第28話 はなとりじいさん 前編

「次は失敗しないようにしないと……前回完全に失敗に終わったきもたろうの親である桃太郎と金太郎の逆を今やるのはちょっと危険かもね。連続で失敗しそう……例えばもんたろうとか下手したら普通にきんたろうになる可能性も……怖あ……こういう場合は全く別の組み合わせにするに限るわよ」

やっぱり失敗という事は覆せないんですね……少しは良い場所もあったとは思いませんでしたかぁ?😢


「確かに主人公が気持ち悪すぎたわね。あれでは感情移入が出来ないわ」


「うんうん。じゃあ今度も日本の昔話で、それもおじいさん関連で混ぜてみよう。現代社会と同じでおじいさんなんて沢山いるしねw何か高齢者問題についてのヒントも見る事が出来るかも?」


「おじいさん関連か。はなさかじいさんとか? かさじぞうもそうよね」


「かさじぞうはちょっと違うかな? でもはなさかじいさんは採用ね」


「あと一つは?」


「このこぶとりじいさんってのがいいかも?」


「わかったわ。じゃあ今度は、私が朗読するわ。疲れているでしょう?」


「そうね。助かる」

さしこみさしこみ ぱあー ドサッ


「今回のタイトルは? はなとりじいさんか。どういう話になるのかしら……喉が、いいえ。喉が鳴るわね」

お母さん? 突然なんですか? 猫🐈にでもなってしまったのですか?


「腕が鳴るでいいでしょ?w ママも相当好きなのねえ。妖怪朗読双頭女じゃん」


「勝手に新妖怪を作らないの! それに私の頭は一つよ」


「相当と双頭を掛けたおしゃれな洒落じゃない! でね今は第一形態で、本気を出した時に双頭になるんじゃない!」 


「ならないわ!」


「子供の発想力を摘み取る様な事言わないでよ!」


「あんたは間引きしないとやばいくらいの発想力お化けなんだからこれくらいいいの」


「それは否定できないし真実なんだけどさあ……どうしても溢れ出ちゃうのよねえ……普通の事を言うと罪みたいな感じが押し寄せてきてさ……」

この子は論理的思考もありながら発想力も何故かバケモンじみてますからねえ……末恐ろしい子です。


「贅沢な悩みねえ」


「でも、久しぶりの朗読でテンション上がっちゃってw」


「朗読者はね、情熱的じゃないと駄目なのよ。まだ駆け出しの素人朗読者のアリサには分からないでしょうけどw」


「悲しい話でも情熱的になのお?」


「情熱的に悲しみを表現するの!」


「奥が、深いんだね……」


「そうよ! この朗読を楽しむための朗読としてでなく学習するための朗読と考えて聞きなさい。じゃあ、はなとりじいさんはじまりはじまりい」


「やったああ😊」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

むかしむかしあるところに、右頬に大きなコブが付いているおじいさん👴と白という犬🐩がいました。おじいさんはとても働き者でとても優しい笑顔で薪割りの仕事をしています。すると……?


「ぷうー」

おや? これは……近所のガキ大将が右頬を膨らませ、おじいさんの顔の形態模写をしているではありませんか! 


👦『お前の右頬はこんなに膨れているんだ。こんなに酷いんだよ!』


と教えている様に見えますね。まだ鏡のない世界ですからおじいさんは自分の顔をよく知らないのです。ですがコブがある事は分かっています。なのに、コンプレックスであろうコブがみっともないんだよ? 普通じゃないんだよ? という事を知っているのにわざわざ教えています。吐き気がしますね。分かっていてもどうしようもない部分を強調して悲しませようとしているのですね? 最低のガキ大将じゃないですか? ガキ大将って総じて普段は威張り散らしていますけど、映画の時はとても格好良くなるものなのです。まあこれは小説なので仕方が無いのでしょう。だからと言ってこのガキ大将は酷いです。今の所、吐き気しか提供してくれません……あ、コブで思い出しました。少々話をそらしたいのですがよろしいでしょうか? ありがとうございます。


