその論理的思考が磨かれてここまでに至ったのです。神だって成長するんです! おまけにお説教されている途中で、悔しくて拳を握り続けている内に、握力も2700から2750に増えたんですよ! あの子は私のを神生じんせいを変えてくれました。ちょっと生意気ですけどね。え? アリサちゃんとは誰ですかって? あ、これ言っちゃいけなかったかしら? ま、まあいいでしょう。では、続き行きますね。


よくばりじいさんはおじいさんの嘘を信じ、山を登ります。止まる様子はありません。


「ここが宴が開催されるという木か?」

そして教わった木のうろの中へ入り、鬼の来るのを待ちます。


「ん?」

がやがや

話に聞いた通り、夜中になると、何十人となく青い着物を着た赤鬼や、赤い着物を着た黒鬼が、貂の目の様にきらきら光る明かりをつけて、がやがやいいながら出てきました。

やがてみんなは昨夜の様に、木のうろの前に座って、賑やかなお酒盛りを始めました。

その時お頭鬼が、

「どうした。ゆうべのじいさんはまだ来ないか」

 

「どうした? じいさん、いないのか? 早く出てこい!」

手下の鬼どももわいわい言いました。じいさんは、それを聞いて、今だ! とうろから姿を表します。


「ここだ」


「ん?」

すると一人の鬼が目ばやく見つけて、


「やあ、来ました、来ました」

といいました。案の定、左にコブがある事には気付いていませんね。本来何も付いていない筈なのに正直じいさんと勘違いしています。よくばりじいさんは目付きが悪いのです。昨日出会った正直じいさんの顔とは似ても似つかないのです。ですが鬼にとってはそんな事どうでもいいのでしょう。人間で、元気良く踊れる老人さえいれば良いのですから。お頭鬼は大喜びで、


「おお、よく来た。さあ、こっちへ出て、踊れ、踊れ」

と声をかけました。

ピーヒョロロー ポンポン 

この宴の主役の登場に音楽が流れ始めます。

もう後へは引けないよくばりじいさん。おっかなびっくり立ち上あがって、見るから不器用な手付きで、出鱈目な踊りを踊りました。


「よよいのよい。よよいのよおおい」


「ぬう、なんだ? おい!」

お頭鬼は不機嫌になります。ですがよくばりじいさんは止まりません。すると更に声が大きくなります。それをあろう事か応援の声と勘違いしてしまい更にヒートアップ……


「よよいのよおおいよよいのよおおおおおい」

くねくね


「おい! 今日の踊りは何だ。まるでまずくって見ていられない。もういい。止めろ」

しかしおじいさんは止まりません。


「帰れ帰れ。おい、こいつを止めろ」


「はい」

慌てておじいさんを止めます。


「は、放せ これからクライマックスなのじゃあ」


「もう良い。こいつに、昨夜の預かり物を返してやれ」


すると下座の方から若い鬼が、預かっていたコブを持って出て、


「それ、返すぞ」

コブの無い右の頬へぽんと叩きつけました。


「あっ」

と叫びましたが、もう追っつきませんでした。偶然おじいさんの血液型とよくばりじいさんの血液型がA型だったので大事には至りませんでしたが、もし、血液型が違うと、赤血球が壊れて重篤な症状を引き起こす可能性があります。これを


【異型輸血】


といいます。

そうなってしまった場合、高熱、関節痛、呼吸困難、腎臓の働きが悪化する。ショック (血圧の低下、尿が出なくなる等)そして最悪死に至る危険性もあるのです。鬼はその辺の事をしっかりと把握していたのでしょうか? 何も検査するような素振りはありませんでしたよね? 無造作に頬に引っ付けただけです。これは恐ろしい鬼ですね。

異型輸血は免れましたが、両方の頬へ二つコブをぶら下げて、おいおい泣ながら、山を下って行きました。しかしよくばりじいさんに小さな変化が起こったのです。そうです! 真っ直ぐ歩いていても左に寄ってしまう特徴が治って、真っ直ぐに歩けています。これはコブの重さが丁度均一で真っ直ぐ歩けるようになったのでしょうね。おめでとうございます。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ねえアリサ?」


「どうしたの? 朗読を中断して?」


「この、異型輸血? の説明口調の部分、目茶苦茶うざいんだけど……ヒック」


「ああ、そろそろ気付くと思ったw酔っ払ってる割には鋭いじゃんwこれね、デスブックシルフが作ったんじゃないの。厳密に言えば合作なのよ」


「合作よね? 花咲かじいさんとこぶとりじいさんの」


「違う違うwこの説明口調のウザい部分だけ、カタリナってバカがやってるのよ。一応女神。語りのね。で、自分の知識をひけらかそうといらない知識を得意げに語るのよねえ、しかも不特定多数の見るこの合成本にアリサという個人名まで出しちゃってさ」

で、ですがこの本棚でしか作れない本ですから大丈夫ですよ……


「あ、ああ。で、このアリサってまさかあなたの事?」


「そうね」


「絵本にデビューしたの? いつの間に? 凄いじゃない。酔いが一気に冷めたわ……ヒック」


「酔ってるじゃんwまあそいつが勝手にやった事ねw」


「勝手にやった?」


「私がうさしま効果で鬱になりかけた時に、聞こえたの。私はどうやら心が弱ると神の声も聞こえる体質なのね。で、そいつが心が弱っているのを分かった上で追い打ちをかけるように人の心を平気で抉る酷い事を言ってきたのよ。で、ちょっとイラッとしてフルパワーの3%くらいの怒りが出っちゃって」

あ、あれ3パーなんすか? ブル。


「カタリナ? どこにいるの?」


「あなたの、心の中、です」


「居ないわよw」


「実際は上から見下ろしているのかな? この世界にはいないと思う。そいつが考えると合成本の中に思ったのが文字が追加されるのね」


「そういう意味での合作って事ね? で、こんなに長いのね?」


「語りの女神のスキルですって」


「カタリナー? 余計な事考えないで純粋に物語を楽しませて~?」

そ、そういう訳には行きません。それに私に声を掛けても無駄ですよ。


「くそー返事がないわ。ねえ、どうすればそいつと会話できるの?」


「さっき言ったけど、ママも心が弱ったら聞こえるかもね」


「私は心が弱った事ないからなあ。多分死ぬまで無理ね」


「アダマンタイトの心臓❤ですものね」


「どちらかと言うとオリハルコン製ね」


「何が違うのよww」


「F、Fよりかはトラクエ派って事よ……ヒック」


「ああ、そういう事ね」


「……って事は……やっぱりこのセンス皆無の蛇足まで読まなきゃいけないって事なのね? 悔しいわ。ヒック」

そんな事言わないで下さーい😭。

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