第32話



 敵は多分、私の位置に気づいている。


 光学迷彩は解いた。


 戦闘力を底上げするには、余計な“装備”だったから。



 「おとなしく出てきなよ!相手してあげるから」



 私の声かけも虚しく、マンションの外を出て逃亡を図った。



 …はあ


 

 逃げられると思ってんの?


 悪いけど、走るのは得意なんだ。


 下半身に電気を集め、肩の力を抜く。


 エア・シュートは路上の壁に立てかけておいた。


 今は邪魔だ。


 普段の移動用には便利だけど、本気を出せば生身の方が“速く”動ける。



 ——すぅ…



 抜いた力を引き戻すように息を吸う。


 腰を落とし、少しだけ前のめりに倒れた。


 しならせた膝。


 低く落とした重心。


 股関節を内側に捻った。


 ぶら下げた腕を遊ばせながら、関節を柔らかく“伸ばす”。


 指先に、電気が集まる。



 ダンッ



 地面を掴む。


 予備動作は必要ない。


 一気に距離を詰める。


 幸い、周りに人はいなかった。


 今なら力づくで肉弾戦に持ち込める。


 肉弾戦に持ち込めさえすれば、多少強引になってでも身柄を拘束してやる。


 問題は、敵の“戦闘力”。


 手に負えないやつじゃなかったらいいけど、こればっかりはなぁ…




 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る