ーーーーーーーーーーー20年前ーーーーーーーーーーーー


私も中学時代、二つのコブを持っていたのです……それは99㎝あったバストの事です。ウエストは54だったんですよ? ヒップだって78です。ごく普通の中学生でしょう? ですが……そう……バストだけ中学生らしからぬ程に異様に成長してしまっていて……ハァ……このコブ達のお陰で、クラスメイトの男の子にいじめられていました……99も無ければ……悔しいです……それだけあると普通に重いし、小走りするだけで揺れて前が見えなくなるしでいい所無しでした……そりゃね、彼氏でもいれば彼氏も大喜びで私を自慢してくれたとは思います。


『どうだ! 土方さん凄い巨乳だろ? 俺の彼女なんだぜえ? 凄いだろ? 羨ましいだろ?』


『羨ましい……』


『どうしてお前なんかに……』


『神よ……こいつに天罰を与えてくれ』


『俺は土方さんのブラになりたい!』


と、羨ましがらせる事が出来たでしょう。ですがそんな事なんて中学生時代は全く……で、辛い3年間を過ごし、高校生になりましたが、色気よりも創作意欲が勝ってしまい、ギャル語作成に精を出していました。当然彼氏は出来ずじまい。そんな中スカウトされ神になってしまい、結局


【使わずじまい】


で終わってしまったのです。結果、この誰もが羨むバストも、私に取っては


【ただ胸の部分にあった重い思い出】


程度でしか無かったのです。夢では貧乳の私が大喜びで駆け回っているんです。そう、夢に出るほどに悩んでいました。それで目を覚ましたらこのナイスバデーですよ? ため息が止まりません。勿論自分に酔ったため息ではありません。


「また君達か」


のため息です。切り落としたいと何度思った事か……乳製品を好んで摂取していた幼少期。牛乳を毎朝貪り、チーズやグラタンをかっ喰らっていた弊害でしょうか? 忌々しい胸はそれだけ独自に成長を遂げ99にまで成長……恐ろしい……若すぎる時点での巨乳ほど無意味な物は無いですよ……17歳から……良くて30までの間でしょうかね? 女性の胸に於いて巨乳が輝く時期っていうのは……後は萎んで垂れ下がった2つの大きな干し柿になる未来しか見えません。悲しいですう……まあ個人的感想ですけど……中には70代でも豊満に保てる女性もいるかも知れませんね。で、私はその下限の期間にギリギリ届いては居ましたが、すぐに神に転身してしまいましたけどね……はあ、このおじいさんとガキ大将のやり取りのせいでブルーな気持ちになってしまいました。では続き行きますね……


「なんじゃ? わしのマネか? 浅い浅いwその程度が限界かの?www」

あら? おじいさん? ガキ大将の劣悪な行為に対し、平気な顔をして笑い出しました。私はクラスメイトに胸を強調するジェスチャーをされる度にいつも泣いていたというのに……このおじいさんはアダマンタイトメンタルの持ち主の様ですね。


「ぷ、ぷうーー😡」

ガキ大将はその挑発に乗り更に膨らませます。ですがおじいさんのコブの大きさには到底届きません。そもそも口の中で空気を膨らませた程度で頬の表にくっついているコブに勝てる訳がないじゃないですか。この子は空気を入れれば入れるだけ膨らんでっくれると勘違いしているのですか? 


「所詮付け焼刃。本家には敵わぬのじゃ。未熟者めが! 出直してくるんじゃなw」


「クッ😢」

ダダダダダ

おじいさん、見事な勝利ですね。ですが、その勝利すらおじいさんにとっては気休めなのです。コブはずうっと残っています。

白はその様子を見て悲しそうな顔をしています。そうです。おじいさんは強がりを言っていただけなのです。何故ならおじいさんはおばあさんにこのほっぺを見られるのを嫌がり、一緒にいる時も顔の右側を見せない様にして生活しているからです。どうしても角度的に右頬が見られそうになったら右手でコブを覆い頬杖をつき始めたりそれでも無理なら高速で首を振って見えないように誤魔化してしまいます。それ程自分のコブに劣等感を抱いているのだと白もわかっています。

