私、実は選ばれし魔法少女なんですけど…推しが多すぎて困ってます
藍瀬 七
第1話 夢に呼ばれた朝、推しと登校はじめました
『強大な力を秘めし者よ……来い。頼む、助けてくれ……。』
『――世未。この国を救うため、お前の力が必要だ……。』
『ピピピ――』
アラームが部屋中に鳴り響く。
「ん……何、今の夢……?」
ここ数日、同じような夢を見ていた。誰かに呼ばれているような夢だ。そんなことがあるだろうか?――とも思うのだが、特に私生活に実害もないため、気にしないことに決めた。母の用意してくれた朝食を食べて、学校の支度をしてから玄関の扉を開ける。
「世未、おはよう」
目の前に現れたのは、同じクラスの皆越譲治(みなこしじょうじ)だった。家が近所なため、一緒に学校へ行くことが多い幼馴染……いや、私の好きな人である。物心がついた頃から、私のことを守ってくれる譲(ジョー)に、ずっと片思いをしている。
「おはよ。ジョーは朝早いね。」
真っすぐに目を見つめると照れてしまうので、前を見ながら話すことにした。
「そんなことないって!世未もほぼ同じじゃん。」
軽く笑いながらも笑顔で話す姿が太陽みたいに眩しく感じる。今朝見た不思議な夢を忘れそうなくらい、私も自然と笑顔になる。
会話をしながら歩いてるうちに、学校に着いた。靴箱に靴を入れて、上履きに履き替えたら廊下を渡る。渡った先は私たちのクラスがある。窓ガラスからクラスの男子が見えて、こちらに手を振っている。
「ジョー、また水村と登校してんの?仲良いよなー」
「家が近いし、いいじゃん」
ジョーは慣れた手つきで鞄を降ろす。
「(また、私のせいでからかわれちゃってる。でも、私もジョーと一緒に登校したいし……複雑だなぁ)」
まだ授業まで時間があるため、図書館へ向かうことにした。本当はずっとジョーの姿を見てたいけど、あんまり見てると迷惑かもしれないと思っての行動だった。
朝早いためか、静まり返ってる図書室にはまだ誰もいなかった。そして足取り軽くいつもの本棚まで向かい、手を伸ばす。探す間もなく手に取ったのは、歴史の本だった。今の世界ができるまでの過程や、どんな争いがあって、どんな人物がいた等といった事にとても関心があるのだ。特にローマ帝国の歴史が好きで、壮大な建築物やカエサルみたいなカリスマ的な人に憧れちゃう。『あの時代を生きた人々は、今の私たちと何が違ったんだろう?』と、つい考えてしまう。15分程経ったことに気が付いて、私はその場を後にする。朝礼が始まる前に席へ着きたいため、廊下を猛スピードで走り抜けようとして、誰かにぶつかった。
「ごめんなさい。大丈夫ですか?」
慌てて声をかけたが、目の前にいたのはジョーだった。
「いてて……相変わらずドジだよな、世未……怪我してない?」
衝突して肩を押さえるジョーの姿に、心臓がぎゅっと縮むような不安を感じた。『もし本当に怪我してたらどうしよう』と気が動転して、思わず保健室へ連れて行くことにした。俺は全然怪我してないし、平気だからと言っていたので少し安心していたのだけど、緊張が解けたせいか私は頭痛が始まった。
「頭が痛い……」
えっ、と驚くジョーだったが、私は幸い怪我もないため、先に教室へ戻ってもらった。
「(朝からやらかしちゃった。反省。でもドジって治るのかな?)」
保健室の先生に頭痛のことを相談してみたけれど、よく本を読むのなら肩こりからくる頭痛かもしれないねという話になり、衝突したから痛む、といった訳ではなさそうだった。そして少し保健室で休んだら教室へ戻ることに決めた。私はベッドで横になって休んでいたからか、眠気が襲ってきて、眠ってしまった――。
『――世未、ここへ……来るんだ。……夜、お前を……に行く』
足元に吸い込まれるような、冷たく重たい闇が広がり、かすかな風の音が耳を掠めた。その中から、低く響く、どこか聞き覚えのある声がゆっくりと迫ってくる。まるでその闇へと吸い込まれそうになり、恐怖を覚えた。
「(これは夢?私、また同じ夢を見ているの?どうして何度も私を呼ぶの?)」
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