おばあさんはその様子を文句言わずに接していますがおばあさんもおじいさんの真正面の顔をいつかは見たいと思っている事でしょう。

それは白も分かっていました。ですがどうしようもありません。

おとなりにも、おじいさんとおばあさんがありました。いじわるじいさんとおばあさんでした。そのじいさんには左にコブがついていたのです。そのおじいさんはそれを隠そうともせずにおばあさんに見せていて、おばあさんはそれを良く思っていないようです。ですから、そのストレス発散で、おとなりの白をにくらしがって、 (愚かに思って)きたならしがって、 (汚れているのを馬鹿にして)いつも意地の悪いことばかりしていました。ここから、コブを持っている男達の中にも、隠しながら生きる人。と、堂々と見せる人。に分かれていて、堂々と見せる人の伴侶は心が汚れてしまうという事なのでしょうかね? ある日、正直じいさんが、いつもの様に鍬を担いで、畑を掘りかえしていますと、白も一緒についてきて、そこらをくんくん嗅ぎまわっていましたが、ふと、走り出します。


「おい、どこに行くのじゃ?」


畑の隅の、大きな榎の木の下まで連れて行って、前足で土をかき立てながら、


「ここほれ、ワン、ワン。ここほれ、ワン、ワン」

と鳴きました。


「何だ白? てか喋ったああああああああ」


「そんな事で驚かないで下さいワン。それよりももっともっと驚く事が待っているワン」


「はあはあ……ふう、そ、そうじゃな。ワシも60年生き延びて来た男。その偉大なるわしが、こんな程度の事で動揺してはならんよな?」 

何故か自信満々ですね。ですがこの態度には理由があります。60年。現代ではおじいさんとしては若い様に聞こえますが、昔の日本人は短命だったのです。江戸時代の平均寿命は34~40歳までと言われています。良くて50まで生きれば長生きと言われる程に低い寿命だったのです。その中で60まで生き抜いたこのおじいさんは希少種であり英雄なのです。それを誇りに感じており、このセリフを吐くに至ったのです。


「そうだよ」


「わかったぞい。で、この下に何かあるのか?」


「There's Treasure💎 in the Dirt」


「な、なんじゃと? 財宝が土の中に?」

シロは日本語と英語と犬語を操れるバウリンガルなんですね?


「また動揺してるねw」

ああ、多彩な犬ですねえ。おまけに宝があるとトレジャーサーチのスキルまで有しています。私の家にも欲しいですね。


「突然異国の言葉を犬が使えば驚かん人などおらんて」


「ごめんごめん。とにかく掘ってみて」


「分かったぞい。えいやそいや」

ピカリーン

桑を入れると、金属のぶつかる音がして、そこを手で掘ってみると穴の底で光る物がありました。更に掘って行くと、小判が沢山出てきました。

「おお、なんという眩さじゃ!」


「これで餅を買って」


「も、もちろんじゃ」


「もちをもちろん もちをもちろん!」

おじいさんの偶然出てしまったダジャレに大喜びです。ですがせめて語尾にワン位付けてくませんかね……シロさん、あなたは犬であることを忘れていませんか?


「おおいばあさあああん」


「何ですか? え? これは? 小判ですか? ひえええ」


「とりあえず家に運ぶのだ」


「は、はいい……」

小判を家の中へ運び込みます。検非違使には……当然届けませんよね……自分の畑から出たら仕方がないですが、かぐやきおんなの時のおじいさんもそうでしたが、昔の人は財宝を見つけてもすぐ懐に入れてしまいますね。これは吐き気がします。

そして、正直なおじいさんとおばあさんは、急にお金持ちになりました。しかし突然の大金。お金の使い方など全く分からない二人。取り合えず恩返しがしたいと一番に使ったのは白の為でした。そう、宝を見つけ出した白は神なのではないか? と結論付け、崇め奉り、白の為に社を大金をはたいて村の皆を総動員してなんと一日で建立しました。その名も白社しろやしろです。これから、白の大好物のおもちを毎日届けるようにすると約束しました。ですが現在餅を持ち合わせていませんので、翌日に一緒に買いに行く様ですね。


ーーーーーーーーー翌朝ーーーーーーーーー


「白様や? もちを買いに行きますよ? あれ? 白様ー?」

白のお陰でお金持ちになったので様付けで呼んでいますね。ですが、昨日までいた白がいなくなっています。


「何処に行ってしまったのじゃ? 今日は一緒に餅を買いに行くと喜んでいた筈なのに……探しに行かなくてはならんぞい」


「と言っても手がかりが一切ないぞい? 山でも行っとるのか?」

とことこ

山を目指します。

するとさっきまでの天気が嘘の様に酷い大嵐になります。稲光⚡がぴかぴか光って、ごろごろ雷が鳴り出しました。

そのうち、雨も降ってきて、家に帰るにも帰れなくなります。どうしようかと思って見回しますと、そこに大きな木のうろを見つけました。

仕方ないので、そこに入って、待っている内に、日は暮れてしまいます。

深い山中に、木こりの木を切る音も聞こえない程の静けさ。うろの外は、一面真っ暗闇の中に、凄まじい嵐が、唸り声を立てて通っていくだけです。

おじいさんは恐怖から、夜通しうろの中に小さくなっていました。

夜中にはだんだん小降りになり、嵐がぱったりと止まりました。すると? 遥か高い山の上から、大勢がやがや降りて来る声が。

おじいさんは今まで一人で、寂しくってたまらなかったので、それ聞くと、やっと生き返った様な気がします。


「誰かが助けに来てくれたのかの? ありがたいのう。だがこんな嵐の直後に誰なのじゃ?」


そっとうろから顔を出してみると、まあどうでしょう、それは人ではなく、不思議な化け物が、何十人とぞろぞろ歩いてきます。

青い着物👘を着た赤鬼👹もいました。赤い着物のを着た黒鬼もいました。それが山猫の目👁のようにきらきら光る明かりを先に立てて、わいわいがやがやと騒ぎつつ降りてくるのです。

おじいさんは更に恐怖が高まり、うろの中へ首を引っ込めます。そして震えながら、小さくなって息を殺していました。

やがて、おじいさんの居るうろの前まで来たら、そこに立ち止まってしまいました。どうやらここで宴を開催するのでしょうか? おじいさんは、出るに出られず恐怖を感じながら、体を出来る限り小さくしていると、その中で一際大きいお頭らしい鬼が中央に座り、その右と左りへ外の鬼がずらりと輪を描く様に並びました。よく見ると、目が一つしかないのや、口が丸でないのや、鼻の欠けたのや、それはそれは何ともいえない気味の悪い顔をした、色々な化け物が。おじいさんの運命はいかに?


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ふう、この辺で一休みかしら?」


「この位が丁度いいのよ。昨日までのママは読み過ぎてたわ」


「確かに喉もあまり痛くないし、これくらいの字数が人間にとっての一度に朗読できる文字数なのね?」


「一度に人が読める疲れない範囲での限界朗読文字数、ええと、一回人類朗読限界文字数でしょ? だから……訳して……一朗文いっろうもね」


「なんかかっこいいわねwちょっと言いにくいけどw」

確かにこれはかっこいいですね。私も取り入れてみようかしら? ぬん!! ふう……良し、これで次のお話に反映されている筈でしょう。え? 何をやったのかですって? ええとですね、私のスキルで合成本を読んだ時に自分の感想を瞬時に書き足す事が出来るのですがとある部分をアリサちゃんのやった感じにまとめてみたんですよ。それは次回分かる事でしょう。お楽しみに!


「この文字数程度を一度で読み切れない未熟者朗読者は朗読者の資格を剝奪するという


【朗読基準法】


を設けるわ。更に、この文字数内で許される言い間違いは2回まで」

労働基準法みたいですねえ。全く内容は違いますけど響き的には一文字違いですね。


「で、それ以上噛んだら剥奪と、3回くらいに出来ない?」


「そうね。じゃあ3回で。でもそれ以上は絶対駄目。そんな弱い弱者男性朗読者なんていらないもん」

厳しいですねえ。ところで男性って要ります? この言葉、吐き気がするんですけど……


「じゃあビール🍺でも持ってくるわ」


「あら? 酔朗読? 上級者ねえ」


「やっと仕事が終わったのに飲まずにはいられないわ」


「それで完走できるの?」


「」大丈夫大丈夫


「あら? ママ? 鍵かっこからセリフがはみ出してるけど? 本当に大丈夫?」

あらあら小説史上始まって以来のミスですねえ。


「しまった! 油断した!」


「酒が入る前なのにこんな状況で……ちょっと不安ね。朗読者の資格を剥奪されない様に気を付けてね? 肉親だからって容赦しないよ?」

アリサちゃんが勝手に決めた朗読基準法でママの朗読者の資格が剥奪されたらアリサちゃんだけでこれから出てくるであろう合成本全てを彼女の喉で読む事になるんですけど……それは自分の喉に負担を掛ける事になりそうですね。本当に大丈夫なんですか?

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